電気制御

【新人向け】DCS制御の基本的な特徴や役割

ある程度規模が大きくなるとプラントではDCSを使用するようになります。

初めはDCSが何なのか分かりづらく、調べてみても分かったようで分からない・・・そんな存在だと思います。

そもそも専門機器であるが故に初学者用の解説が充実していません。

解説内容はある程度理解した方が分かるような用語の使い方がほとんどです。

また高度なシステムであるが故に初心者の理解が難しくなっています。

今回は初めてDCSと出会った方がまず知っておきたい知識を解説します。

ぜひ読んで頂きたい方

  • DCSをこれから扱うようになる方
  • 最低限のDCSの基礎を身につけたい方
  • DCSについて色々調べたけれど用語が難しくてイマイチ理解ができていない方

詳しい解説は目次から項目をクリックしてご確認ください。

DCSとは

まずはDCSの基本事項から解説します。

正式名称

DCSはDistributed Control Systemの略称で、分散制御システムを意味します。

文字通り分散した制御システムとなっているのですが詳細は以降で解説します。

活用箇所

主に規模が大きな石油化学、発電、製薬、食品、製鋼、製紙など多業界で使用されています。

流体を主に扱うプロセス・オートメーション(PA)分野が対象です。

反対に自動車や半導体などの自動制御システムはファクトリー・オートメーション(FA)と呼ばれます。

取り扱いメーカー

グローバルシェアのトップはスイスのABBで20%程度のシェアを誇っています。

その他にもアメリカのハネウェルやエマソン、ドイツのシーメンスなどが挙げられます。

ABBやシーメンスは電力・発電領域、ハネウェルやエマソン石油化学領域に比較的強い特徴があります。

日本のメーカーとしては横河電機が特にシェアを広げており、東芝や日立製作所などもDCSを販売しています。

基本構成

DCSシステムは大きく制御、監視、保守の3要素に分かれます。

PLCをご存じであればそれと同じようなものだと考えても差し支えはありません。

制御

主にセンサーから受け取ったデータを用いて機器の動作を指示します。

センサーなどDCSへ取り込むデータは入力データ、反対にDCSから制御指示を出すデータは出力データと呼びます

制御内容は何かをON/OFFする制御だけではありません。

メインはセンサーデータを基に温度を何℃にするか・バルブを何%開けるのかといった量を制御することです。

このような量の制御はループ制御と呼ばれ、PID制御が有名です。

規模が大きくなると数千点にも及ぶ入出力データを全て一気に制御しなければなりません。

入力データ例

  • 温度計の温度
  • レベル計の液面高さ
  • 押しボタンスイッチのON信号
  • 電流計の電流値

出力データ例

  • 自動弁の開閉動作
  • コントロールバルブの開度
  • モーター回転数
  • 装置動作開始

監視、操作

先ほど数千点にも及ぶ入出力データと記載しましたが、それはつまりこれらを監視しなくてはならないということです。

多くは汎用のWindows PCに各社専用の監視ソフトを用意しており、場合によってはタッチパネルなどを使用して製造現場でも監視や操作ができるようになっています。

主な監視・操作用途

  • 製造状態の確認
  • トレンドデータの確認
  • 制御パラメータの変更
  • 異常監視
  • 工程進捗や異常発生のアラーム

システムの保守、構築

DCSのプログラム変更や設定変更を行います。

多くはグラフィカルな操作性で、初めて見ても意味が理解しやすい構成になっています。

特徴

DCSの用途は主にプロセス・オートメーション(PA)です。

高温高圧、危険物など危険性の高い流体を扱うが故に高い信頼性が求められました。

キーワードは「止まらない」と「波及しない」です。

故障に備えた待機システム(二重化)

キーワード1つ目の「止まらない」です。

システム分野では冗長化(じょうちょうか)と言われます。

特にトラブルに備えて同じシステムを準備しておく二重化という方法が採用されています。

二重化の対象は電源ユニット、CPUユニット、入出力ユニット、制御ケーブル、監視画面(=PC複数台)と多岐に渡ります。

例えば運転中にCPUユニットが故障したとします。

するとすぐに待機システムに切り替わり何事もなかったかのように運転を続けます。

装置は停止することなく待機システムが稼働している間に故障部品を交換できます。

二重化したシステム同士は頻繁にデータやり取りをしておりスムーズな待機システムへの移行ができるようになっています。

グループごとに分散した制御ユニット

キーワード2つ目の「波及しない」です。

DCS普及まではDDC(直接計算機制御)という1台の計算機で大規模制御をされていました。

一方で計算機の故障がシステム全体に波及するというデメリットがありました。

この問題を解決するため、DCSは制御システムが複数あり、制御したいグループごとに分散されています

つまり、あるグループの制御システムに異常が発生しても別のグループへは異常が波及しないようになっています。

分散の種類としては機能の分散、場所の分散、危険性の分散などが挙げられます。

独自の通信規格(プロトコル)

世の中のネットワークはEthernetを用いることが一般的になっています。

そもそもEthernetは大量のデータ送信を目的としており伝送時間に関しては重要視されていません。

そこでEthernet技術を産業領域に適応できるようリアルタイム性能やデータ信頼性を向上させた産業用Ethernetの分野が確立しました

RTE(Real Time Ethernet)とも呼ばれます。

特にDCSメーカーである横河電機はVnet/IP、東芝はTC-netなどのように安定稼働性を特段重要視した独自の通信規格を用いています。

他にもFA分野を主軸として一般に普及しているCC-Link IEやEtherNet/IPといった産業用Ethernetがあります。
後に解説するPLC計装ではこれらを用いて通信するのが一般的です。

セキュリティ

先ほど説明した独自プロトコルもセキュリティ向上の一端を担っています。

またオペレータ認証機能、操作監視範囲の制限、操作制限などを細かく設定でき誤操作によるトラブルを極力減らす仕様になっています。

形式化された多彩な機能

ファンクションブロックという形で多種多様な機能がモジュール化されています。

PID制御、シーケンス制御、操作、演算、モニタリングなど実行したい内容は網羅されており、これらを組み合わせることで簡単に高度な制御が実現できます。

またシーケンス制御はシーケンステーブル、ロジックチャート、SFC、SEBOLなど様々な形で組み立てることも出来ます。

オンラインメンテナンス

DCSは止めないことが基本です。

そのため稼働中に大抵のシステムメンテナンスができるような仕様になっています。

二重化していれば稼働中に機器を取り外し交換することも出来ます。

デメリット

メリットの多いDCSですが、当然それに伴う大きなデメリットがあります。

根本的な問題はメーカー独自色の強さです。

初期費用、維持費用の高さ

DCSはメーカー専用品が多く新規導入・メンテナンスどちらにしろ割高になってしまいます。

もちろん市場に流通していることも少なく、入手するには直接メーカーから購入することが一般的です。

ただし近年では独自色を無くすためにオープン規格O-PASが検討されており時代が変わり始めている印象です。

専門性が必要なプログラム改造

各メーカーそれぞれの独自色が強いため、プログラム改造を行いたい場合は新たに覚えなければなりません。

メーカーから監視操作・改造に関するハンズオンの講習も用意されています。

FAのような高速制御は苦手

DCSは1秒程度(早くとも0.1秒)の周期で入力信号を読み込んで出力します。

これは超高速を求めないバルブやポンプの動作などを主目的としているためです。

一方FA分野で主に用いられるPLCは1ミリ~数10ミリ秒程度と高速の周期で制御されています。

つまりPLCはDCSの数100倍の周期で演算をしていることになります。

DCSにもミリ秒オーダーでの制御を組み込めますが、それはあくまで特殊機能としての位置づけです。

DCSの代替品PLC計装

実は先に示したデメリットを解消するためにDCSからPLCに置き換えるという動きもあります。

それがPLC計装です。

DCSが流行った数10年前ではPLCのCPUの性能も悪く、大量のループ制御を行うプラントには向きませんでした。

現在ではCPUの処理性能が向上したおかげでDCSのような使い方ができるようになりました。

今や電源やCPU、ケーブルまでも二重化できるシステムになっています。

産業用通信規格や統合監視機能も充実しており、今やDCSよりオープンなPLCを選ぶ企業も増えています。

対応メーカー

国内で有名なのが三菱電機のMELSEC計装です。

その他にもオムロン横河電機などPLCを取り扱う各社が提供しています。

いくつか実例のリンクを紹介しておきます。

ネットワーク

PLC計装のネットワークはCC-Link IEやEtherNet/IPといった一般的な産業用Ethernetが用いられます。

上位システムとの連携や高機能化するには都合が良い仕様になっています。

ただしこれらはあくまでもFA分野を中心に検討されたものであることには注意が必要です。

どのように使い分けるのか

普段の取り回しの良さを考えると、個人的には必要性が無い限りPLC計装を選択するということで良いと思っています。

最近ではPLCがC言語やPythonに対応し高機能化を実現するためのユニットも増加しています。

ただしPLC計装はあくまでDCSの特徴に似せた製品であるだけです。

横河電機の技術情報誌ではDCSについて「24 時間 /365 日の連続使用という条件での高い稼働持続性が要求される」と表現するなど連続稼働に対する強い意思表示をしています。

なんとコアとなる制御システムの稼働率は99.99999%(セブンナイン)以上とのことです。

これは待機側CPUを設けるだけでなくメイン・待機ユニット内にもそれぞれ照合用CPUを設ける「ペア&スペア方式」のような独自技術が取り入れられているためです。

入出力点数やループ制御点数といった制約を除けばDCSを選択する明確な基準はありません。

安全性や経済的・社会的影響を加味し、何が何でも止めてはいけない!というような場所ではDCSを選択すべきです。

まとめ

今回はDCSの基礎について解説しました。

少なくとも以下内容をまずは押さえておくと今後の理解が早くなります。

ポイント

  • DCSの特徴は装置が「止まらない」ことと不具合が周囲に「波及しない」こと
  • メーカー独自色が強くトータルコストは高めになってしまう
  • DCSの代替品としてPLC計装があるが全ての事業領域で置き換えられる訳ではない

余談ですが、今回は横河電機製DCSのCENTUM三菱電機製PLCのMELSECが多めに取り上げられた内容になっています。

日本国内においてこれら2種がDCS系システムとして確固たる地位を確立している事が理由です。

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