計算に重要な"理想流体"の考え方

2022年7月17日

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流体計算を厳密に行うには複雑な条件が含まれます。

そのため計算を簡便にするために仮定をおく場合があります。

その仮定の一つに理想流体であることが挙げられます。

理想流体とは

  • 流体の流れを把握するために複雑な要因を排除した理想的なモデル
  • (条件1)非粘性であること
    流体の粘度がゼロで固体表面上でも抵抗が発生しないとする
  • (条件2)非圧縮性であること
    圧力によって体積変化が無く密度を定数とする
    流速が約100m/sを超える場合に考慮する程度



理想流体の条件

理想流体は完全流体とも呼ばれます。

流体の流れを把握するために複雑な要因を排除した理想的な流体モデルです。

理想流体は非粘性、非圧縮性であると仮定して計算を行います。

非粘性であること

粘性は流体の流れにくさを表します。

粘性があることで流体が流れる際の抵抗に繋がります。

例えば配管内において、粘性がある場合は配管壁面付近の流れが悪くなるため速度勾配が発生します。

配管内の粘性抵抗イメージ

理想流体では粘性を考慮しない、つまり粘度ゼロと仮定することで計算を容易にしています。

ただし水のようなサラサラした液体含め、すべての流体に粘性はあります。

理想流体の計算結果は実在流体と乖離があることは考慮しておかなければなりません。

とはいえ粘性を無視しても全体の流れの理解はできます。

非圧縮性であること

圧縮性は圧力により流体の体積が変化することを表します。

体積の変化は密度の変化に繋がります。

そのため理想流体では非圧縮性と仮定することで密度を定数として扱っています。

水など液体は殆ど体積変化しません。

また気体は体積変化しますが、空気でもマッハ数(流速÷音速)が0.3以上(流速100m/s程度)となるような状況でしか圧縮性は考慮しません。

つまり基本的には非圧縮性であり密度一定と考えられます。

流体力学と水力学

流体を考える学問に流体力学と水力学の2種類が存在します。

水力学で全体を把握し、流体力学で詳細を把握するイメージです。

水力学

水力学は流体の流れを比較的単純な物理法則から導く学問です。

流体力学を扱うよりも精度は低いですが、全体を素早く大まかに理解できる特徴があります。

計算するために様々な前提条件を置いてモデル化しています。

理想流体は水力学を考える上でのモデルの1つです。

流体力学

流体力学は流体の流れを変微分方程式から導く学問です。

ナビエ・ストークス方程式を用います。

流れの詳細を把握できる一方で計算も複雑になり、初心者にとっては理解も容易ではありません。

まずは水力学を身に着けてから取り組んだ方が理解が早くなります。

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