物質が状態変化に関する熱には潜熱と顕熱の2種類があります。
物質が状態変化する時に必要となる熱を潜熱と呼び、温度変化する時に必要となる熱を顕熱と呼びます。
物質の状態変化
例えば氷が水、水蒸気と形を変える時、状態変化が起きていると表現します。
固体、液体、気体どの状態からどの状態へ変化するかによって名称が変わります。
潜熱と顕熱とは
潜熱とは
物質が状態変化する時に必要となる熱を潜熱と呼びます。
温度変化に必要となる熱が状態変化に使われています。
そのため潜熱変化が起きている時は温度変化が起こりません。
状態変化の種類によって蒸発熱(気化熱)、融解熱などと名称が変化します。
顕熱とは
物質が温度変化する時に必要となる熱を顕熱と呼びます。
温度変化の速度は比熱に影響します。
比エンタルピー
潜熱や顕熱の熱量は比エンタルピーで表します。
単位は一般的に” kJ/kg ”が使用されます。
水の例
潜熱と顕熱に関して水を例に確認します。
氷に熱を加えると温度上昇が起こり、0℃に達するあたりから温度上昇が止まります。
その地点より氷から水への状態変化が起こっているため、熱を加えてはいるものの温度上昇がありません。
水を加熱して水蒸気にする過程も同様です。
水1kgを0℃から100℃まで上昇させるのに必要な比エンタルピーは419 kJです。
そのため水の比熱は4.19 kJ/kg・Kと計算することができます。
潜熱と顕熱の比較
潜熱と顕熱どちらが実際に影響が大きいのでしょうか。
25℃の水1kgを100℃の水蒸気に変化させる例を以下の条件で考えてみます。
- 水の比熱:4.19 kJ/kg・K
- 蒸発熱:2257 kJ/kg
潜熱は2257 kJ、顕熱は4.19×(100-25)=314 kJとなります。
今回の例ですと潜熱は全体の88%、顕熱は全体の12%と圧倒的に潜熱が大きくなります。
物質や条件によって当然変わってきますが、物質を状態変化させるための熱量が非常に大きいことは意識しておく必要があります。
圧力による値の変化
同じ物質であっても潜熱と顕熱は圧力によって変化します。
その効果を特に意識する必要があるのは蒸気を扱うときです。
蒸気圧力が高いとき、顕熱は増加し潜熱は減少します。
水蒸気については飽和蒸気表から読み取ることができます。
飽和蒸気表のh'が顕熱、rが潜熱です。
h"は顕熱と潜熱の合計値で全熱と呼ばれます。
オススメ書籍
・化学工学ー解説と演習ー
化学工学を勉強したい!と思ったら真っ先にオススメしたい書籍です。
他の汎用化学工学書籍には無い「撹拌動力計算」や「撹拌伝熱計算」も記載されています。
-
化学工学―解説と演習ー
www.amazon.co.jp
・化学プラント配管設計の基本
伝熱の種類、熱伝導の計算、熱交換器の種類について記載されています。
その他、化学工学の基本事項が解説された後、それらを踏まえて化学プラントにおける配管設計の基礎から詳細に解説される書籍です。
この1冊で配管設計を一通り勉強できます。
-
化学プラント配管設計の基本―配管技術者への道しるべ
www.amazon.co.jp
・伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ)
日本機械学会が出版する伝熱工学の解説書です。
幅広い分野を詳細に解説しているため、体形的に伝熱を勉強したい方にオススメです。
-
伝熱工学 (JSMEテキストシリーズ)
www.amazon.co.jp