物質収支とエネルギー収支

化学工学/物質・熱収支物質・熱収支の1本目(全1本)公開更新広告

化学工学の基本となる物質収支とエネルギー収支の考え方を解説します。

この記事の内容
  1. 収支の考え方
  2. 物質収支
  3. エネルギー収支
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収支の考え方

収支は化学工学特有の考え方です。

質量保存の法則やエネルギー保存の法則に則り、投入したエネルギーが何に使われ、物質がどこに移動しているかを把握します。

その際に収支計算を行い、物質収支計算書や熱収支計算書としてまとめられます。

主に使われる数値として流量や濃度、組成、温度、圧力が挙げられます。

収支の式

収支の式は、ある限定された範囲や時間において入れた物質やエネルギーの量に対して出ていく量が等しくなることが基本です。

  • 入れた物質の量=出た物質の量
  • 入れたエネルギーの量=出たエネルギーの量

ここに反応で生成した新たな物質の量や反応熱が追加されます。

  • 入れた物質の量+反応で生成した物質の量=出た物質の量+反応で消費した物質の量
  • 入れたエネルギーの量+反応で生じた熱(発熱)=出たエネルギーの量+反応で吸収された熱(吸熱)

更にプロセス内に残る量を考えます。

製造工程によっては流入した物質やエネルギーは全て排出されるわけではなく、系内に蓄えられるものも多く存在します。

  • 入れた物質の量+反応で生成した物質の量=出た物質の量+反応で消費した物質の量+系内に蓄積した物質の量
  • 入れたエネルギーの量+反応で生じた熱=出たエネルギーの量+反応で吸収された熱+系内に蓄積したエネルギーの量

最後にロスの考えが含まれます。

例えば熱が大気に逃げてしまう(放熱)、配管のフランジから液体が漏れてしまう、流体と配管壁面との摩擦によりポンプの送液圧力が下がる(圧力損失)といった内容が挙げられます。

  • 入れた物質の量+反応で生成した物質の量=出た物質の量+反応で消費した物質の量+系内に蓄積した物質の量+ロス量
  • 入れたエネルギーの量+反応で生じた熱=出たエネルギーの量+反応で吸収された熱+系内に蓄積したエネルギーの量+ロス量
一点鎖線で囲んだ系の境界の図。左から入る量の矢印、右へ出る量の矢印、系の中身への生成量と消費量、境界を出るロス。下に、入る量+生成量=出る量+消費量+蓄積量の式
系の境界を越える流れと、中で増減する量。収支は境界ごとに立てる

バッチ製造と連続製造での違い

バッチ製造は装置内の内容物を毎回全て入れ替える運転方式です。

1サイクルごとに中身が全て入れ替わるため物質やエネルギーの出入り量は把握しやすくなっています。

対して連続製造は一定速度で連続的に操作する運転方式です。

連続製造においてはバッチの区切りがありませんが、時間あたりの出入り量として考えることで収支計算できます。

上はバッチ製造で、槽内の量が投入で増え、反応で一定、排出で0に戻る山形を3回繰り返す。下は連続製造で、入口と出口の流量が一定の水平線。1サイクル、または1時間あたりで収支をとる
バッチは1サイクル、連続は一定時間あたりで収支をとる

物質収支

化学プロセスにおいては反応工程を基準として前工程と後工程を考えます。

前工程では「原料の調製」を、後工程では「分離・精製」を主に行います。

そのため物質収支は反応前後工程の物理的な収支も考慮します。

原料が原料調製、反応、分離・精製を通って製品になる工程図。各ストリームに1〜6の番号。分離・精製から未反応物が原料調製へ戻り、副生成物が系外へ出る
化学プロセスの流れ(丸数字はストリーム番号。番号ごとに流量と組成を整理する)

物理的な物質収支

化学プロセスにおいては物理的なプロセス、つまり反応の前後工程が多くを占めます。

例えば単位操作として蒸留や濾過、吸収、吸着、抽出などが挙げられます。

これら単位操作を経るごとに物質収支がどのように変化するのかを整理しなければなりません。

特に流体においては連続の式が成り立つため、連続した配管の中での質量流量は一定になります。

そのため物質収支は体積流量ではなく質量流量で表現されます。

連続の式による流体の質量保存則

化学的な物質収支

化学反応を伴う場合は成分そのものが変化するため、反応特有の条件も考慮しなければなりません。

例えば反応率や収率が挙げられます。

  • 反応率:供給した原料がどれくらい消費されるか?
  • 収率:供給した原料に対してどれくらい目的物が得られるか?

化学反応を考えるため、基本単位は時間あたりの物質量(mol/hなど)が使われます。

更に前後で物理的な操作が加わるため、操作する温度や圧力も考慮して質量流量に換算して利用する場合もあります。

また反応に伴い投入した物質量(mol)の合計と生成した物質量の合計は異なることに注意が必要です。

例えば水の反応式は2H2+O2→2H2Oですので、2molの水素と1molの酸素(合計3mol)から2molの水が生成します。

横棒グラフ2段。物質量は水素2molと酸素1molの合計3molが、水2molに減る。質量は水素4.03gと酸素32.00gの合計36.03gが、水36.03gで同じ長さ
2H2+O2→2H2O:物質量は3 molから2 molに変わるが、質量は36.03 gで等しい

エネルギー収支

化学反応では発熱や吸熱を伴います。

温度を維持するためにも加熱冷却のプロセスが必要となり、エネルギー収支を計算しなければなりません。

また目的の物質収支を達成するために流体が持つ位置エネルギーや圧力エネルギーなども考慮します。

基本単位は時間あたりの熱量(J/hなど)です。

潜熱と顕熱

与えられた熱を何に使うのかは潜熱と顕熱で大きく分けられます。

潜熱は蒸発や凝縮のように状態変化する時に必要となる熱です。

対して顕熱は温度上昇のように物質が温度変化する時に必要となる熱です。

横軸が比エンタルピー、縦軸が温度の水の加熱曲線。氷は温度上昇、0℃で水平(融解333)、水は温度上昇、100℃で長い水平(蒸発2257)、水蒸気は再び温度上昇。水平部分が潜熱
水の加熱曲線(1気圧、0℃の液体を基準)。水平が潜熱、傾きが顕熱

潜熱と顕熱の違い(温度上昇と状態変化)

比熱

ある物質1kgを1℃上昇させるために必要な熱量を比熱と呼びます。

また1molの物質を1℃上昇させる場合はモル比熱です。

つまり比熱が小さい場合は加熱しやすく、比熱が大きい場合は加熱しにくいことを表します。

扱う化学物質の比熱が分からなければ必要な熱量を見積もることができません。

調べても値が見つからない場合は化学構造式から推算(別サイト)しなければなりません。

熱の移動方式

熱の移動には対流伝熱や伝導伝熱、放射伝熱の3種類が存在します。

  • 対流伝熱:流体の流れにより熱が移動
  • 伝導伝熱:物質の移動が無く熱のみが移動
  • 放射伝熱:高温物質から出る熱放射線によって熱が移動

特に混合が難しい流体も多いことから、熱交換器を用いた伝導伝熱が頻繁に採用されます。

伝熱の種類(対流伝熱・伝導伝熱・放射伝熱)

流動に関するエネルギー収支

配管内においてはベルヌーイの定理を基本として収支を考えます。

ベルヌーイの定理は位置エネルギーや圧力エネルギー、速度エネルギーの和が一定になることを示したものです。

ベルヌーイの定理[J/kg]

$$gz+\frac{P}{\rho}+\frac{ \ u^2 \ }{2}=一定$$

式は横にスクロールできます

ρ:密度[kg/m3]、g:重力加速度[m/s2]、z:高さ[m]
P:圧力[Pa]、u:速度[m/s]

ベルヌーイの定理は理想流体であること、つまり非粘性である場合に成り立ちます。

ただし実際は流体の粘性により管内摩擦が発生したり、配管継手部分にて渦によるエネルギー損失(圧力損失)が発生したりします。

ポンプなど外部からの動力供給、移送に伴う圧力損失を考慮して機械的エネルギー収支式を求めます。

低い位置の点1から、ポンプを通り、高い位置の点2へ流れる配管の図。基準面からの高さz1・z2、各点の圧力Pと速度u、ポンプの外部動力W、配管の摩擦や継手の損失Fを示す
点1から点2までの収支。W を加え、F を差し引いて、各点のエネルギーを比べる

機械的エネルギー収支式[J/kg]

$$gz_1+\frac{P_1}{\rho}+\frac{ \ u_1^2 \ }{2}+W=gz_2+\frac{P_2}{\rho}+\frac{ \ u_2^2 \ }{2}+F$$

式は横にスクロールできます

ρ:密度[kg/m3]、g:重力加速度[m/s2]、z:高さ[m]
P:圧力[Pa]、u:速度[m/s]、W:外部動力[J/kg]、F:圧力損失[J/kg]

ベルヌーイの定理の考え方

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