電気制御

産業用ネットワークの基礎知識

産業用ネットワークは工場で利用するためのネットワークを指します。

通信不良がトラブルのもとになるため、高い通信速度、遅延しにくい、途切れないなどの条件が求められます。

今回は産業用ネットワークを大別して種類ごとに基本事項を解説します。

詳しい解説は目次から項目をクリックしてご確認ください。

産業用ネットワークのメリット

これまで「センサーやアクチュエーターなどの現場機器」と「PLCやDCSなどの制御機器」との信号のやり取りはアナログ信号が一般的でした。

アナログ信号の代表的な”4-20mA”や”0-10V”は電流や電圧の値でデータを表現する方式です。

例えば液面高さ0m~10mを表現できるレベル計を使用したとします。

その場合、液面高さが0mの時はレベル計から4mAの信号が送られ、10mでは20mA、5mでは12mAと出力されます。

液面高さに応じて電流値が変わることで相対的に液面高さが表現できます。

対して産業用ネットワークでは各種通信ケーブルを用いたデジタル信号でやり取りします。

アナログ信号から変更することによって様々な効果が得られます。

省配線の実現

アナログ信号の場合、現場機器から制御機器までの配線をそれぞれ行う必要がありました。

各機器の信号配線は1組2本以上の配線で接続します。

つまり現場機器が10個、100個と増えてくるにつれて配線本数は莫大になりコストや手間がかかってしまいます。

対して産業用ネットワークを使うことで1本のケーブル配線のみでも「複数の機器からの信号」や「1機器からの複数信号」を伝送できます。

これはデジタル信号が1本のケーブルから複数種類の信号を送れる多重伝送の機能をもつからです。

それだけでなくアナログ信号の中継盤に関するコストや設置スペースの圧迫も改善されます。

信号精度の向上

アナログ信号は制御機器で受信する際にデジタル信号に変換するA/D変換(アナログ/デジタル変換)が必要です。

また制御機器から出力して指示を出す場合も逆のD/A変換が必要です。

信号精度は変換のたびに落ちていくため、デジタル信号で直接通信した方が信号精度向上に繋がります。

パラメータ通信が可能

センサーをはじめとして現場機器は高性能化しています。

インテリジェント化しているとも表現されます。

そのため各機器ごとにパラメータの設定をすることも増えているため、そのパラメータ通信も必要になります。

産業用ネットワークを使うことで付随するパラメータも同一配線で通信することができます。

産業用ネットワーク市場

産業用ネットワークの分類やそれぞれのシェアについて簡単に解説します。

市場規模

株式会社富士キメラ総研より産業用ネットワーク関連製品/サービスの国内市場について報告されています。

2025年度の予測では2020年度比で45.4%増の4,340億円が見込まれるとのことです。

昨今のDXやAIブームに伴いIoT関連製品の需要が増加しています。

分類とシェア

産業用ネットワークは大きくフィールドバス、産業用Ethernet、ワイヤレスの3種類に分類されます。

それぞれについて後ほど詳細に解説します。

HMSインダストリアルネットワークス株式会社が報告している産業用ネットワーク市場シェア動向からそれぞれのシェアを知ることができます。

産業用Ethernetが年々増加しており、2021年においては65%のシェアを誇るようになりました。

産業用ネットワークのシェア年次変化

データ引用: 産業用ネットワークシェア動向 2021年2020年2019年2018年2017年

ここから必要となる事前知識

産業用ネットワークの各種説明に入る前に、事前に知っておきたい知識を解説します。

プロトコル

ある機器同士が通信する場合、どのような形式で通信するのか取り決めておく必要があります。

この取り決めをプロトコルと呼びます。

プロトコルを一致させていないと正しく通信することができません。

私たちが問題なく会話できるのも日本語という共通言語、つまりプロトコルを使うからであり機械も同じ考え方です。

OSI参照モデル

機器同士が通信する際、様々な処理を経て通信しています。

つまり通信するにも処理の種類ごとに様々なプロトコルを使用しているということです。

しかし各社が好きな形でプロトコルを作っていては別メーカー同士で通信できない、もしくは相当な手間をかけて通信することになってしまいます。

OSI参照モデルではネットワークを通信機能に応じた7つの階層に分け、プロトコルを所属する層で説明できるようにしています。

更に詳しい内容に関しては以下の記事で解説しています。

フィールドバス

まずは産業用ネットワークの1つ、フィールドバスについて解説します。

現在では産業用Ethernetの普及に伴いシェアは低下傾向です。

RS-232C、RS-422、RS-485とは

フィールドバスの多くはRS-485ベースで構成されています。

RS-485の他にもRS-232CやRS-422などが有名ですが、これらはOSI参照モデルのうち物理層の仕様を表しています。

物理層ではケーブルの種類やコネクタ形状、電気信号変換方式などが定義されています。

使用場所

フィールドバスがRS-485ベースのものが多い理由として、産業用途として重要な低遅延であることが挙げられます。

これは、通信速度が速くても一般家庭でも使用されるEthernetケーブル、いわゆるLANケーブルが使用されない理由となる特徴です。

そのためフィールドバスは確実な伝送が求められる制御機器と現場機器との通信に使われています。

ただし通信能力にも限界があり、通信量や通信速度、汎用性の観点から産業用Ethernetへと移り変わりつつあります。

現在は過渡期であるためフィールドバスを使用している領域は数多く残っています。

代表的な規格

フィールドバスの代表的な規格にPROFIBUS DP、Modbus-RTU、CC-Link、DeviceNetなどがあります。

産業用Ethernet(イーサネット)

次に普及が進んでいる産業用Ethernetについて解説します。

Ethernetについてまずは以下の記事を先に読んで頂けると理解が深まります。

Ethernetとの違い

そもそもEthernetは大量のデータ送信を目的としており伝送時間に関しては重要視されていません。

そこでEthernet技術を産業領域に適応できるようリアルタイム性能やデータ信頼性を向上させた産業用Ethernetの分野が確立しました。

RTE(リアルタイムイーサネット)とも呼ばれます。

代表的な規格

代表的なものにPROFINET、Ethernet/IP、EtherCAT、CC-Link IE、FL-netなどがあります。

産業用EthernetはDCSやPLC計装の通信にも使用されています。

TSN

TSNは新しい産業用Ethernet規格ではなく、Ethernet規格を拡張したものです。

Time Sensitive Networkingの略で、時間同期性能を追加して確定性とリアルタイム性が高められています。

また時間同期性を確保しつつ異なるネットワークを同一配線で混在させられます。

ワイヤレス

ワイヤレスはフィールドバスや産業用Ethernetのような有線ではなく無線で通信を行います。

配線が困難な場所をはじめとしてIoT機器にワイヤレス通信性も求められるようになりました。

現在着実に成長しており、5Gを見据えた動きが進んでいます。

ただしノイズや遅延など課題もありますので、使用製品や使用場所の理解が重要です。

自宅のWi-Fiでは急に繋がらなくなることもありますが、産業用途では同様の事態は避けなければなりません。

まとめ

今回は産業用ネットワークについて解説しました。

まずはこれらの事項を理解したうえでEthernet/IP、EtherCAT、CC-Link IEなど個別の規格を勉強すると良いでしょう。

少しでも参考になれば幸いです。

記事への問い合わせはこちらから

-電気制御