【新人向け】機械要素の基本的な分類

2021年9月10日 広告

プラントの方が知っておきたい機械要素をまとめました。

自動車などに使われるような機械要素も含めて網羅していないことにご注意ください。

締結要素

締結要素は部品同士を結合するための機械要素です。

ねじが有名です。

ねじ

ボルト・ナットのイメージ
フランジ締結のイメージ

軸の外側にらせん状の溝がある「おねじ」を穴の内側にらせん状の溝がある「めねじ」に回し入れることで材料同士を締め付け固定します。

特にプラントで目にするのは、配管のフランジ締結やねじ込みです。

ボルトとナットを組み合わせて挟み込むようにして使用します。

比較的簡便な工具を用いて高い締結力が得られ、なおかつ取り外しも容易であることが特徴です。

ねじは締結だけでなく、ボールねじやウォームギヤの様に動力を伝達・変換する要素にも使用されます。

特にねじを用いた動力伝達機構はグローブバルブの開閉機構に用いられています。

ピン

部品同士の固定や位置合わせに用いられる棒状の機械要素です。

穴の開いた材料に差し込んで使用します。

リベット

板状の部品同士を永久固定するのに用いられます。

ねじ穴の無いボルトのような部品を穴に差し込み、頭が付いていない方を潰す(塑性変形)ことで両側から完全に固定してしまいます。

このような固定作業をかしめと呼びます。

リベットの締結動画もありますので動作の参考にしてみてください。

壊さない限り締結を外すことができないため使用には注意が必要です。

軸系要素

一般的に回転により動力を伝える機械要素を軸と呼びます。

動力源として有名なのがモーターですが、そのモーター動力は軸を介して伝わります。

軸に関する機械要素も数多くありますので1項目に分けて確認します。

また軸自体も機械要素の一つであり、曲げやねじりなどへの耐久性が求められます。

軸継手(カップリング)

ポンプのカップリング(黄色部分)

軸同士を結合して回転動力を伝達するために使用されます。

目的は大きく2種類あり、直結して軸を延長することと軸中心のずれを吸収することです。

身近な例としてポンプのモーターとハウジングを繋ぐときによく見かけます。

動力の大きな撹拌機などではチェーンカップリングが用いられます。

軸受(ベアリング)

ボールベアリング(左)とローラーベアリング(右)

回転軸を支える際に可能な限り回転力を損なうことなく支持するための機械要素です。

軸に固定して供回りする内輪と回転せずに別の部品と接触支持する外輪で構成されています。

内輪と外輪の間には保持器と呼ばれるボールやローラーが入っており、摩擦損失を極力抑えた状態で内輪と外輪の機能を独立させることができます。

ポンプや撹拌機、ブロワ、コンプレッサなど回転機器には必ずと言って良いほど使われています。

そして軸受けが機器の故障の原因にもなりやすく、最近では機械学習を用いた故障予知の取り組みも盛んです。

キー

キーを取り付けたモーターのイメージ
キー部分拡大

キーは棒状の金属ブロックで歯車やプーリー、スプロケットなどを軸に固定する役割があります。

軸にはキーをはめ込むためのキー溝を設け、対して歯車などの部品にはキーと軸両方が通るような軸貫通穴を開けておきます。

軸にキーをはめ込んだ後に歯車などを通すことで、軸が回転するとキーを介して歯車などが供回りするようになります。

例えば撹拌軸に撹拌翼を取り付ける場合には、キーを用いて動力伝達する場合があります(溶接やボルト締結の場合もあり)。

止め輪(スナップリング)

スナップリング
取り付けイメージ

軸に通した軸受や歯車などが動かないように簡易的に固定できます。

使用する際には止め輪をはめ込むための軸に溝を設ける必要があります。

ただし止め輪では完全に固定することが難しく、軸方向の荷重が少ない場合のみに適用されます。

動力伝達要素

ある部品からある部品へ動力を伝えていく機械要素です。

そのまま動力を伝えるものや変化を与えて伝えるものなど様々あります。

歯車

平歯車
傘歯車

動力側の歯車を別の歯車に噛み合わせて回転させることで動力伝達します。

相互の歯数が異なる歯車を組み合わせることで伝達先の回転速度を増減させることができます

この原理はモーターの減速機に用いられています。

また、傘歯車やウォームギヤなどを用いることで回転角度を変えながら動力伝達ができます

ラックピニオンという回転運動を直線運動に変換できる歯車もあります。

その他にも、ギヤポンプやオーバル流量計などで用いられています。

ベルト、チェーン

チェーン
ベルト

ベルトやチェーンは巻き掛け伝導装置という分類になります。

動力を伝えたい部品同士が離れている場合、ベルトやチェーンを用いて間接的に動力伝達します。

ベルトの場合はプーリー、チェーンの場合はスプロケットと呼ばれる回転軸の動力を伝える部品と共に使用します。

ベルトやチェーンには、物を載せて運ぶコンベアとしての役割もあります。

ポンプや撹拌機など多くの場面で利用しているのを見かけます。

撹拌タンクを設置したときに天井が低い場合、モーターの位置を横にずらして逆さに配置し、チェーンで動力伝達することで機器設置高さを抑える利用法もあります。

カム

回転体に取り付ける部品形状を工夫することで伝達先の運動に周期性を与えます。

等速、等加速、偏心、往復など様々な種類の複雑運動の組み合わせが行えることが特徴です。

分かりやすく使われている場面は少ないですが、化学機械の中を見た時に意外と使われていることもある機構です。

リンク

2つの棒状部品をピンで接続することで動力伝達を行うことで変則的な動力伝達を行います。

人間の腕と関節に似た構造をしています。

複数のリンクを組み合わせることで複雑な動きを得ることができます。

分かりやすく使われている場面は少ないですが、化学機械の中を見た時に意外と使われていることもある機構です。

動作イメージにはリンク機構シミュレーターの利用オススメです!

動力制御要素

与えられた動力を蓄積したり緩衝したりする機械要素です。

バネ

ばね

外部からの力が加わることで衝撃を吸収したり力を蓄えたりすることができます。

例えば安全弁や減圧弁は動作原理にバネが用いられています。

ブレーキ

物体に与えられた運動エネルギーを摩擦エネルギーのような別のエネルギーに変換することで減速や停止を行います。

最も広く知られる摩擦ブレーキの他にも油圧、空気圧、電磁など様々なブレーキ機構が存在します。

例えば電磁ブレーキ付きモーターが利用機器として挙げられます。

ラチェット

爪の付いた歯車(ラチェット)と爪で構成されており、片方向のみ回転できる構造になっています。

片方向は爪がラチェットを舐める形でロックがかかりません。

対してもう片方向は爪がラチェットにかかるようになってロックされます。

この原理を利用したラチェットレンチという名前の工具も存在します。

密封要素

液体や気体など流体の漏れを防止したり内側に異物が入り込むのを防いだりする機械要素です。

シールとも呼びます。

ガスケット

ガスケット

ガスケットはフランジのような静止箇所のシールに使用されます。

特にプラントではフランジ締結時に使われます。

フランジ用ガスケットの詳細はこちら

パッキン

パッキンは撹拌器やシリンダーのような運動箇所のシールに使用されます。

撹拌機やポンプに用いられるグランドパッキンが代表的です。

その他グランドパッキンに代わるシール要素としてメカニカルシールが挙げられます。

シーロック加工

ねじ自体がシール性を向上させる役割を持っている場合もあります。

それをシーロック加工と呼び、ねじ部にアクリル樹脂やフッ素樹脂を融着加工して、ねじ自体に潤滑性やシール性を持たせるものです。

例えばエアーのチューブフィッティングなどを購入すると、シーロック加工が施されたもので納入されることも良くあります。

このためシールテープを巻かずに配管を接続できます。

プレコートボルトについて | スリーボンドグループ
プレコートボルトについて | スリーボンドグループ

www.threebond.co.jp

オススメ書籍

・改訂版 自主保全士公式テキスト

設備保全に関する体系的な知識が得られます。
公式テキストには充実した解説があり、試験を受けなくとも勉強すれば相当力が付きます。

改訂版 自主保全士公式テキスト 検定試験&オンライン試験対応
改訂版 自主保全士公式テキスト 検定試験&オンライン試験対応

www.amazon.co.jp

・一番最初に読む機械保全の本

機械保全について基礎の基礎が学べる書籍です。
写真やイラストが多いため初心者にオススメできます。

一番最初に読む機械保全の本
一番最初に読む機械保全の本

www.amazon.co.jp

・機械要素設計 (JSMEテキストシリーズ)

機械要素の特徴を理解し、どのように設計すべきか学べます。
機械を利用する側として、使い分け方を知っているだけで設計の幅が広がります。

機械要素設計 (JSMEテキストシリーズ)
機械要素設計 (JSMEテキストシリーズ)

www.amazon.co.jp

関連記事

潤滑の役割
メカニカルシールの解説
パッキンとガスケットの違い

記事への問い合わせはこちら

-機械
-

//