ポンプに重要なメカニカルシールの基礎知識

機械/ポンプポンプの2本目(全2本)公開更新広告

メカニカルシールは、ポンプや撹拌機などの回転機器で使用される重要な機械要素の一つです。

この記事の内容
  1. メカニカルシールとは
  2. ドライメカニカルシール
  3. シールレスポンプ
  4. 関連記事

メカニカルシールとは

メカニカルシールの基本的な情報について解説します。

メカニカルシールとは、ポンプや撹拌機などの回転機器で使用される重要な機械要素の一つです。その主な役割は、回転軸とケーシングの間の隙間を密閉し、液体の漏れや空気の侵入を防ぐことです。

業界では、メカニカルシールを略して”メカ”や”メカシ”と呼ぶこともあります。これらの略称は、現場での日常的なコミュニケーションで使用されることがあります。

かねまる@化学プラント技術者@chem_fac

メカニカルシールの呼び方

  1. メカ24.1%
  2. メカシ38.0%
  3. メカニカルシール30.6%
  4. 他7.4%

2023年2月25日の投稿(別サイト)・108票・最終結果

軸封装置

メカニカルシールは軸封装置と呼ばれ、軸貫通部の隙間を埋める役割があります。

例えば回転機器の軸貫通部からの液体漏れや空気の吸い込み、異物混入を防ぎます。ただし漏れを最小限に抑える役割であり、漏れを完全に防ぐものではありません。

ポンプの断面。羽根車の軸がケーシングの壁の穴を通ってモーターにつながり、軸と穴の隙間から液が外へ漏れ出す様子
軸とケーシングの隙間が漏れの出口になる(隙間は大きく誇張)

ポンプの羽を回転させるためにモーターの動力が必要になります。

一方で動力を伝える軸はケーシングを貫通しなければいけなく貫通部の僅かな隙間から漏れが発生してしまいます。

軸とケーシングを極限まで精密に作れば隙間を無くせるかもしれませんが、それでは非常に高コストです。そのため隙間部分を塞ぐ部品(つまりメカニカルシール)のみを精密に作って塞ぐ方式がとられるようになりました。

メカニカルシールは、回転軸と固定部の間に設置され、流体の漏れを防ぐ重要な役割を果たします。特に、高圧や高温の環境下で使用されるポンプやコンプレッサーなどの回転機器において、その性能が重要視されます。

グランドパッキンとの違い

グランドパッキンは繊維を編み込んだひも状のパッキンです。軸周りにグランドパッキンを詰めてボルトで押さえこむことでシールします。

グランドパッキンは軸の摩耗と共に増し締めが必要になります。また、摩擦が大きく、軸の摩耗も進行しやすいという欠点があります。

対してメカニカルシールは、摩耗分に対してスプリングで追従することができるため、安定したシール性能を維持できます。メカニカルシールは、グランドパッキンと比較して初期費用は高くなりますが、長期的には保守費用が少なく済むため、ランニングコストの面で優れています。

同じ縮尺で並べた軸封の断面。上はパッキンをグランドとボルトで押さえるグランドパッキン、下は回転環と固定環をスプリングで押し付けるメカニカルシール
グランドパッキン(上)は増し締め、メカニカルシール(下)はスプリングが追従する

さらに、メカニカルシールは高速回転や高圧条件下でも優れたシール性能を発揮し、漏れを最小限に抑えることができます。これらの特徴により、多くの産業分野でメカニカルシールがグランドパッキンに代わって採用されるようになりました。

項目 メカニカルシール グランドパッキン
初期費用 高価 安価
維持費用 安価 高価
構造 複雑で精密な構造 簡易な構造
スラリー液 対応(外部フラッシングなどが必要) 対応(外部フラッシングが必要)
漏れ量 少ない 多い
交換頻度 数年に1回 1年に数回
軸の摩擦抵抗 小さい 大きい
摩擦による動力損失 小さい 大きい
交換時機器分解 必要 不要
メカニカルシールとグランドパッキンの違い

回転環と固定環

メカニカルシールは、回転環と固定環という2つの主要な構成要素から成り立っています。これらの部品は、シールの機能を果たす上で重要な役割を担っています。

回転環はシャフトに固定され、固定環と接触しながら回転します。固定環はその名の通りケーシング側に固定されたまま回転しません。両者の接触面、つまり摺動面は非常に平滑に加工されており、高度な精密加工技術が用いられています。

メカニカルシールの軸の半断面。軸に固定された回転環とスプリング、ケーシング側に固定され回り止めピンで止まる固定環、二つの環の間のしゅう動面、各環の二次シールを示す
メカニカルシールの断面(軸の上半分)。緑のしゅう動面で液を止める

興味深いのは、回転環と固定環の間にはミクロン単位の微小な隙間が設けられていることです。この隙間は、メカニカルシールの性能を最適化する上で重要な役割を果たしています(固定環の共回りは、回り止めのピンなどで防ぎます)。

この微小隙間により、低摩擦と高いシール性能が両立されています。さらに、この隙間には液体が入り込み、摺動面の潤滑剤としても機能します。これにより、摩擦による摩耗を最小限に抑えつつ、効果的なシールを実現しています。

回転環と固定環のしゅう動面の拡大図。スプリングで押し付けられた二つの環の間にミクロン単位の液膜があり、液側から入る液を抑え、大気側へは蒸気の形で少し漏れる
しゅう動面の拡大。液膜が潤滑と密封を兼ね、蒸気としての漏れは残る

しかし、回転環と固定環の隙間では摩擦熱が発生し、液体の蒸発が起こります。そのため、蒸気の形での多少の漏れは避けられません。これは、メカニカルシールの特性として認識しておく必要があります。

メカニカルシールの設計においては、この微妙なバランスを保つことが重要です。シール性能を維持しつつ、摩擦や摩耗を最小限に抑えることに技術力が求められています。

ドライメカニカルシール

液体用のメカニカルシールとは異なり、気体用のメカニカルシールは摺動面の潤滑剤がないため、ドライメカニカルシールと呼ばれます。このタイプのメカニカルシールは、特殊な設計が施されています。

一般的に、回転環には溝が刻まれており、この溝と固定環との間に圧力差を生じさせる(ポンピング作用)ように設計されています。この設計により、摺動面の間の圧力が高まって両面がわずかに離れ、接触しないまま外部への漏れを少なく抑えることが可能となります。

ドライメカニカルシールのしゅう動面を、起動・停止時と回転中で並べた図。停止時は面が接触し、回転中は回転環の溝がガスを送り込み圧力が高まって面がわずかに離れる
ドライメカニカルシール。回転が遅いと面が浮かず接触する

ドライメカニカルシールの特徴として、以下の点が挙げられます。

  1. 摺動面の潤滑剤がない
  2. 回転環に特殊な溝加工
  3. ポンピング作用による圧力差の利用
  4. 外部への漏れ防止機能

しかしながら、液体と違って流体を摺動面の潤滑剤として利用できないという特性上、回転が遅く摺動面が浮き上がらない起動・停止のときなどに、面が接触して傷みやすくなります。そのため、ドライメカニカルシールの使用には、回転速度や運転条件に関して慎重な検討が必要となります。

メカニカルシールの選定において、液体用か気体用かを正確に判断することが重要です。適切なタイプのメカニカルシールを選ぶことで、効果的なシール性能を確保し、機器の安全性と効率性を高めることができます。

シールレスポンプ

ポンプの世界には、メカニカルシールやグランドパッキンのような軸封装置を必要としない種類が存在します。

これらは「シールレスポンプ」と呼ばれ、独自の設計によって軸貫通部の隙間を埋める必要性を排除しています。

代表的なシールレスポンプには、マグネットポンプとキャンドモーターポンプがあります。

マグネットポンプ

シールレスポンプの代表格として、まず挙げられるのがマグネットポンプです。

モーターの動力をケーシング内へ伝えるために磁力を用いています。

モーターに直結した外側マグネットが回転し、それに合わせてケーシング内の内側マグネットも回転させることでケーシング内外の軸を切り離すことに成功しました。

マグネットポンプの断面。モーターにつながる外側マグネットがケーシングの外で回り、ケーシング内の内側マグネットと羽根車の軸を磁力で回す。軸はケーシングを貫通しない
マグネットポンプ。外側と内側のマグネットで軸の内外を切り離す

ただし、マグネットポンプにも制限はあります。

磁力による動力伝達の特性上、大容量や高圧力の用途には不向きな面があります。また、磁性体の粒子を含む液体の移送には適していません。

キャンドモーターポンプ

キャンドは缶詰などを意味する”canned”が由来です。つまりモーターがポンプケーシング内に収められたポンプです。そのため軸をケーシングに貫通させる必要が無く、シールも必要がなくなりました。

接液部の軸にはモーターの回転子、回転子と仕切られた部屋にはモーターの固定子が設けられています。

固定子に三相交流電源を接続することで磁界が回転、中の回転子も一緒に回転するようになります(モーターの原理)。

キャンドモーターポンプの断面。羽根車の軸にモーターの回転子がつき液に浸かる。回転子とは仕切られた部屋にモーターの固定子があり、軸はケーシングを貫通しない
キャンドモーターポンプ。回転子はケーシング内、固定子は仕切りの外

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