誰かに話したくなる無線給電技術

2021年6月1日

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無線給電の背景

まずは無線給電技術が開発される背景を紹介します。

センサー量の増加

IoT社会ではセンサー量が爆発的に増加していきます。

今後、世の中のセンサー端末は1兆個に上ると言われています。

そこで問題になるのがセンサーの電源確保と電池交換コストです。

断線の問題

有線による給電は供給が安定するものの、断線のリスクが付きまといます。

外部からの物理的なダメージや経年劣化を避けるために無線給電が求められます。

空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム

国内においては空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムという名称で広がっています。

2022年5月26日には「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システム」の技術基準等を規定した、電波法施行規則等の一部を改正する省令が施行されました。

これにより920MHz、2.4GHz、5.7GHzの3つの周波数帯での利用が認められています。

LANケーブルによる給電

参考に、有線LANにはPoE(Power over Ethernet )という給電技術があります。

PoEは、LANケーブルを通じてデバイスに電力とデータの両方を送る技術です。

これにより、ネットワークカメラ、電話、Wi-Fiアクセスポイントなどのデバイスを一つのケーブルで接続でき、別途電源を必要としません。

無線給電の事例

ここから無線による給電事例を紹介します。

東北大学のWi-Fiによる発電研究

2021年5月19日、東北大学によるWi-Fi発電に関する研究結果が発表されました。

まだLED点灯と小さな成果ではありますが、Wi-Fiでの発電に成功しています。

既設のWi-Fiは、電波の飛んだ先にスマートフォンなど受信端末が無い場合、電波が捨てられることに注目してWi-Fiによる発電が考えられました。

今回使用された素子は不揮発性メモリにも採用されており、大量製造技術が確立しているため量産化しやすい点も注目されます。

研究の詳細に関してはNature Communications(DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-021-23181-1 )にまとめられています。

東芝がマイクロ波遠隔給電システムを開発

東芝は世界で初めてWi-Fiと共存するマイクロ波遠隔給電システムを開発しました。

Wi-Fiでの給電には課題が多いことから別の無線給電方法を設ける案が考えられますが、Wi-Fiとの干渉が懸念されます。

開発されたシステムは近隣のWi-Fi信号との干渉を検出し、干渉を避けながらセンサーに対し効率的に電力を送信します。

法整備の動向も踏まえながら2025年以降の事業化が進められます。

一歩先を行くCotaによる給電技術

「Cota」は、Ossia社の開発した空間伝送型ワイヤレス電力伝送技術で、特定の空間内の複数デバイスへ安全に電力を供給することができます。

更に給電だけでなく情報通信も可能です。

他が実証実験を進めるなか、同製品は実用化にまで進んでいます。

非接触で給電と通信が可能「NearFiカプラ」

フェニックス・コンタクトは「NearFiカプラ」という、非接触でEthernet通信と給電が可能な製品を発売しました。

NearFiカプラは、非接触型で電力とイーサネットデータを数センチの間隔で伝送する新しい技術です。

位置関係が多少ズレていても問題なく、間に木やガラスが挟まっていても使用できます。

例えばロボットハンドの交換はコネクタピンの損傷が懸念されますが、NearFiカプラを使用することで非接触伝送により汚れや損傷のリスクを減らすことができます。

オススメ書籍

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コンピュータの部品やソフトウェアの仕組み、ネットワークなど現在のデジタル要素の基本となる技術をビジュアルで分かりやすく解説されています。
新たな技術を理解するには基本を押さえておくことが重要です。

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・図解入門ビジネス工場・プラントのサイバー攻撃への対策と課題がよ~くわかる本

制御システムの基本構成に始まり、セキュリティの基礎を理解することができます。
今後はプラントも外部と繋がっていく時代になるためセキュリティ上のリスクを理解するのに最適です。

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