P&ID(配管計装図)の読み方

プラント設計・運転/図面・仕様書・規格図面・仕様書・規格の2本目(全2本)公開

P&ID(配管計装図)を読む順番と、図に無い情報を引く資料をまとめました。記号の意味は、同じコースの前の記事と計装用の文字記号に任せます。説明には、例として置いた架空の小さな系(タンク→ポンプ→熱交換器)を使います。

P&IDを読む順番(早見表)

順 読むもの P&IDで見るところ P&IDに無いことを引く資料
1 凡例と表題欄 記号と略号の意味、図番、改訂番号、改訂の印、注記(NOTE) 凡例図(レジェンドシート)
2 主な流れと機器 入口から出口までの太い線と矢印、続きの図番、機器番号と予備機 PFD、機器リスト、ユーティリティの系統図
3 配管 ライン番号 ラインリスト(運転と設計の温度・圧力、試験圧力、適用法規)
4 制御ループ 同じ番号の計器(測る→調節計→調節弁)、故障したときの弁の開閉 計器リスト(レンジ・正逆動作)、ループ図
5 警報とインターロック 警報の点、インターロックやトリップの入力と出力 因果表(条件の組み合わせ)、ロジック図(順番と復帰)
6 弁の常時開閉 閉の記号、NC・NO、LO・LC・CSO・CSC、調節弁の前後弁とバイパス弁 封印・施錠の台帳、運転手順書
7 安全弁と逃し先 設定圧、前後の弁の状態(CSOなど)、放出管の行き先 安全弁の計算書
8 ドレン・ベント・枝管 液抜き・ガス抜き・サンプリングの弁、枝分かれ 運転手順書

読む向きは流れに沿って上流から下流です。現場で弁を確かめるときの向きは逆になるので、最後の節で扱います。

この記事の内容
  1. 例として置いた系
  2. 凡例と表題欄を先に読む
  3. 主な流れと機器をたどる
  4. 制御ループはタグ番号でたどる
  5. 警報とインターロックは入力と出力を拾う
  6. 弁の常時開閉を確かめる
  7. 安全弁と逃し先を確かめる
  8. ドレン・ベント・サンプリングの弁を見落とさない
  9. P&IDを使う場面と図面の食い違い
  10. 参考資料

例として置いた系

原料タンクの液をポンプで送り、熱交換器で蒸気により温めて次の工程へ出す架空の系です。タグは、同じコースの前の記事の例に合わせました。

機器・計器 タグ(例) 役目(例)
原料タンク T-101 液面をLT-104で測り、LIA-104で表示する。液面が高すぎるときと低すぎるときに警報を出す
送液ポンプ P-101A、P-101B 1台を運転し、1台を予備にする
熱交換器 E-101 蒸気で液を温める
流量の制御 FT-101、FIC-101、FY-101、FV-101 熱交換器の出口側で流量を測り、同じ配管の調節弁で一定に保つ。FYは電気信号を空気圧に変える変換器
温度のトリップ TT-102、TZ-102 出口の液温が上限を超えたら、蒸気の遮断弁を閉じる
安全弁 PSV-105 熱交換器の液側の圧力が上がりすぎるのを防ぐ。逃し先はT-101

凡例と表題欄を先に読む

記号・略号・番号の付け方は、会社やプロジェクトで違います。最初に凡例図(レジェンドシート)で確かめます。表題欄で見るのは、図番と改訂番号です。改訂の印は、たとえば次のように読みます。

  • 最初の発行が改訂0で、直すたびに番号を1つ上げる
  • 直した箇所には、雲形の線か改訂番号を入れた三角などの印を付ける
  • 雲形が示すのは直前の改訂の変更だけ。三角などの印は前の改訂のものも残る

出典:米国エネルギー省の教材(参考資料8)の例

注記(NOTE)には、記号で表しきれない条件が書かれます。

主な流れと機器をたどる

全体の流れは、P&IDの元になったPFD(プロセスフロー図)で先につかみます。P&IDでは、原料の入口から製品の出口まで太い線と矢印をたどります。機器は、予備機も含めて流れの順に並べるのが基本です。図の端で切れる線には、続きの図番を書いた矢印形の印が付きます。蒸気・冷却水・窒素などの供給元を追うのは、別のユーティリティの系統図です。

配管は、ライン番号でラインリストを引くと運転と設計の温度・圧力が分かります。枝分かれした配管は見落としやすい所です。見落とした枝へ流体が流れる失敗は、ラインチェックでよく起こります。

制御ループはタグ番号でたどる

制御ループは、測る計器・調節計・調節弁の一回りです。保ちたい量を制御量、弁で動かす量を操作量と呼びます。FIC-101ならF(流量)・I(指示)・C(調節)で、文字の読み方は前の記事で扱いました。同じループの計器に同じ番号をそろえる付け方なら、番号でつながりをたどれます。例の系では、FT-101・FIC-101・FY-101・FV-101が1つのループです。ループを見つけたら、次の4つを確かめます。

  1. 何を測っているか。伝送器の位置と測る量(レンジはP&IDでなく計器リストで見る。mAとの換算は4-20mA信号換算(別サイト)で確かめられる)
  2. どの弁を動かすか。測る所と弁の位置の関係
  3. 空気や信号が切れたとき、弁が開くか閉じるか(FO・FCなどの略号)
  4. 調節弁の前後の手動弁(ブロック弁)とバイパス弁

測る所と弁の位置(よくある形)

制御 測る所 弁を置く所
圧力 塔・槽の気相 塔・槽の上から出るガスの配管
温度 温められる側の出口 加熱する側(蒸気など)。冷却なら冷やす側
流量 配管の流量計 同じ配管(例の系はE-101の出口側)
液面 塔・槽の液面 液を出す配管
カスケード 外側の量(例:塔・槽の液面) 内側の調節計(例:液抜きの流量)の設定値を動かし、その弁で調節する

出典:石井泰範『化学プラント配管設計の基本』p.173〜175の制御の型(例の系はこの記事で置いた例)

P&IDだけでは、測る量が増えたときの弁の向きや設定値までは読めないことが多いです。正動作・逆動作とレンジは計器リストに、信号の配線と端子はループ図に書かれる情報です。調節弁には空気が増えると閉じる形もあるので、出力の向きは弁の動きで確かめます。

調節弁の前後の手動弁は、運転中は全開にしておく弁です。バイパス弁が開いていると、調節弁を絞っても流れが残ります。

警報とインターロックは入力と出力を拾う

P&IDに描かれるのは、警報の点とインターロックやトリップのつながり(入力と出力)までです。条件の組み合わせは、因果表(C&Eマトリクス)で読みます。動く順番と止まった後の戻し方(復帰)は、ロジック図に書かれます。因果表は、原因と動作を縦横に並べた表です。

例の系では、TZ-102が入力で蒸気の遮断弁を閉じるのが出力です。温度が下がったら弁が自動で開くのか、人が戻すまで閉じたままなのかはP&IDでは分かりません。計装工事の試験では、ロジック図とP&IDの入出力点が一致するかを確かめます。片方にしか無い点は、図面の直し忘れを疑います。

誤操作を防ぐ始動の条件と、異常のときに止めるトリップは別のものです。始動の条件の例には、潤滑油の油圧が定格に達しない間は圧縮機を始動できないインターロックがあります。例の系のTZ-102は、温度の異常で蒸気を止めるトリップです。警報は異常の段階で働き、トリップや安全弁はその先の緊急の事態で働きます。

論理の置き場は、DCSやPLCやモーターの分電盤の回路などです(DCSの基礎知識)。入力の接点の種類は、a接点・b接点・c接点の違いと非常停止ボタンにb接点を使う理由で扱っています。

弁の常時開閉を確かめる

凡例に断りが無ければ、P&IDの弁は通常運転のときの開閉で描くのが基本です。ただし安全系は待機の状態で描き、三方弁は故障したときの位置で描く図面もあります。

弁の状態の表し方(例)

表し方の例 意味 主に使う所・読むときの注意
記号を黒く塗る 閉じておく弁 ドレン・ベント・バイパス弁など。開けると流れが変わる
記号を白抜きにする 開けておく弁 主な流れの弁、調節弁の前後の弁
記号の片側を塗る 途中まで開けて絞った弁 開度を変えると流れる量が変わる
NC・NO 常時閉・常時開(Normally Closed・Normally Open) 運転中の開閉を表す。電磁弁のNC・NOとは意味が違う
LO・LC 鍵で開・閉に固定した弁(Locked Open・Locked Closed) 動かすのは承認された手順か緊急のときだけ
CSO・CSC 封印(カーシール)で開・閉に保つ弁(Car Sealed Open・Car Sealed Closed) 封印を切らないと動かせない。動かすのは承認された手順か緊急のときだけ。安全弁の前後の弁など
FO・FC・FAI 空気や信号が切れたときに開く・閉じる・その位置で止まる 調節弁や遮断弁。故障したときの動きを読む
仕切り板 弁より確実に縁を切る板 原料の最上流など、弁の漏れが心配な所

出典:塗り方とLO・LC・FO・FC・FAIは参考資料8、CSO・CSCと動かす条件は参考資料10、仕切り板は参考資料2(NC・NOを含め凡例しだい)

電磁弁の原理と種類で扱ったNC・NOは、信号が切れたときに閉じるか開くかを表す言葉です。P&IDの弁の横のNC・NOは凡例で意味を確かめ、電磁弁の言葉と取り違えないようにします。

安全上重要な手動弁には、所定の位置でカーシールか開閉の札を付けるのがよくある形です。封印や施錠の対象をP&IDの印で決め、台帳もP&IDとそろえる管理の仕方があります。この場合、封印を足したり外したりするときは変更管理を通してP&IDを直します。

安全弁と逃し先を確かめる

安全弁で読むのは、設定圧・前後の弁の状態・放出管の行き先です。安全弁の設定条件も、P&IDに書かれる情報です。例の系なら、PSV-105の設定圧と前後の弁がCSOかを確かめます。高圧ガスの製造設備(定置式)では、安全弁や逃し弁に付けた止め弁を常に全開にしておきます。一般高圧ガス保安規則の決まりです(第6条第2項第1号イ)。修理や清掃で特に必要な場合だけが例外になります。法令の要求は、所轄の行政と最新の条文で確かめてください。

放出管の先は、大気・フレアの集合管・排液(スロップ)タンクなどです。同じ規則は、放出管の開口部をガスの性質に合った位置にするよう求めています(第6条第1項第20号)。

ドレン・ベント・サンプリングの弁を見落とさない

ドレン(液抜き)・ベント(ガス抜き)・サンプリングの弁も、P&IDに描かれる弁です。弁を操作する前には、ドレン弁とサンプル弁が閉じているかを確かめます。例の系でも、ポンプと熱交換器の液を抜く弁は閉の記号です。

P&IDを使う場面と図面の食い違い

P&IDは設計の途中で何度も直され、建設の後も改造のたびに変わります。手元の図面が、現場の最新の姿とは限りません。現場の配管がP&IDや手順書と合わなければ、作業を止めて確かめます。

場面 P&IDで確かめること
運転前のラインチェック 手動弁の開閉、調節弁の前後弁、仕切り板、計器の取り出し弁、ドレン・ベントの閉
計装のループ試験 制御ループとループ図の一致、ロジック図との入出力点の一致
HAZOP 配管1本や機器1つごとに、流量・圧力などのずれの原因と影響
設備の変更(変更管理) 変える範囲、影響する計器・インターロック・安全弁、直す図面
弁の操作 封印・施錠の印、現場の弁と図面の一致

出典:ラインチェック(参考資料2)・ループ試験(3)・HAZOP(7)・変更管理(10・12)・弁の操作(9)

運転前のラインチェックは、要所の弁を開ければ機器の間に流せる状態に整える作業です。確かめる順番は、P&IDを読む向きと逆に下流から上流へ進めます。温度や圧力の低い側から進めれば、操作を誤っても流体が流れ出しにくいためです。確かめたラインはP&IDに色を塗り、別の人がもう一度確かめます。

設備を変えたときは、P&IDの直しも変更の一部です。P&IDは、米国の規則(OSHA 29 CFR 1910.119)が定めるプロセス安全情報の1つです。変更で中身が変われば、更新しなければなりません。2011〜2014年に石油コンビナート等で起きた重大事故4件は、いずれも緊急停止・スタートアップ・保守などの非定常作業の最中でした。共通点の1つは、設備や運転方法を変えたときのリスクアセスメントの不足でした(2014年の関係省庁の報告書)。

参考資料

  1. 石井泰範『化学プラント配管設計の基本〜配管技術者への道しるべ〜』日本工業出版、2012年(p.173〜175、p.180、p.186〜188、p.193、p.196)
  2. 今西忠『プラント操作の基礎知識 改訂版』化学工業日報社、2005年(第9章 p.242〜247)
  3. 秋山尚『和英対訳 誰にでもわかるプラント計装工事のすすめ方』日本計装工業会、2003年(p.12、p.18、p.270〜272)
  4. 大野光之『配管技術ノート』工業調査会、2004年(p.53)
  5. 岡田旻『配管設計・施工Q&A』森北出版、2011年(p.92)
  6. 白石浩『化学プラントのプロセス設計-化学プラント工学入門-』分離技術会(分離技術シリーズ22)、2011年(p.22)
  7. 化学工学会編『改訂六版 化学工学便覧』丸善、1999年(24·2·1 p.1180、25·4·1 p.1234〜1236)
  8. U.S. Department of Energy「DOE Fundamentals Handbook: Engineering Symbology, Prints, and Drawings, Volume 1 of 2」DOE-HDBK-1016/1-93、1993年(Module 1 p.6〜7、Module 2 p.13〜16。2016年に廃止、energy.govのアーカイブ) https://www.energy.gov/sites/default/files/2026-04/DOE-HDBK-1016-93_VOL1.pdf
  9. CCPS「Process Safety Beacon:バルブ開閉の間違いは重大事故のもと」2021年5月(日本語版) https://www.aiche.org/sites/default/files/202105beaconjapanese.pdf
  10. ConocoPhillips Alaska「HSE Requirements: Carseals」2024年6月24日 https://static.conocophillips.com/files/resources/carseals.pdf
  11. 一般高圧ガス保安規則(昭和41年通商産業省令第53号)第6条第1項第20号、第6条第2項第1号イ(e-Gov法令検索)
  12. U.S. OSHA「29 CFR 1910.119 Process safety management of highly hazardous chemicals」(d)(3)(i)、(l) https://www.osha.gov/laws-regs/regulations/standardnumber/1910/1910.119
  13. 内閣官房・総務省消防庁・厚生労働省・経済産業省「石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議報告書」2014年5月(厚生労働省 基発0516第3号の別添1) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000088826.pdf
  14. IEC 62881:2018「Cause and effect matrix」(IECの公開の要旨) https://webstore.iec.ch/publication/33097
  15. JIS Z 8204:1983「計装用記号」(2024年確認)
  16. ANSI/ISA-5.1-2024「Instrumentation and Control – Symbols and Identification」

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