流体の圧縮性と非圧縮性

2023年1月9日 広告

圧縮性流体とは?

圧縮性流体は圧力変化に伴い体積および密度が変化する流体を指します。

圧縮性があるため弾性体であるとみなします。

何をもって圧縮性と考えるか?

世の中に完全なる非圧縮性流体は存在しません。

正確には"変化量が少ない"ことを意味します。

そのため基本的に液体は非圧縮性とみなします。

気体を非圧縮性流体とみなすかどうかは流速、正確には次で説明するマッハ数で判断します。

空気は約100m/s以下で非圧縮性とみなします。

マッハ数

非圧縮性かどうかは音速を基準に考えます。

流速と音速の比をとった無次元数をマッハ数と呼びます。

この値で非圧縮性流体として考慮できるか判断します。

マッハ数$$M_{a}=\frac{v}{a} $$Ma:マッハ数[-]、v:流速[m/s]、a:音速[m/s]

非圧縮性とみなす基準

一般に密度変化が5%以内に収まるマッハ数0.3以下であれば非圧縮性とみなします。

なお音速は物質や条件によって変わります。

空気中の音速は大気圧・20℃で340m/sと有名です。

音速を求める

圧縮性は体積弾性係数もしくは圧縮率で表します。

体積弾性係数が大きいほど体積変化しづらく、その逆数を圧縮率と呼びます。

圧力がΔp変化するに伴い体積や密度がΔVやΔρに変化した場合、以下で計算できます。

体積弾性係数と圧縮率$$K=\frac{1}{\beta}=\frac{\Delta p}{-\Delta V/V}=\frac{\Delta p}{\Delta \rho/\rho} $$K:体積弾性係数[Pa]、β:圧縮率[1/Pa]
Δp:圧力変化量[Pa]、ΔV:体積変化量[m3]、V:初期体積[m3
Δρ:密度変化量[kg/m3]、ρ:初期密度[kg/m3

音速は体積弾性係数と密度から求め、その値でマッハ数を算出します。

音速$$a=\sqrt{\frac{K}{\rho}} $$a:音速[m/s]、K:体積弾性係数[Pa]、ρ:密度[kg/m3

実務における圧縮性の考慮

圧縮性流体の基準は分かりましたが、どのように使うのでしょうか?

圧縮性流体の利用頻度は低い

基本的に液体は非圧縮性、気体も流速100m/s以下は非圧縮性です。

そのため実際のプラント設計で圧縮性を考慮に入れる場面は滅多にありません。

例えば配管内は圧力損失を考慮すると2m/s以下にすることが望ましいとされています。

流量が大きな真空配管でも2m/sになるよう、配管径を大きくして流速を下げます。

理想流体

非圧縮性であり粘性がない流体を理想流体と呼びます。

現実には存在しない流体ですが、近似して計算できる場面も多くあります。

理想流体とみなすことで計算式が簡易になり流れ計算が容易になります。

理想流体の詳しい解説はこちら

オススメ書籍

・明解入門 流体力学(第2版)

少し慣れてきて、流体の勉強を頑張りたいときにオススメです。
ページ数が少ないものの丁寧に解説されています。

明解入門 流体力学(第2版)
明解入門 流体力学(第2版)

www.amazon.co.jp

・化学工学ー解説と演習ー

化学工学を勉強したい!と思ったら真っ先にオススメしたい書籍です。
他の汎用化学工学書籍には無い「撹拌動力計算」や「撹拌伝熱計算」も記載されています。

化学工学―解説と演習ー
化学工学―解説と演習ー

www.amazon.co.jp

・化学プラント配管設計の基本

伝熱の種類、熱伝導の計算、熱交換器の種類について記載されています。
その他、化学工学の基本事項が解説された後、それらを踏まえて化学プラントにおける配管設計の基礎から詳細に解説される書籍です。
この1冊で配管設計を一通り勉強できます。

化学プラント配管設計の基本―配管技術者への道しるべ
化学プラント配管設計の基本―配管技術者への道しるべ

www.amazon.co.jp

関連記事

流体の質量保存則
ベルヌーイの定理とは?
圧力の表現方法
記事への問い合わせはこちら

-化学工学

//