触媒の役割
化学製品を工業化するにあたり触媒は重要な働きをします。
反応速度を上げる
触媒は反応速度を上げるために使われます。
化学反応を始めるには、最初に活性化エネルギーという大きなエネルギーを与えなければなりません。
触媒には活性化エネルギーを下げる役割があり、少ないエネルギーでも反応を開始させることができます。
それが反応速度の向上に繋がっています。
目的の反応のみを起こす
反応の多くは目的物以外の生成物(副生成物)も発生します。
触媒の形や電荷といった特徴を利用して反応の選択性を確保しています。
適切な触媒を選択することで反応収率を向上させて原料の消費を抑えられます。
また副生成物の後処理量が減少する効果もあります。
自身は変化しない
触媒自身は反応で消費されることはなく、あくまで反応を手助けしているに過ぎません。
そのため触媒量は反応物に比べて少量しか使いません。
ただし後述する劣化が起きるため、永久には使えません。
触媒の工業利用
ここからは工業的に触媒を使う場合の要素を解説します。
触媒反応の種類
触媒反応には均一反応と不均一反応の2種類があります。
触媒反応の種類 | 反応系 | 例 |
---|---|---|
均一触媒反応 | 同一相の反応 | 液体反応物+液体触媒 |
不均一触媒反応 | 別相同士の界面での反応 | 混ざらない液体 液体反応物+固体触媒 |
均一触媒は反応後に触媒を分離するのが難しく、多くは固体触媒で不均一反応が採用されます。
様々な形状
固体触媒にも粉末や球体、錠剤、リング、ハニカムなど様々な形状があります。
触媒サイズが小さいほど表面積が増えるため、触媒の作用を得られる面積が増加します。
ただし容器に隙間なく詰められるため、流体が通過する際に圧力損失が増大します。
反応装置
反応装置は大きくバッチ式と連続式に分けられ、以下のように使い分けます。
反応の種類 | 使いどころ |
---|---|
バッチ式 | 反応自体が遅い場合 反応を十分に進めることを重視する場合 |
連続式 | 安定した品質の製品を大量に得たい場合 |
更に連続式の場合には固定床型と流動床型の2種類の装置構造に分けられます。
連続式の種類 | 特徴 |
---|---|
固定床型 | 触媒を充填した装置に原料を流して反応 |
流動床型 | 粉粒体の触媒を原料と共に流しながら反応 |
劣化に注意
触媒は使い続けると被毒作用やシンタリング、機械的破壊によって性能が低下していきます。
触媒劣化の種類 | 現象 | 原因 |
---|---|---|
被毒作用 | 触媒効果の無い物質に変化 | 原料の不純物と触媒の反応 |
シンタリング | 表面積が減少 | 熱により触媒粒子同士が結合 |
機械的破壊 | 触媒が損傷 | 急な加熱冷却や衝撃、摩擦 |
プラントにおける触媒活用の例
参考として実際に工業用途で使われている触媒の事例を紹介します。
幅広い用途解説は触媒工業協会にて解説されています。
石油精製
石油精製において、蒸留した炭化水素に水素化処理を施すことで硫黄や窒素、金属などを取り除きます。
脱硫や脱窒素、脱金属、芳香族水素化などを促進するために触媒が使われます。
高分子重合
ポリエチレンやポリプロピレンの製造には、チーグラー・ナッタ触媒と呼ばれる化学を学んだ方には有名な触媒が使われています。
チーグラー・ナッタ触媒は低温低圧で重合反応を進めたり、ポリプロピレンにおいては立体規則性を高める役割があります。
油脂加工
油脂は動植物由来の油の一種で、常温で液体のものは油、固体のものは脂肪といいます。
油脂の脱臭や効果など、改質を目的として水素添加触媒が用いられます。
医薬品製造
医薬品は化学構造が複雑なものも多く、多種多様な触媒が使われています。
バッチ製造が基本であり、均一反応・不均一反応どちらも利用されます。
2010年ノーベル化学賞の対象となった鈴木・宮浦カップリングではパラジウム系触媒が使われています。
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