真空状態の特徴と使いどころ

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プロセス産業において真空状態の活用は盛んです。

真空の基本と、真空状態の特徴や使いどころを解説します。

この記事の内容
  1. 真空とは
  2. 真空状態の特徴
  3. 真空状態の作り方
  4. 関連記事

真空とは

私たちは普段、大気から圧力、つまり大気圧101.325kPaを受けています。

真空とは大気圧より低い圧力を指し、減圧状態であるということを意味します。

真空の表記方法

圧力表示として大気圧を0として真空状態をマイナス表記する相対圧力(ゲージ圧力)の考え方もあります。

完全に気体分子を取り除いた状態を、絶対圧力では0 MPa、ゲージ圧力では-101.325 kPaなどと表現します。

横に引いた2本の目盛り。絶対圧では完全真空が0 kPa、大気圧が101.325 kPa。ゲージ圧では完全真空がマイナス101.325 kPa、大気圧が0 kPa。2つの点の間が真空。
完全真空から大気圧までが真空。絶対圧とゲージ圧で数字が変わる

絶対圧力とゲージ圧力の考え方の詳細は以下の記事で解説しています。

絶対圧力とゲージ圧力の違いと換算方法

真空の区分

真空にも圧力(真空度)に応じて「低真空、中真空、高真空、超高真空、極高真空」の5つに区分されます。

明確に真空度と対応した分け方は無く、目安として以下の通りです。

大気圧10の5乗Paから10のマイナス8乗Paまでを対数目盛りで縦に並べた図。低真空、中真空、高真空、超高真空、極高真空の順に真空度が上がり、油回転式ポンプは低〜中真空、油拡散・ターボ分子ポンプは高真空側に使う。
真空の区分(JIS Z 8126-1)と本文のポンプの使い分け(対数目盛り)

真空状態の特徴

真空状態が製造プロセスにおいてどのような役割を果たすのかについて解説します。

沸点を下げる

そもそも沸騰は、大気圧よりも物体の蒸気の圧力(蒸気圧)が大きくなることで起こります。

つまり真空状態では大気の圧力が小さくなるため、より低い温度で蒸発させることができます。

この原理を利用しているのが減圧蒸留です。

横軸に絶対圧、縦軸に水の沸点を取ったグラフ。大気圧101.3 kPaで100 ℃、50 kPaで約81 ℃、10 kPaで約46 ℃、5 kPaで約33 ℃と、圧力が下がるほど沸点が下がる。
水の沸点と圧力(Antoine の式から計算)

蒸気圧の詳しい考え方は以下の記事で解説しています。

蒸気圧の基本とプラントでの活用方法

酸化を抑える

物質の酸化は空気中の酸素が原因で起こります。

真空は系中の空気が少ない状態、つまり酸素が少ない状態なので酸化を抑えることができます。

食品で有名な真空パックはこの理論に基づいています。

例えばタンク内で製造している際に酸化劣化を抑えたい場合は真空状態で製造することで対策できます。

差圧を利用する

真空にすることで大気圧との圧力差(差圧)が発生します。

圧力の高いところから低いところへ力は移動するため、真空側に吸引する力がはたらきます。

ワークの上に吸着パッドを置いた断面図。パッド内部は真空で圧力が低く、外側の大気圧がパッドを上から押してワークに吸い付ける。内部から真空ポンプへつながる。
差圧で吸着する仕組み(吸着パッドの断面、模式)

例えばポンプやファンは内部の流体を追い出すことで真空状態を作り出し外部流体を引き込む装置です。

真空状態は粉体の搬送、ろ過、吸着などに利用されています。

例えばろ過はオリバーフィルター(別サイト)、吸着は吸着パッド(別サイト)が有名です。

断熱する

物質の持つ熱が伝わるのは、大気中の気体分子が熱を伝達(伝熱)しているためです。

真空により気体分子を除くことで熱伝導を極力減らせます。

魔法瓶はこの原理を活用しています。

二重壁の断面を2つ並べた図。空気がある壁の間は気体分子が高温側から低温側へ熱を運ぶ。真空の壁の間は分子が無く、熱が伝わりにくい。
壁の間の気体分子が熱を運ぶ(気体による伝熱だけの模式)

真空状態の作り方

プラントにおける機械的な真空の発生方法を紹介します。

真空ポンプ

真空ポンプは主となる真空の発生方法です。

エアコンの室外機の上に置かれた、圧力計を付けた小型の真空ポンプ
エアコンの室外機の上で使われている小型の真空ポンプ(写真:写真AC)

求める真空度によってポンプの動作方式を使い分けます。

低真空~中真空は比較的安価な油回転式の真空ポンプ(別サイト)がよく用いられます。

蒸気の発生量が多い場合には排気速度を上げることができるメカニカルブースターポンプ(別サイト)を併用します。

更に高い真空度を得たい場合は、油回転式ポンプを補助ポンプとして油拡散ポンプ(別サイト)やターボ分子ポンプ(別サイト)を併用します。

エジェクター

エジェクター(別サイト)は流体を高速噴射した際に周囲の流体を引き込む現象を利用した機器です。

真空ポンプと違い様々な流体を駆動源に用いる特徴があります。

エジェクターの断面図。左のノズルから駆動流体が高速で噴き出し、途中の吸引口から周囲の流体を引き込み、混合してディフューザから排出される。
エジェクターの原理(断面、模式)

有名な駆動流体として圧縮空気や水など、電源が使用できない箇所でも使える流体が挙げられます。

構造がシンプルなためメンテナンスが少なくて済むメリットがあります。

ただしコンプレッサーやポンプなどで流体を動かしてからエジェクターで真空を得るためエネルギー効率は低くなります。

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