電気制御

DCS制御の未来!オープンプロセス制御規格O-PAS

プラントを始めとした大規模設備では一般的に制御システムとしてDCSを使用しています。

DCSは安定稼働が実現できる反面、各社の独自色が強く初期費用・維持費用ともに高額となるデメリットがあります。

この問題を解決するために現在、新たなプロセス制御システムを作り上げる取り組みが行われています。

それがO-PASです。

今回はそのO-PASについて基礎から解説します。

事前に読んでおきたいDCSの基礎

本件は2026年プロジェクト完了を目標とした開発段階の内容であるため変化が常に起こりえます。
気が付いたタイミングで都度更新しますがあらかじめご了承願います。

詳しい解説は目次から項目をクリックしてご確認ください。

O-PASとは?

そもそもO-PASという言葉自体を聞いたことが無い方も多いと思います。

まずはO-PASの基本情報について解説します。

正式名称

O-PASはOpen Process Automation Standardの略であり、プロセス制御の標準規格を表します。

オープン(Open)と記載がある通り、この規格のおかげで制御システムが1社完結ではなく複数社の製品を使用して構成できるようになります。

背景

1970年ごろから現在のプロセス制御システムの原型が完成し、それがDCSとして広く普及しています。

ただし時代の経過と共に運用コスト・相互通信・セキュリティを始めとした問題点が浮き彫りになってきました。

これら問題は各社の閉鎖的・独占的な構造が原因であると考え、エクソンモービルが働きかけ多くの企業が動き出しました。

目標

オープン性、相互運用性、高セキュリティ性を備えたプロセスオートメーションシステムの構築を目標としています。

各種製品はO-PAS認証を受けて登録することで適合性を保証することが出来ます。

認証を受けた製品を使用すればメーカーに依存しないため、プロセス制御システムに関するエコシステムを形成出来ると考えられています。

参加企業

この取り組みを推進しているのはオープンプロセスオートメーションフォーラム(OPAF)という業界標準の開発組織です。

そもそもOPAFは次世代ITの標準化推進を行う非営利組織 ”The Open Group” の技術部会(フォーラム)です(オープン・グループ・ジャパン HP)

OPAF会員には石油、化学、製紙、製薬、鉱業など各種業界のサプライヤー、システムインテクレーター、エンドユーザーが所属しています。

O-PASに関わる企業や組織の一例

  • 化学:ダウ、シェル、デュポン、イーストマンケミカル、BASF
  • 制御:シーメンス、横河電機、ABB
  • IT:インテル、IBM、シスコ
  • 団体:PLC open、OPC Foundation、ISA、NAMUR、DMTF Redfish

O-PASの機能的特徴

次はO-PASの具体的な機能について解説します。

システム構成イメージ

O-PASのシステム構成を解説する前に、いくつか重要な要素を紹介します。

相互運用性を向上させるためには重要な要素です。

押さえておきたい要素

  1. OCF(O-PAS Connectivity Framework)
    O-PAS対応機器を自在に繋ぐためのネットワーク
  2. DCN(Distributed Control Node)
    各グループごとに分散配置された制御演算モジュール
    他のDCNへの通信や現場機器との中継も行う
  3. ACP(Advanced Computing Platform)
    O-PAS環境へ接続可能なハードウェアに依存しないコンピュータ環境
    様々なアプリケーションが利用できる
  4. OCI(O-PAS Communication Interface)
    O-PAS非対応機器を直接O-PAS環境へ接続するためのアプリケーション

これらを踏まえたうえで、以下のシステム構成イメージを紹介します。

基本的にはOPC UAプロトコルに基づいて通信が行われています。

またO-PAS対応機器は勿論、非対応機器やクラウドシステムにも連携できるように考えられています。

O-PASシステム構成イメージ

参考規格

今回の取り組みはゼロから新しい規格を作るというものではありません。

5つの団体(OPC Foundation、DMTF Redfish、ISA、ISO、ANSI)の規格を参考に相互連携できるような構成を目指しています。

各種標準規格を基にしていることから”standard of standards”つまり「標準の標準」と表現もされています。

セキュリティ

O-PASのセキュリティは産業オートメーションと制御システム向けのサイバーセキュリティ国際標準であるISA/IEC 62443に基づいています。

統一したセキュリティ規格を定めることで相互運用性を維持したまま安定したセキュリティレベルを担保することが出来ます。

この参照規格では4つのセキュリティレベルが定義されています。

運用する設備の目的に合わせたセキュリティレベルの機器を選定するような利用方法となります。

セキュリティレベル攻撃の意思技術的な対策範囲
レベル1偶発的な事象偶然起きるセキュリティ違反からの保護
レベル2低い動機による攻撃意図通常のウイルスなど単純かつ一般的な攻撃からの保護
レベル3中程度の動機による攻撃意図明らかとなっているシステムの脆弱性を狙った巧妙な手口による攻撃からの保護
レベル4高い動機による攻撃意図明らかとなっていないシステムの脆弱性を狙った巧妙かつ非常に悪質な攻撃からの保護
4つのセキュリティレベルと概要

O-PASバージョン

各テーマ関して取り組むことにより次々とO-PASのバージョンアップが行われました。

バージョンテーマ
バージョン1.0相互運用性
バージョン2.0基本構成の移植性
バージョン3.0アプリケーションの移植性
O-PASのバージョンと取り組まれる各テーマ

特にバージョン2.1ではファンクションブロック構成の移植性について取り組まれました。

プログラムの中でも頻繁に使用する演算処理などは1つの関数としてまとめられています。

それをファンクションブロック(FB)と呼びます。

O-PASにおいてFBは分散制御システムの標準規格であるIEC 61499を基に設計されています。

例えば運用していくにあたり他社機器へ変更したいとなった場合、FBプログラムを簡単に他社製品へ移管できるようになっています。

進捗状況

ここまではO-PASの概要について解説してきました。

それらを踏まえ、これまでの取り組みとこれからの取り組みについて紹介します。

概念実証 PoC(2016~2018年)

エクソンモービルは、ロッキード・マーティンをシステムインテグレータとして概念実証を行いました。

用いたモデルは燃焼プロセスです。

この段階では相互運用性、機能の移植性に関する基本的事項に関して実現可能性を検討しました。

プロトタイプ製作(2018~2020年)

概念実証の結果を経て、パイロットプラント規模のプロトタイプを製作しての実証試験を行いました。

この段階で技術的に実現可能であるか詳細に検討されます。

検証モデルとして用いられたのは炭化水素蒸留物の触媒脱硫工程です。

その際なんと10社から提供されたシステム要素を組み合わせて構築しました。

現在-テストベッド(2019~2021年)

現在は実際の運用環境に近い状態で技術の検証を行っています。

これを行うための環境をテストベッドと呼びます。

テストベッドによる検証は2020年2月ごろからアメリカのテキサス州にて行われています。

なんと横河電機がテストベッド構築のためのシステムインテグレータとして抜擢されています(プレスリリース)。

テストベッドの設備イメージはCONTLOL ENGINEERINGの記事にて見ることが出来ます。

フィールドテスト(2021~2023年)

テストベッドに引き続き横河電機はフィールドテストにおいてもシステムインテグレータとして抜擢されています(プレスリリース)。

2023年に米国メキシコ湾岸のエクソンモービルのプラントでテストが行われる予定です。

入出力モジュールは2000点以上とのことです。

商業展開(2025~2026年)

テストベッド、フィールドテストが完了すると商業展開に移ります。

2025~2026ごろの商業展開を予定されています。

参考資料

  1. Open Process Automation™ Standard (O-PAS) - Overview
  2. O-PAS™ Standard 2.1 Overview & Benefits - David Fort
  3. O-PAS™ Standard in Action: Member Company Test Beds - David Debari & Mohan Kalyanaraman
  4. O-PAS™ Standard v 2.1 Enables Sustainability and Manufacturing Efficiency - Anath Anthony
  5. ISASecure Web Conference
  6. The Open Process Automation Standard takes flight

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