真空状態の特徴と使いどころ

2022年2月27日

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プロセス産業においても真空ポンプを使った真空の活用は盛んです。

真空状態は沸点低下や酸化防止、差圧発生など大きな効果があります。

今回は真空の基礎から特徴まで解説します。



真空とは

真空とは大気圧より低い圧力を指し、減圧状態であるということを意味します。

生活している中でも大気から圧力、つまり大気圧を受けています。

その圧力は101.325kPaです。

真空の表記方法

圧力表示として大気圧を0として真空状態をマイナス表記する相対圧力(ゲージ圧力)の考え方もあります。

絶対圧力とゲージ圧力の考え方は以下の記事で解説しています。

真空の区分

真空にも真空度に応じて5つに区分分けがされています。

低真空、中真空、高真空、超高真空、極高真空の分け方は以下の通りです。

真空の区分イメージ

真空状態の作り方

大気圧は高度が高くなるほど小さくなります。

ただ工場において上空で何かを製造するのは現実的ではありませんので機械的に真空を作り出します。

真空ポンプ

有名な真空の実現方法です。

求める真空度によってポンプの種類を使い分けます。

低真空~中真空は比較的安価な油回転式の真空ポンプがよく用いられます。

蒸気の発生量が多い場合には排気速度を上げることができるメカニカルブースターポンプを併用します。

更に高い真空度を得たい場合は油回転式ポンプを補助ポンプとして油拡散ポンプターボ分子ポンプを併用します。

エジェクター

エジェクターは流体を高速噴射した際に周囲の流体を引き込む現象を利用した機器です。

真空ポンプと違い様々な流体を駆動源に用いることができる特徴があります。

有名な駆動流体として圧縮空気や水など電源が使用できない箇所で使える流体が挙げられます。

構造がシンプルなためメンテナンスが少なくて済むメリットがあります。

ただしコンプレッサーやポンプなどで流体を動かしてからエジェクターで真空を得るためエネルギー効率は低くなります。

真空状態の特徴

ここまで真空の意味と作り方を解説しました。

次は真空状態がプロセス製造工程においてどのような役割を果たすのかについてです。

沸点を下げられる

そもそも蒸発は大気圧よりも物体の蒸気の圧力(蒸気圧)が大きくなる温度で起こります。

つまり真空状態では、より低い温度で蒸発させることができます。

この原理を利用しているのが減圧蒸留です。

蒸気圧の詳しい考え方は以下の記事で解説しています。

酸化を抑えられる

物質の酸化現象は空気中の酸素が原因で起こります。

真空は系中の空気が少ない状態、つまり酸素が少ない状態なので参加を抑えることができます。

食品で有名な真空パックはこの理論に基づいています。

例えばタンク製造している際に酸化劣化を抑えたい場合は真空状態で製造することで対策できます。

差圧が利用できる

真空にすることで大気圧と圧力差(差圧)を生むことができます。

圧力の高いところから低いところへ力は移動するため、真空側に吸引する力がはたらきます。

例えばポンプやファンは内部の流体を追い出すことで真空状態を作り出し外部流体を引き込む装置です。

真空状態は粉体の搬送、ろ過、吸着などに利用されています。

例えばろ過はオリバーフィルター、吸着は吸着パッドが有名です。

まとめ

今回は真空状態の基礎から特徴まで解説しました。

ちなみに今回挙げた真空の特徴以外にも熱伝導が低下したりや放電が起きやすくなったりします。

また油回転式真空ポンプを使用すれば比較的簡単に真空状態を作り出すことができます。

省エネや品質向上の面で少しでも参考になれば幸いです。

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