化学プラントの現場用語(定修・工事編)

プラント設計・運転/現場用語現場用語の1本目(全2本)公開広告

定期修理の前後でよく聞く言葉を、工事の流れに沿って説明します。化学プラントで働き始めた人に向けた内容です。

この記事の内容
  1. 定修(ていしゅう)・シャットダウン
  2. 窒素パージ・置換(ちかん)
  3. 縁切り(えんきり)
  4. 仕切り板(しきりいた)・ブラインド・メガネブラインド
  5. ブロー
  6. 開放点検(かいほうてんけん)
  7. 増し締め(ましじめ)
  8. 気密試験(きみつしけん)
  9. 水張り(みずはり)
  10. 火気(かき)と作業許可(さぎょうきょか)
  11. 養生(ようじょう)
  12. 据え付け(すえつけ)
  13. 試運転(しうんてん)
  14. 水運転(みずうんてん)
  15. 復旧(ふっきゅう)
  16. 参考資料
  17. 関連記事

定修(ていしゅう)・シャットダウン

定修は定期修理の略で、装置を止めて、運転中は開けられない内部を点検し、必要な部品交換や補修をする期間です。ENEOSの技術誌には、法律で決まった期間ごとに装置を止めて検査することを定期修理(定修)と呼ぶ、とあります。内部の清掃や、周りの装置が止まったときにしかできない新設・改造の工事も、この期間に組まれます。

ポッドキャスト「プラントライフ」#27「プラントが閉鎖したらどうなるの?~ENEOS 和歌山製油所を例に~」(別サイト)は、1年に1回など定期的に行い、大きなものは1〜2か月かかる、という説明です。#93「未経験でも化学プラントのオペレーターはできる??」(別サイト)では、会社によっては、シャットダウンメンテナンス、略してシャットダウンやSDMと呼ぶと紹介しています。時期は春や秋が多く、規模によっては数千人の工事関係者が出入りします。使い方の例は「定修明けまでに、この弁を交換しておきます」です。

定修のないプラントもあります(第93回)。運転員は、製造のない間に受付や安全管理、書類整理を担当することがあります。

窒素パージ・置換(ちかん)

窒素で、設備の中の空気や可燃性のガスを追い出す操作です。置換もパージと呼ばれます。定修では、設備を開ける前に可燃物を窒素で追い出し、動かす前には空気を窒素に置き換えてから原料を入れます。使い方の例は「塔のパージが終わったら連絡します」です。

つまずきやすいのは、パージ済みの設備の中には酸素がないことです。窒素に毒性はなくても、入れば酸欠になります(第48回)。窒素を入れたことのあるタンクや反応塔の内部は、法令で酸素欠乏危険場所とされています(労働安全衛生法施行令 別表第6)。「パージ済み」は「入れる」の意味ではありません。

回数や窒素量の計算は、ケムファクの記事にあります。

関連:ポッドキャスト「プラントライフ」#48「知って身を守る! 酸素欠乏の基礎知識」(別サイト)、窒素置換の回数と窒素量の計算

縁切り(えんきり)

工事する範囲を、動いている他の系統から切り離すことです。労働安全衛生規則は、化学設備を分解したり、内部で作業したりするときの決まりを定めています(第275条)。危険物や高温の水蒸気が作業箇所に出ないよう、弁を二重に閉じるか、弁を閉じたうえで閉止板などを施します。方法は一つではありません。「この配管は縁切り済みです」と聞いても、どの方法かは分かりません。

神奈川県の公開事例(H30-71)に、閉止板で縁切りした配管のエチレンを窒素で置換し、ガス検知で0%を確認したのに、翌日の溶接で引火した火災があります。原因と推定されたのは、弁本体と閉止板の隙間に残ったエチレンです。教訓には、閉止板を入れる区間を最小にすること、区間に弁が入るなら弁を開いてパージすることが挙がっています。

縁切り済みと、中が空であることは、別の話です。

仕切り板(しきりいた)・ブラインド・メガネブラインド

配管のフランジの間に挟んで、流れを止める板です。閉止板とも書かれ、現場ではブラインドとも呼ばれます。使い方の例は「その弁の先に、仕切り板を入れてあります」です。

メガネブラインドは、中の詰まった板と、穴のあいた輪が8の字につながった形です。回すと「止める」と「通す」が切り替わります。寸法の規格は ASME B16.48 です。

板を入れるときにも、外すときにも、フランジを開けます。神奈川県の事例(H15-10)では、定期修理の準備でフランジを開けたところ、蒸気ドレンに続いて揮発油分が出て、近くの溶接の火花で着火しました。外すときに危険物などが流出するおそれがあれば、板と近くの弁の間の危険物の有無を確かめるなどの措置をとる、と労働安全衛生規則にあります(第275条)。

ブラインドフランジ(閉止フランジ)は別物です。配管の末端を塞ぐ常設のフランジで、工事で挟む板とは用途が違います。

関連:配管との接続方法に応じたフランジの種類

ブロー

弁を開けて、配管や機器の中の液・ガス・水を外へ出す操作です。液や水(ドレン)を抜くならドレン抜き、圧力を抜くなら圧抜きや脱圧が近い言葉です。水の系統では、洗浄と水質の確保のために系統の水を入れ替える操作もブローと呼ばれます(もんじゅの試験の資料)。出口の配管や弁を、「ブロー配管」「ブローバルブ」と呼ぶ例もあります。使い方の例は「停止したら、塔の底をブローしておきます」です。

公開事例の教訓は二つです。ドレンを抜く作業の最後には油が流れ出るので、作業中はその場を離れないこと、近くで同時に溶接をしないことが、教訓に挙がっています(H15-10)。圧抜きでバルブを急に開けると、静電気やバルブの凍結、ホースの振れが起きるおそれがあるため、ゆっくり行うよう勧められています(富山県の事例集)。

開放点検(かいほうてんけん)

タンク・塔・熱交換器などのふたやマンホールを開け、内部を直接見て確かめる点検です。運転中は見えない内面の傷や腐食、中に残った物を調べます。労働安全衛生規則が化学設備の自主検査として挙げる項目にも、内面と外面の損傷・腐食や、ふた板・フランジ・バルブの状態があります(第276条)。使い方の例は「来週の開放点検に向けて、この塔を縁切りします」です。

ケムファクの窒素置換の記事は、設備を開けるときは可燃物を窒素で追い出してから空気を入れると説明しています。分解や内部作業のときの弁の閉止や閉止板は、労働安全衛生規則(第275条)の対象です。中に入る場合の危険は酸欠で、ポッドキャスト「プラントライフ」#48「知って身を守る! 酸素欠乏の基礎知識」(別サイト)は、点検や清掃で入るときが最も危険だと話しています。酸素濃度を測り、外から新鮮な空気を送りながら入る、という説明です。

終わったあとの乾燥も、段取りに入ります。腐食性の物質を通す配管で、開放点検のあとに乾燥空気で乾かし、露点(空気中の水分の量を表す温度)で乾燥の具合を見る例が、富山県の事例集にあります。

増し締め(ましじめ)

一度締めたフランジのボルトを、時間や温度が変わったあとに、もう一度締めることです。フランジの間に挟むパッキン(ガスケット)は、時間がたつと反発力が下がり、ボルトが緩みます。締付力が必要な値を下回ると漏れます(ニチアス技術時報)。

運転を始めて温度が上がった状態での増し締めを、ホットボルティングと呼びます。温度が下がってから常温で行うものは、コールドボルティングです。使い方の例は「立ち上げで温度が上がったら、フランジを増し締めします」です。

同じ資料は、ホットボルティングの方法や時期を明確に決めたものはなく、プラントごとの基準で行っていると書いています。ガスケットによっては、温度が上がって時間がたつと硬くなり、増し締めできません。いつ、どの順で、どれだけ締めるかは、設備とガスケットで違います。各工場の手順書で決まります。

関連:フランジの接続のしくみ

気密試験(きみつしけん)

組み上げてつないだ状態の設備に圧力をかけ、漏れがないかを調べる試験です。富山県の事例集は、原則として窒素など危険性のない気体を使うと説明し、漏れの確認には石けん水の塗布やガス検知器を使うとしています。高圧ガス設備には、常用の圧力以上で行う気密試験に合格することを求める技術基準があります(一般高圧ガス保安規則 第6条)。

工事で弁や配管に触った場所は、戻したあとに気密を見る流れになります。神奈川県の事例では、ブローバルブの弁座を交換したあとの気密試験で、漏れが見つかりました(H21-24)。使い方の例は「復旧が終わったので、窒素で気密を見ます」です。

耐圧試験と混ざりやすい言葉です。耐圧試験は設備の強度を確かめる試験で、原則として水などの液体を使います。気密試験が見るのは、つないだ状態での漏れです。

圧縮した気体を使うため、試験中の事故もありました。神奈川県は、気密試験中にホースが破断して軽傷を負った事故を受け、試験圧力の確認や、容器のバルブを急に開けないことなどを呼びかけました。

水張り(みずはり)

配管や槽に水を満たすことです。漏れの確認や、強度の試験のために行います。耐圧試験は水などの液体を使う試験です(富山県の事例集)。公開されている発電設備の資料では、吸込ラインにまずろ過水で水張りをして漏れを確認し、そのあとで試運転に進んでいます(東京電力)。使い方の例は「明日、タンクに水張りします」です。

水張りのあとには、水を抜く作業と乾かす作業が続くことがあります。腐食性の物質を通す配管の乾燥で、露点を目安にする例は、開放点検の項に書いた富山県の事例集にあります。

水張りは満たして見る作業で、ポンプを回して確かめる水運転とは別です。

火気(かき)と作業許可(さぎょうきょか)

火気は、溶接や溶断のように、火や火花を出す作業や道具のことです。消防の届出の書類にも、火気を使用する器具または火花を発する器具、という書き方があります(名古屋市)。グラインダーのように炎の出ない道具でも、火花を出すものは対象に入ります。使い方の例は「この区画は、今日は火気禁止です」です。

労働安全衛生規則(第285条)は、危険物が存在するおそれのある配管や容器に、決まりを置いています。危険物を除去するなどの措置をとったあとでなければ、火気を使う作業をさせてはならない、という内容です。化学設備を分解したり内部で作業したりするときは、引火性の蒸気や可燃性ガスの濃度を随時測定することも定められています(第275条の2)。

危険物を扱う施設では、火気を使う工事に消防への届出が要る場合があります。名古屋市と京都市がそれぞれ書類の案内を公開しており、自治体によって決まりが違います。

作業許可は、工事の実施を認める社内の手続きです。名称と様式は工場で違います。神奈川県の事例(H30-71)では、工事の実施を判断するときに、リスクのチェックリストを添えて組織で確認する対策がとられました。

養生(ようじょう)

火気の工事では、火花が周りに飛ばないよう、シートなどで覆うことを指します。ガス溶断の切断ノロが下の点検用ハウスのシートに飛んで燃えた事例では、養生が不十分だったことが原因の一つに挙がっていました。対策は、作業箇所と作業の下を不燃シートで二重に養生すること、周囲5 mと下方の可燃物を除くこと、作業者とは別の専任の監視員を置くことです(防災情報提供シート)。使い方の例は「溶接の前に、足元を養生しておいてください」です。

シートなら何でもよいわけではありません。消防庁は、溶断の火花が飛散防止用のプラスチックシートに着火した火災を受け、難燃性のものを使うこと、火花を発する場所での使用を避けることなどを注意喚起しました。

据え付け(すえつけ)

機器を決まった場所に置いて、固定することです(据付とも書きます)。ポッドキャスト「プラントライフ」#4「生産設備導入のドタバタ(科学系ポッドキャストの日)」(別サイト)では、生産設備を導入する工事の流れが語られています。装置を使う場所に設置し、装置同士を配管でつなぎ、センサーを付け、最後に電気配線をする順です。大きな設備は重機で据え付けます。設備を止めた状態での工事なので、ゴールデンウィークやお盆、年末年始を狙うことがある、という説明です。

使い方の例は「蒸留塔の据え付けは、今週で終わります」です。

据え付けが終わっても、すぐには運転できません。このあとに試運転が控えています。

試運転(しうんてん)

工事を終えた設備を、本番の原料を入れる前に動かして確かめる運転です。ポッドキャスト「プラントライフ」#4「生産設備導入のドタバタ(科学系ポッドキャストの日)」(別サイト)では、まず装置を一つずつ独立して動かして確認し、それから実際に流体を流す運転に進む、と話しています。

確認でよく見つかる例も、第4回に出てきます。たとえば、ポンプが動かない、動かすとブレーカーが落ちる、といったことです。温度計や圧力計の値がおかしい、表示が出ない、ということもあります。遠隔で動かす弁が、閉める操作で開いたり、開ける操作で閉まったりします。使い方の例は「ポンプの試運転は、明日の午前です」です。

生産開始の予定日が迫る中で行うため、特に慌ただしくなる、とも話されています。ポッドキャスト「プラントライフ」#4「生産設備導入のドタバタ(科学系ポッドキャストの日)」(別サイト)では、工事とは関係のない場所の装置が、工事の間に止まっていたせいで異常を出すこともある、とも話しています。

法令にも、使い始めるときの点検の条文があります(労働安全衛生規則 第277条)。対象は、初めて使うときや、分解して改造や修理をしたとき、1か月以上使わなかったときです。化学設備は、点検で異常がないことを確かめるまでは、使ってはならないと定められています。

水運転(みずうんてん)

実際の原料の代わりに水を入れて、漏れと、ポンプ・弁・計器の動きを確かめる運転です。試運転の一つとして行います。使い方の例は「水運転で漏れと計器を確認します」です。

公開されている発電設備の資料に、近い手順があります。もんじゅの資料は、系統に水を張って循環運転をし、漏れのないことを確認する手順です。そのあと、給水系などへ水張りと循環運転の範囲を順に広げます。東京電力の資料は、水張りで漏れを確認してから試運転に進む手順です。化学プラントでの呼び方は工場で違うことがあります。

水で確かめられるのは、漏れや機器と計器の動きまでです。原料を入れた運転は、水運転のあとの段階になります。

復旧(ふっきゅう)

工事で外したり変えたりしたものを、運転できる状態に戻すことです。閉止板を外す、開けた配管をつなぎ直す、といった作業が入ります。復旧のあとには、点検や気密試験、試運転が続きます。使い方の例は「復旧が済んだら、気密を見ます」です。

「戻した」は「確認済み」ではありません。神奈川県の事例(H23-40)に、安全弁の交換のため元弁の継手から配管を外し、作業のあとで配管を復旧した例があります。気密確認の試運転で昇圧した直後、継手のナットが外れてガスが噴き出しました。ナットが滑らかに回らないまま締めてねじ山を傷めたこと、締付手順が作業員に周知されていなかったことが、原因に挙がっています。

ポッドキャスト「プラントライフ」#6「3月8日は国際女性デー!化学プラントと働く女性(科学系ポッドキャストの日)」(別サイト)では、保全の仕事として、定期的なメンテナンスと並べて、異常時の復旧に触れています。トラブルのあとに運転できる状態へ戻す意味でも使われる言葉です。

参考資料

  1. 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第275条・第275条の2・第276条・第277条・第285条(別サイト)laws.e-gov.go.jp

  2. 労働安全衛生法施行令 別表第6(別サイト)laws.e-gov.go.jp

  3. 一般高圧ガス保安規則 第6条(別サイト)laws.e-gov.go.jp

  4. ENEOS Technical Review 第58巻第2号(2016年6月)(別サイト)www.eneos.co.jp

  5. 神奈川県 高圧ガス事故事例情報シート H15-10(別サイト)www.pref.kanagawa.jp

    神奈川県 高圧ガス事故事例情報シート H30-71(別サイト)www.pref.kanagawa.jp

    神奈川県 高圧ガス事故事例情報シート H21-24(別サイト)www.pref.kanagawa.jp

    神奈川県 高圧ガス事故事例情報シート H19-01(別サイト)www.pref.kanagawa.jp

    神奈川県 高圧ガス事故事例情報シート H23-40(別サイト)www.pref.kanagawa.jp

  6. 神奈川県「高圧ガスに伴う注意喚起等 気密試験中のホース破断事故」(別サイト)www.pref.kanagawa.jp

  7. 富山県のサイトで公開されている高圧ガスのノウホワイ事例集(PDF)(別サイト)www.pref.toyama.jp

  8. ニチアス技術時報 2018 No.2「ガスケットの締付管理について」(別サイト)www.nichias.co.jp

  9. 日本原子力研究開発機構「もんじゅ」水・蒸気系設備機能確認試験の概要(別サイト)www.jaea.go.jp

  10. 東京電力「1〜3号機におけるタービン建屋内炉注水ポンプの試運転について」(2011年12月27日)(別サイト)www.tepco.co.jp

  11. 名古屋市消防局 火気使用工事届(別サイト)www.city.nagoya.jp

  12. 京都市消防局 火気使用工事届出書の記載要領(別サイト)www.city.kyoto.lg.jp

  13. 防災情報提供シート No.010009020「ガス溶断中の切断ノロによるシート火災」(別サイト)www.bousaihaku.com

  14. 消防庁予防課 事務連絡「作業中の防火管理に対する注意喚起について」(令和7年6月17日)(別サイト)www.fdma.go.jp

  15. Projectmaterials「Spectacle Blind, Spade, Ring Spacer」(別サイト)blog.projectmaterials.com

フランジの種類・規格・呼び圧力と接続のしくみ(配管フランジ・相フランジ)

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