蒸気圧の基本とプラントでの活用方法

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蒸気圧の基本と、混合溶液の蒸気圧、プラントでの活用方法を解説します。

この記事の内容
  1. 蒸気圧とは
  2. 混合溶液の蒸気圧
  3. プラントへの応用
  4. 蒸気圧の求め方
  5. 水を冷やすと沸騰する!?
  6. 関連記事

蒸気圧とは

蒸気圧とは気液平衡状態にある時の蒸気の圧力を表します。

飽和蒸気圧とも呼ばれ、蒸気圧が高いほど蒸発しやすいことを意味します。

蒸気圧のイメージ

水が入った容器を考えます。

蓋をせず上部を開放していた場合、水は時間経過とともに蒸発して減っていきます。

対して蓋をした状態では、蒸発しながらも水は減っていかないため蒸気と水が混在した空間となります。

最終的には蒸発と凝縮の速度が同じである気液平衡状態となります。

気液平衡状態で蓋部分にかかる蒸気の圧力が蒸気圧です。

水の入った容器を2つ並べた断面図。左の開放容器では蒸気が上へ逃げて水が減る。右の密閉容器では蒸発と凝縮が釣り合い、蒸気が蓋を内側から押す力が蒸気圧
蓋を押す蒸気の圧力が蒸気圧(右は蒸発と凝縮の速さが等しい気液平衡)

温度と蒸気圧の関係

温度が高いほど蒸気圧は指数関数的に高くなります。

この温度と蒸気圧の関係を表した線を蒸気圧曲線と呼びます。

蒸気圧が大気圧(101.3 kPa)である時の温度が常圧の沸点です。

大気が外から押さえつけている圧力を、蒸気圧が上回ることで沸騰するようになります。

参考として、後述するアントワン式を用いてプロットした蒸気圧曲線を以下に示します(アントワン定数参考(別サイト))。

水とエタノール、メタノールで蒸気圧曲線は違うように、物質によって蒸気圧曲線は異なります。

横軸が温度0〜120℃、縦軸が蒸気圧の曲線。水・エタノール・メタノールの蒸気圧は温度とともに急に増え、大気圧101.3 kPaの線と交わる温度が沸点で、水100℃、エタノール78℃、メタノール65℃
蒸気圧曲線と沸点(アントワン式から計算。大気圧の線との交点が沸点)

混合溶液の蒸気圧

これまでは単一成分に関する蒸気圧について述べました。

2成分以上の混合溶液が理想溶液の場合はラウールの法則に従います。

ラウールの法則

各成分の蒸気圧に系内でのモル分率をかけた値が各成分の蒸気圧です。

これをラウールの法則と呼びます。

ラウールの法則

$$ \begin{align} P_{Ax}&=\frac{n_A}{n_A+n_B}P_A\\ P_{Bx}&=\frac{n_B}{n_A+n_B}P_B \end{align}$$

式は横にスクロールできます

PAx , PBx:溶液での物質Aおよび物質Bの蒸気圧
PA , nA:純物質Aの蒸気圧[Pa]と物質量[mol]
PB , nB:純物質Bの蒸気圧[Pa]と物質量[mol]

上式の物質Bが不揮発性物質であった場合、例えば食塩水を考えます。

不揮発性物質である食塩を添加するほど水のモル分率は減少するため、水の蒸気圧は低下します。

これを蒸気圧降下と呼びます。

また蒸気圧が下がることにより沸点が上昇しますので沸点上昇とも呼ばれます。

横軸が温度80〜110℃、縦軸が水の蒸気圧のグラフ。純水の曲線より不揮発性物質を溶かした水の曲線が低く、大気圧101.3 kPaに達する温度は純水の100.0℃から103.0℃へ上がる
溶液の蒸気圧曲線は純水より低く、大気圧に達する温度(沸点)が上がる

ドルトンの法則

各成分の蒸気圧を合計すると、その系内の全圧が求まります。

これをドルトンの法則(ドルトンの分圧の法則)と呼びます。

ドルトンの法則

$$P=P_A+ P_B $$

式は横にスクロールできます

P:全圧[Pa]、PA:物質Aの蒸気圧[Pa]、PB:物質Bの蒸気圧[Pa]

蒸気圧降下(沸点上昇)

ラウールの法則とドルトンの法則を組み合わせることで、溶液における系内の圧力は次のように表現できます。

ラウールの法則とドルトンの法則

$$P=\frac{n_A}{n_A+n_B}P_A+ \frac{n_B}{n_A+n_B}P_B $$

式は横にスクロールできます

P:全圧[Pa]、PA ,nA:物質Aの蒸気圧[Pa]と物質量[mol]
PB ,nB:物質Bの蒸気圧[Pa]と物質量[mol]

横軸が物質Aのモル分率、縦軸が蒸気圧のグラフ。物質Aの蒸気圧は原点から純物質Aの値まで直線で増え、物質Bは純物質Bの値から0へ直線で減る。2本を足した全圧も直線で、両端で純物質の値に一致
ラウールの法則(各成分は直線)とドルトンの法則(足すと全圧)

プラントへの応用

ここではプラントでの蒸気圧の利用方法を解説します。

蒸留

蒸留は物質の沸点の違いを利用して分離するため蒸気圧と密接に関わります。

蒸留の計算を行うには蒸気圧を確定・予測しておく必要があります。

また系内の圧力を下げ沸点を下げて蒸留する減圧蒸留は有名です。

キャビテーション

キャビテーションは液体が流れる場所で圧力差が生じた際に、短時間で気泡の発生と消失を繰り返す現象です。

気泡が弾けて消失する際には大きなエネルギーが発生します。

そのため配管や機器へのダメージを避けるためにもキャビテーションを防ぐ必要があります。

キャビテーションは特に船のスクリューやポンプなど周囲との速度差が大きいエリアで起こります。

例えばポンプの場合、ポンプ内の圧力が蒸気圧以下まで下がると液体の蒸発が始まり気泡が発生します。

液体の蒸気圧を把握し、ポンプ内部の圧力を想定して配管等も含めた設計をしなければなりません。

蒸気圧の求め方

ここでは蒸気圧の求め方を解説します。

ちなみに基本的な物質は既にデータがあることが多く、まずは調査することをお勧めします。

アントワン式

蒸気圧の経験式としてアントワン式があります。

アントワン式

$$\log_{10}P = A-\frac{B}{t+C}$$

式は横にスクロールできます

P:圧力[mmHg]、t:温度[℃]、A:アントワン定数[-]、B, C:アントワン定数[℃]

アントワン定数は物質固有の値です。

アントワン定数が分かれば温度に対する圧力(蒸気圧)が求められ、蒸気圧曲線が作図できます。

アントワン定数は大江先生のHP(別サイト)にも一部掲載されています。

また化学工学便覧には大量のアントワン定数が掲載されていますので参考にしてください。

改訂七版 化学工学便覧(別サイト)化学工学会 編 / 丸善出版

アントワン定数と温度から蒸気圧を換算できるツールも作っておりますので活用ください。

アントワン式を用いた蒸気圧計算ツール

プロセスシミュレータ

既知の物性データはプロセスシミュレータのデータバンクに保存されている場合があります。

実際にシミュレーションをする際は物性値ではなく物質名を選択するのみです。

実験

既知のデータがない場合は実験により求めます。

測定方法には様々な種類があり、必要となる試料の量や求める精度により異なります。

代表的な測定方法に関しては東レリサーチセンターのHP(別サイト)に記載されています。

また外部に委託する方法もあります。

例えばアドバンス理工(別サイト)では蒸気圧の受託分析サービスを行っています。

水を冷やすと沸騰する!?

沸騰した水を密閉した状態で冷やすと、再び沸騰する現象が起きます。これは次の順で容器内の状態が変化しているためです。

  1. 容器内の温度が下がり気化した水蒸気が凝縮する
  2. 水蒸気が減少することにより減圧状態になる
  3. 減圧することにより水の沸点が低下する
横軸が温度、縦軸が水の蒸気圧のグラフ。沸騰直後の100℃・101.3 kPaから60℃に冷えると、密閉容器内の圧力は曲線に沿って19.9 kPaまで下がり、水はこの圧力以下で沸騰できる
冷やすと容器内の圧力は蒸気圧曲線に沿って下がり、沸点も下がる

普段の経験では理解できない現象でも、沸点が蒸気圧に由来することを知っていれば理解できます。

蒸気圧の理解を踏まえて、減圧沸騰の動画を見てみてください。

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アントワン式を用いた蒸気圧計算ツール

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