計算に重要な"理想流体"の考え方

化学工学/流体の基礎流体の基礎の1本目(全7本)公開更新広告

流体計算を厳密に行うには複雑な条件が含まれます。

そのため計算を簡便にするために仮定をおく場合があります。

その仮定の一つに理想流体であることが挙げられます。

この記事の内容
  1. 理想流体の条件
  2. 流体力学と水力学
  3. 関連記事

理想流体の条件

理想流体は完全流体とも呼ばれます。

流体の流れを把握するために複雑な要因を排除した理想的な流体モデルです。

理想流体は非粘性、非圧縮性であると仮定して計算を行います。

非粘性であること

粘性は流体の流れにくさを表します。

粘性があることで流体が流れる際の抵抗に繋がります。

例えば配管内において、粘性がある場合は配管壁面付近の流れが悪くなるため速度勾配が発生します。

同じ平均流速の2本の配管の断面。粘性のある実在流体は壁で流速0、中心で最大の放物線状の分布。粘性のない理想流体は壁でも滑り、どこも同じ流速の分布になる。
流速の分布の比べ(平均流速は同じ。実在流体は層流の例で、中心の流速は平均の2倍)

理想流体では粘性を考慮しない、つまり粘度ゼロと仮定することで計算を容易にしています。

ただし水のようなサラサラした液体も含め、すべての流体に粘性はあります。

理想流体の計算結果は実在流体と乖離があることは考慮しておかなければなりません。

横軸が入口からの配管の長さ、縦軸が圧力のグラフ。粘性のない理想流体の圧力は100 kPaのまま下がらないが、実在流体は距離とともに直線的に下がり、48 m で約38 kPa の圧力損失になる。
同じ太さの水平管の圧力(例:内径50 mm・流速2 m/s の水、管摩擦係数0.02、入口100 kPa)

とはいえ粘性を無視しても全体の流れの理解はできます。

非圧縮性であること

圧縮性は圧力により流体の体積が変化することを表します。

体積の変化は密度の変化に繋がります。

そのため理想流体では非圧縮性と仮定することで密度を定数として扱っています。

水など液体は殆ど体積変化しません。

また気体は体積変化しますが、空気でもマッハ数(流速÷音速)が0.3以上(流速100m/s程度)となるような状況でしか圧縮性は考慮しません。

つまり基本的には非圧縮性であり密度一定と考えられます。

流体力学と水力学

流体を考える学問に流体力学と水力学の2種類が存在します。

水力学で全体を把握し、流体力学で詳細を把握するイメージです。

水力学

水力学は流体の流れを比較的単純な物理法則から導く学問です。

流体力学を扱うよりも精度は低いですが、全体を素早く大まかに理解できる特徴があります。

計算するために様々な前提条件を置いてモデル化しています。

理想流体は水力学を考える上でのモデルの1つです。

流体力学

流体力学は流体の流れを偏微分方程式から導く学問です。

ナビエ・ストークス方程式を用います。

流れの詳細を把握できる一方で計算も複雑になり、初心者にとっては理解も容易ではありません。

まずは水力学を身に付けてから取り組んだ方が理解が早くなります。

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