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目的に応じた蒸留方法の種類

2022年1月10日

蒸留は2つ以上の物質を沸点の違いで分離する方法です。

工業的には様々な種類の蒸留法が考案されています。

蒸留の種類

  • 基本的な蒸留
    • 単蒸留:一番単純な蒸留機構だが純度は低い
    • 精留:単蒸留を繰り返して純度を上げたもの
  • 圧力操作による蒸留
    • 減圧蒸留:減圧により物質の沸点を下げて蒸留
    • フラッシュ蒸留:連続的に単蒸留を行う
    • 分子蒸留:減圧蒸留よりも高真空での蒸留
    • 加圧蒸留:沸点が低い物質を加圧して蒸留
  • 特殊な蒸留
    • 水蒸気蒸留:水蒸気とともに高沸点成分を蒸留
    • 抽出蒸留:沸点が近い2成分に第3成分を加えることで蒸留可能にする



基本的な蒸留

まずは基本的な蒸留操作について解説します。

単蒸留

単蒸留は小学校~高校までの教科書にも載っているような蒸留方法です。

容器内の液を加熱し蒸発させ、冷却した蒸発分を分取することで低沸点成分の比率が高い液を得られます。

分離能はそれほど高くなく純度を求めた分離には向きません。

原料が少ない場合、不揮発性成分との分離の場合、沸点に大きな差がある場合などで利用されます。

精留

単蒸留は分離能が良くないですが、単蒸留を繰り返すことで純度を上げることができます。

これを精留と呼びます。

ただ工業的に何度も単蒸留を繰り返すのはコスト的に割に合いません。

これを解決するために考案されたのが蒸留塔です。

1つの塔の中で蒸留するだけで単蒸留を何度も繰り返したような効果が得られる構造となっています。

効率的に純度の高い蒸留効果を得たい場合や沸点にそれほど差がない場合に利用されます。

圧力操作による蒸留

蒸留は物質の沸点を利用するため圧力と密接に関わります。

基本蒸留操作に加えて圧力も変化させることで常圧時よりも効率的かつ効果的に蒸留することができます。

減圧蒸留

ほとんどの物質は周囲の圧力が下がる、つまり減圧状態であると沸点は下がります。

加熱が必要な蒸留工程において、減圧した状態で蒸留することで加熱温度を下げることができます。

高温での加熱により分解・重合する物質や沸点が異常に高い物質の蒸留に利用されます。

減圧にすることで共沸点がなくなるような場合にも利用されます。

真空状態では沸点を下げられるだけでなく、酸化を抑える働きがあります。

真空の役割

フラッシュ蒸留

フラッシュ蒸留は連続的に原料を供給し単蒸留を行います。

気液分離器へ原料供給する直前に減圧弁を設けており、減圧された液が分離器へ供給されると一部が蒸発して気液平衡状態を形成します。

この操作をフラッシュと呼びます。

フラッシュ蒸留は連続蒸留であることから粗く大量に処理することができます。

分子蒸留

分子蒸留は減圧蒸留よりもさらに真空度を高めた状態での蒸留です。

ある程度の熱ですぐに分解してしまうような熱に弱い物質の蒸留に利用されます。

加圧蒸留

沸点が非常に低い物質を利用する場合、減圧蒸留とは対照的に加圧蒸留する場合もあります。

冷却媒体を必要温度まで下げられず蒸発物質を凝縮しきれない場合に有用です。

特殊な蒸留

通常の蒸留では分離できない場合に利用される特殊な蒸留手法も存在します。

使用頻度は比較的少なくなります。

水蒸気蒸留

水蒸気蒸留は水蒸気を蒸留塔へ吹き込みながら、水蒸気とともに蒸発させます。

水蒸気の供給量が増える、つまり水蒸気の分圧が増えるほど目的成分を低温で蒸発できるようになるため、高沸点物質の分離に用いられます。

凝縮物は水との2層を形成するため、水を分離精製すれば目的成分が得られます。

蒸留の温度を下げられるメリットはありますが水に不溶な物質でなければなりません。

抽出蒸留

抽出蒸留では、2成分の沸点が近い場合や共沸する場合に第3成分を加えることで蒸留を可能にします。

添加により2原料間の比揮発度を大きくすることが目的です。

ここで添加する第3成分はエントレーナーとも呼ばれます。

第3成分は沸点が原料よりも高く溶解性があることが条件です。

工業的にはブタジエンやイソプレンの抽出蒸留が有名で、溶剤にはDMFが使用されます。

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