化学プラントで働き始めた人に向けて、設備と配管の言葉を紹介します。
この記事の内容
釜(かま)
反応器を指す言い方です。実験室のフラスコに当たる、原料を入れて反応させる大きな容器で、ジャケットで加熱・冷却し、上から撹拌翼を入れて混ぜる形が基本です。「釜に原料を仕込む」のように使います。
教科書や図面の上では、反応器という名前です。内側をガラスで覆ったグラスライニングの釜もあり、材質は中で扱う物で変わります。実験室では冷えていた反応も、釜を大きくすると液量あたりの伝熱面積が減るので、同じようには冷えません。
関連:反応器の種類と設計方程式、タンクジャケットの種類
受槽・貯槽(じゅそう・ちょそう)
液を受け入れる槽が受槽(「うけそう」とも読みます)、貯めておく槽が貯槽です。ケムファクのタンク容量の記事でも、横型タンクの使いどころに「液の受槽、中小の貯槽」と並んでいます。蒸留設備で塔頂の凝縮した液をためる機器は、同じ記事の分類ではレシーバーです。
「受槽の液面が上がってきたので、送液を止めます」のように使います。つまずきやすいのは容量です。満液まで入れたときの全容量と、実際に使える量は違います。危険物を貯めるタンクの容量は、内容積から空間容積を引いた量と決まっています。
関連:タンク容量の計算方法、蒸留設備の構成要素
熱交(ねつこう)
熱交換器の略です。温度の違う2つの流体を混ぜずに、壁越しに熱だけをやりとりさせる機器で、多管式やプレート式などの種類があります。

「熱交の冷却水を絞る」のように使います。蒸気を冷却して液にする熱交換器はコンデンサー、蒸留塔の底で液を温めるものはリボイラーと、使い方で名前が変わるのも紛らわしい点です。
関連:熱交換器の種類、多管式熱交換器の構造と分類、熱交換器の計算例題
リボイラー・コンデンサー
どちらも蒸留塔につく熱交換器です。リボイラーは塔の底の液を再加熱して蒸発させ、コンデンサーは塔の頂上から出た蒸気を冷やして液にします。凝縮した液はレシーバーにたまり、一部を塔へ戻します。この操作が還流です。
「リボイラーの蒸気を絞って」「コンデンサーの冷却水が足りない」と、熱を与える側と除く側で別々に話題になります。塔の底が加熱、頂上が冷却という向きを逆に覚えると、運転中の会話がかみ合いません。
関連:蒸留設備の構成要素
撹拌翼(かくはんよく)
撹拌装置の先端についた、プロペラに当たる部分です。モーターの軸(シャフト)の先に付けて容器の中へ差し込み、回して液を混ぜます。ポッドキャストで挙がっていた混ぜる目的は、粉の溶解・熱の均一化・液同士の混合・気体の溶かし込みです。
「撹拌翼を替えて回転数を上げる」と言っても、ただ速く回せばよいわけではありません。翼の形や回転数が合わないと、液のよどむ所(デッドゾーン)ができます。プロペラ翼、パドル翼、タービン翼など形の種類が多く、効果も同じではありません。撹拌は攪拌とも書きます。
関連:ポッドキャスト「プラントライフ」#87「素晴らしき機能美!撹拌翼(かくはんよく)の世界」(別サイト)、撹拌翼の種類と特徴
マンホール
槽に付いた、大きな口とその蓋です。ポッドキャスト「プラントライフ」#123「結局は人頼み|化学プラントの手仕込み」(別サイト)では、粉の原料を袋から流し込む投入口として出てきます。槽の中の点検や掃除で人が入る入口にもなるので、場面によって指すものが違います。
「マンホールを開けて仕込む」と聞いたら粉の投入、「マンホールから入槽する」なら槽の中に入る作業です。後者は酸素欠乏の危険があります。窒素を入れたことのある槽の中は法令上も酸素欠乏危険場所で、酸素18%未満が酸素欠乏です。ポッドキャスト「プラントライフ」#48「知って身を守る! 酸素欠乏の基礎知識」(別サイト)は下水道のマンホールを例に酸欠の起きる場所を話していますが、槽のマンホールも中の空気を測ってから入る点は同じです。
フランジ・ガスケット・パッキン
フランジは配管や機器をつなぐ、輪の形をした継ぎ目の部品です。2枚の輪の間にガスケットを挟み、ボルトで締めて漏れを止めます。ポッドキャスト「プラントライフ」#44「ハッピーセットの"おもちゃ"に化学反応装置!?」(別サイト)では、のぞき窓の周りの輪がボルト8本で止まっている構造を、現場でよく使う構造として紹介しています。
ガスケットは動かない部分の、パッキンは動く部分のシールです。ただし現場では、フランジのガスケットを「フランジパッキン」と呼ぶことがあり、「フランジのパッキンを替える」はガスケットの交換を指します。撹拌器の軸のような動く部分に使うのがグランドパッキンやメカニカルシールで、Oリングは動かない部分にも動く部分にも使うため、どちらの名前も当てはまります。
関連:ポッドキャスト「プラントライフ」#18「話題のPFASを少し詳しく学んでみませんか?」(別サイト)、フランジの接続のしくみ、フランジのガスケットの種類、パッキンとガスケットの違い
保温・保冷(ほおん・ほれい)
配管や機器の外側に断熱材を巻き、その上を板金で覆って、熱の出入りを減らすことです。温かい物の熱を逃がさないのが保温、冷たい物に外の熱が入るのを防ぐのが保冷で、使う材料も用途で呼び分けます。冷たい配管では、表面の結露を防ぐことも目的の1つです。規格の名前も「保温保冷工事施工標準」(JIS A 9501)と、2つが並んでいます。

「あの配管は保温がはがれている」のように、外から見える板金の状態で話します。注意点は、保温材の下が見えないことです。結露や雨水がしみ込むと、気づかないうちに錆びて配管に穴が開き、漏れにつながります。この保温材の下の腐食がCUIです。点検の方法には、超音波で配管の厚みを測るやり方があるとポッドキャスト「プラントライフ」#64「プラントの天敵「腐食」:金属とプラスチックの劣化メカニズムと対策」(別サイト)で話しています。
関連:配管の構成要素
スチームトレース
配管や機器の外側に、蒸気を流す細い管を添わせて温める方法です。配管全体を二重にして蒸気を通すジャケットとは区別して呼ぶ語です。中の流体を冷やさないために使い、粘度の高い液の流れを保ったり、計器まわりの凍結を防いだりします。
「冬はトレースの蒸気を入れる」が、よく聞く言い方です。止めた後に細い管やスチームトラップに残ったドレンが凍り、壊れることがあるので、冬に止めるときは注意が要ります。電気で温める方式もあり、目的は同じです。トレース用のスチームトラップの選び方は、スチームトラップの記事にあります。
関連:スチームトラップの種類と選び方
ストレーナー
配管の途中にある、金網で異物を止める機器です。ポンプや流量計、スチームトラップなど、ごみに弱い機器の手前に付けて守ります。配管工事の直後に残る金属のごみを取るのも、ストレーナーの役目です。
「ポンプの前のストレーナーを掃除する」のように、金網を外して洗う作業でよく出てきます。フィルターとの違いは目的で、機器を守るのがストレーナー、流体そのものをきれいにするのがフィルターです。網は細かいほどよいとは限らず、目が細かいと通る面積が小さいぶん詰まるのも早くなります。
関連:配管の構成要素、流量計の種類と選び方
サイトグラス(のぞき窓)
2つの意味があります。1つは配管の途中に入れて、液が流れているかを目で確かめる部品です。メーカーのカタログでは、ボールの揺れで流れを見る型があり、スチームトラップの作動の確認にも使われています。もう1つは、容器や機器に付いたのぞき窓です。
「サイトグラスで流れているか見て」と言われたら、前者です。量は読めないので、流量計の代わりにはなりません。ガラスは傷んでいくので、交換の目安や使える流体は、機種ごとにメーカーのカタログで確かめます。
関連:ポッドキャスト「プラントライフ」#44「ハッピーセットの"おもちゃ"に化学反応装置!?」(別サイト)
安全弁・破裂板(あんぜんべん・はれつばん)
容器や配管の圧力が上がりすぎたとき、中身を逃がして破裂を防ぐ装置です。安全弁は設定した圧力で開き、圧力が下がると閉じます。蒸気やガス用を安全弁、液体用を逃し弁と呼び分けることもあります。破裂板は薄い板が破れて開くだけの部品で、一度開くと閉じず、運転を止めて板を替えるしかありません。
「安全弁が吹いた」は、設定圧力を超えて弁が開いたという意味です。吹いたら中身が出ているので、放出先がどこかが問題になります。窒素のような不活性ガスの放出先が換気の悪い場所だと酸欠の危険があり、法令にも定めがあります。
関連:安全弁・破裂板の選び方と吹出し量の求め方、窒素置換の回数と窒素量の計算
調節弁・CV(ちょうせつべん・シーブイ)
DCSや調節計の指令で開度を変え、流量・圧力・温度・液面を制御する弁です。手で開け閉めする弁とは役目が違い、開度を細かく変え続けます。現場では、英語のコントロールバルブ(Control Valve)の頭文字をとってCVと呼ぶことも多く、こちらの方がよく使われる職場もあります。弁の流れやすさを表すCv値とは別の言葉です。

「調節弁の開度が下がっている」のように、制御の状態を話すときに出ます。全閉でもわずかに漏れるので、確実に止めたいときは別の遮断弁の役目です。空気が切れたときに閉じる型と開く型があり、止まったときに安全な側を選んで使い分けます。
関連:調節弁(コントロールバルブ)の構造と選び方、開閉バルブの種類と使い分け
流量計・レベル計(りゅうりょうけい・レベルけい)
流量計は液や気体が流れている量を、レベル計は容器の中の液面の高さを測ります。レベル計は液面計とも呼びます。
「受槽のレベルが上がってきた」は、レベル計の値の話です。この値は、液の高さそのものを見ているとは限りません。容器の下で圧力を測り、高さに換算する方法がよく使われます。似た機器にレベルスイッチがあり、こちらは決めた高さに液があるかどうかだけを知らせて、上限や下限の警報と停止に使います。流量計のほうは測定原理が多く、羽根車・渦・電気・超音波といった方式があります(ポッドキャスト「プラントライフ」#102「化学プラントの神経系!状態を伝える「計装」の世界」(別サイト))。
関連:流量計の種類と選び方、レベル計とレベルスイッチの違い



