配管フランジの基礎知識

2021年6月24日

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フランジとは?

まずはフランジの基本事項を押さえておきます。

構成要素

フランジは配管の端部に取り付ける円形の板状部品です。

フランジにパイプを通し、2枚のフランジの間にガスケットを挟み、ボルトナットで締結することで配管同士を接続します。

フランジ接続イメージ

他の接続方式との違い

フランジ接続の他にも溶接やねじ込みといった接続方式があります。

特にフランジは高温高圧環境でも使用可能でありながらメンテナンス性に富んでいます。

接続方式メリットデメリット
フランジ分解や組み立てが容易
高いシール性が保たれる
高圧や高温の流体に対しても使用できる
部品点数が多く高コストになりやすい
シール性が低下するとフランジ接続部から漏れる
溶接非常に強固な接続方式
高圧や高温の流体に対しても使用できる
部品が配管のみで構成できる
分解や組み立てが困難
溶接は特に高度な技能が必要
ねじ込み分解や組み立てが容易
部品点数が少ない
高圧や高温の流体にはあまり適していない
シール性が保ちにくく漏れる恐れがある
小口径にしか使えない
配管の接続方式の比較

利用用途

パイプやバルブ同士をフランジ接続して配管を構成する用途を指す場合はラインフランジと呼んで識別します。

ほとんどのフランジはラインフランジとしての用途で使われるため、フランジといえばラインフランジを指します。

その他の用途としてオリフィスフランジとブラインドフランジが挙げられます。

  • オリフィスフランジ:流量測定用にオリフィスプレートと差圧取り出し口の付いたフランジ
  • ブラインドフランジ:配管経路を塞ぐためのフランジ

フランジの規格

フランジは配管の基本となる要素であることからJISやJPI、ASME、ANSIなど様々な規格に対応しています。

問題はそれぞれの規格によってサイズや形状が微妙に違う点です。

つまり別の規格のフランジ同士を接続してはいけません。

国内主要規格

日本国内で最も使用されているのはJIS規格です。

JPI規格は米国のANSI/ASMEを参考に制定されていますが、両規格で配管の外径が異なることからフランジの内径が異なります。

  • JIS:日本産業規格(Japanese Industrial Standards)
    日本で一番使用されている日本政府が定める国家規格
  • JPI:日本石油学会規格(The Japan Petroleum Institute)
    日本の石油業界でよく利用される米国のASMEを参考に制定された規格

海外主要規格

海外規格はASMEとANSI、採用頻度は少なめですがDINを知っておくと良いです。

ANSIの石油化学工業系の内容はASMEと同様のため、”ANSI/ASME"と表記されることもあります。

  • ASME:米国機械学会規格(The American Society of Mechanical Engineers)
    米国を発祥とした世界的に採用されている規格
  • ANSI:米国国家標準協会規格(American National Standards Institute)
    米国内の非営利団体における工業分野の規格
  • DIN:ドイツ工業規格(Deutsche Industrie-Norm)
    ドイツ規格協会が制定した工業規格

フランジ形状による分類

フランジにも用途に応じた細かな形状が存在します。

パイプとフランジの接続方式

配管とフランジは主に溶接により接続しますが、溶接方法にも種類があります。

  • ソケット溶接式フランジ(SW):胴付部が設けられたフランジにパイプを差し込み、配管外側を隅肉溶接
  • 差込み溶接式フランジ(SO):フランジにパイプを差し込み配管外側と配管内側、合計2か所にそれぞれ隅肉溶接
  • 突合せ溶接式フランジ(WN):フランジとパイプを突合せ溶接
溶接フランジの接続イメージ

溶接以外にも配管一体型のものやねじ込みのものもあります。

  • 一体フランジ(IT):鋳造などで製造されたパイプとの一体構造
  • ねじ込み式フランジ(TR):フランジ内径に雌ねじを施した構造
  • 遊合形フランジ(LJ):パイプにフランジを通すのみでフランジ部分が自由に回る構造

中でも遊合形フランジスタブエンドというパイプの片端にツバがついた継手を用います。

フランジとパイプは直接溶接せずスタブエンドを挟み込むように締結し、フランジ自体は自由に回転させることができます

これにより施工時のフランジの向きを意識せずに施工できるようになります。

遊合形フランジの使用イメージ
各接続方式の参考図や詳細

ガスケット座

フランジにおけるガスケットが接触する部分をガスケット座と呼びます。

使用温度や圧力、配管種別によってガスケット座を使い分けます。

最も使用されるのが平面座、次に使用されるのが全面座です。

  • 平面座(RF:Raised Face):汎用的に使用されるガスケット座面が少し盛り上がった形状
  • 全面座(FF:Flat Face):空気や水などで使用されるフランジ面がフラットな形状
平面座と全面座の使用イメージ

その他にも、溝にガスケットをはめ込む形式のガスケット座があります。

どれも平面座や全面座より複雑な形状ですが、面圧が向上しています。

  • はめ込み形(MF:Male-Female):段付き形状によりガスケットを挟み込むため芯がずれにくく平面座よりも機密性が高い
  • 溝形(TG:Tongue and Groove):高い面圧でガスケットを挟み込むことができるため極度の機密性を要する異臭流体などで使用
  • リングジョイント形(RJ:Ring Joint):ガスケット溝がありリング状ガスケットが入れられる構造で高温高圧条件で使用

各種フランジの接続方式に対して使用できるガスケット座はJIS B2220:2012に定められています。

各ガスケット座の参考図や詳細について

ガスケット座面の処理

フランジの中には、面圧向上のためフランジ面に細かい同心円溝加工を施す場合があります。

これをセレーション加工と呼びます。

注意点はJPI規格にはセレーションが無く、ANSI/ASME規格にはセレーションがあることです。

セレーションの有無が異なるフランジ同士を接続する場合、低圧流体においては漏れなく接続できる可能性もありますが好ましくありません。

圧力とフランジ

配管内にかかる圧力によってフランジは使い分けなければなりません。

呼び圧力

フランジの耐圧強度を表す区分として呼び圧力が定められています。

JISフランジには5K、10K、16K、20K、30K、40K、63Kがあります。

Kは圧力単位kgf/cm2を意味し、例えば10Kフランジであれば約1MPa(1kg/cm2≒0.1MPa)までの環境で使用できます。

ちなみにASMEやANSI、JPI規格ではクラス、DINではPNという呼称が使われています。

温度圧力基準(P-Tレーティング)

一般に温度が高くなるほど最高使用圧力は低下します。

フランジの材料グループと流体温度ごとに最高使用圧力を示したものが圧力-温度基準(P-Tレイティング)です。

フランジごとに最高使用圧力を計算するのではなく、ある程度の区分分けをすることで規格統一でき経済性が確保されます。

ガスケット(フランジパッキン)

フランジの気密性を保つためにガスケットが使われます。

ガスケットはフランジ座面の間に挟む薄い板状のシートです。

「フランジパッキン」との名称が使われていることもありますが、役割を考えるとフランジパッキンはガスケットです

ガスケットの形状

通常、全面座では全面形ガスケット、平面座ではリング形ガスケットが使われます。

全面形は、ボルト貫通穴も開いた前面に取り付けるガスケットで、取り付けやすく片締めになりにくい特徴があります。

リング形はフランジボルトよりも内側に取り付けるリング状のガスケットで、面圧が高くなるためシール性が上がります。

ガスケットの形状イメージ

ガスケットの材料

材質にはゴム、ポリアミド繊維、膨張黒鉛、メタルなど幅広い種類があります。

温度や圧力、使用環境、流体の腐食性に合わせた材質を選択する必要があります。

特に四フッ化エチレン樹脂(PTFE)は耐薬品性に優れることから化学プラントでは頻繁に使用されています。

ガスケットに関する種類や材質など詳細

帯電に注意(ボンディング)

配管内は流体が流れており、管壁との摩擦により流体が帯電します。

この状態でガスケットのような絶縁物が存在すると、絶縁物に帯電して静電気が発生します。

日常生活では影響の少ない静電気ですが、可燃性流体の前では点火源となり火災に繋がります

特にテフロンは絶縁体であるため帯電の恐れがあります。

帯電を防ぐためにフランジ同士を電線や金属板で接続するボンディングを実施します。

フランジ配管の施工

フランジ接続にはボルトやナットが必要なため部品点数が多くなります。

ここでは施工の注意事項や関連知識を紹介します。

ボルト締結

フランジはボルトの締め付けが命です。

締め過ぎはガスケットなどの破壊、締め不足は漏れに繋がります。

  • 締め付け不足により芯ずれを起こさないようにする
  • 過剰な締め付けによるガスケット破損が起きないようにする
  • 片寄った締め込みが無いように対角線上にあるボルトを順に締める
  • 決められたトルクで締める

また温度変動によって締結力が低下して漏れに繋がる可能性があります。

装置の立ち上げや停止などで温度勾配がある場合は、系内の温度を使用温度まで上昇させてから増し締めします。

所定温度到達後の増し締めをホットボルティング、そこから冷却して常温で行う増し締めをコールドボルティングと呼びます。

配管サポート

意外とフランジは重量があり荷重がかかります。

そのため配管サポートを設ける際はフランジ付近を意識して設けてください。

相フランジと組フランジ

例えば海外機械を導入するときに、その部分だけJIS規格ではなかったとします。

1点だけ別規格のフランジが必要な場合、通常は配管施工側がフランジを用意するところを機械メーカー側が機械に適合するフランジを用意します。

このようなフランジを「機械の相手のフランジ」という意味で相フランジと呼びます。

更に相フランジだけでなくボルト・ナット・ガスケットもセットで用意するため、これらを総称して組フランジと呼びます。

オススメ書籍

・トコトンやさしい配管の本

まず配管を勉強したいときに必ず読みたい書籍です。新人さんにオススメです。

トコトンやさしい配管の本
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・はじめての配管技術

配管の勉強をするために次に読んでおきたい書籍です。
配管継手に関しても一通りのものが解説されています。

はじめての配管技術
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・化学プラント配管設計の基本

上記書2冊で基礎を学んだあと、化学プラントで配管設計を行うなら必ず読んでおきたい書籍です。
化学工学も同時に学ぶことができ、内容が充実しています。

化学プラント配管設計の基本―配管技術者への道しるべ
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