P&ID(配管計装図)は、機器・配管・弁・計器のつながりと番号を描いた系統図です。記号の形は会社やプロジェクトごとに凡例で決めるので、同じものでも描き方が違うことがあります。よく見る形の例とタグ番号・ライン番号の組み立てを、凡例を読む前の見当としてまとめました。
P&IDでよく見る記号の早見表(形は一例で、意味の正は図面の凡例)
| 記号の形 | 意味 | 注意・別の描き方 |
|---|---|---|
| 実線と流れの向きの矢印 | 主な流れの配管(主配管) | 線の形では中身を示さず、ライン番号の流体記号で示す |
| 実線に斜線やLの字を並べた線 | 空気・不活性ガス・油圧などの補助の配管 | DOE教材では空気の配管と空気圧信号が同じ印(//) |
| 破線 | 計器の電気信号 | 国内の例図では、かぎ形の小さな印を付けた実線 |
| 斜めの2本線(//)を並べた線 | 空気圧信号 | 国内の例図では、山形の印(∧)を付けた実線 |
| 2つの三角を頂点で突き合わせた形 | 弁の本体。操作器の印が無ければ手動の弁。DOE教材では黒丸なしがゲート弁、中央に黒丸がグローブ弁 | グローブ弁も黒丸なしで描く図面が多い。三角を黒く塗った形は閉じている弁 |
| 2本の縦線の間に丸、または斜線 | ボール弁(丸)、バタフライ弁(斜線) | バタフライ弁は三角の形に斜線を足す描き方もある |
| 折れ線と流れの向きの矢印 | 逆止弁 | 折れ線の端に黒丸を付ける描き方もある |
| 下から入り横へ出る直角の弁に、ばねの印 | 安全弁・逃し弁 | 破裂板は別の記号で描く |
| 弁の上に半円 | ダイヤフラム式の操作器が付いた弁(調節弁など) | ダイヤフラム弁(弁の種類)の別案は弁に弧を重ねた形で、この印と紛らわしい |
| 弁の上にMやSと書いた四角 | 電動弁(M)、電磁弁(S) | 小さな電磁弁で大きな弁の空気を切り替える描き方もある |
| 丸だけ | 現場に付く計器 | 伝送器(FT)や変換器(FY)など |
| 丸の中に横の実線、または破線 | 計器盤の表(実線)、盤の裏(破線)に付く計器 | 教科書の図では、文字と番号を分ける線として描く例もある |
形と意味の例は、米国エネルギー省(DOE)の教材 DOE-HDBK-1016/1-93(1993年)から取りました。国内の例図は、秋山尚『誰にでもわかるプラント計装工事のすすめ方』の図1.2.2と図1.2.6です。区切り線の例は、多田豊編『化学工学-解説と演習-』の図11·1にあります。
PFDとP&IDの違い
PFD(プロセスフロー図)は、物質収支と熱収支で決めた主な機器と流れを示す図です。P&IDはPFDをもとに、運転・計測制御・安全・保守まで考えて描き起こします。描くのは、すべての機器・配管・配管付属品・計器です。
| 項目 | PFD(プロセスフロー図) | P&ID(配管計装図) |
|---|---|---|
| 描く機器 | 主な機器 | 予備機を含むすべての機器 |
| 書く数値 | 主な流れの流量・組成・温度・圧力、熱交換器の熱量 | 配管の口径・材質・肉厚、機器の寸法と設計条件、安全弁の設定 |
| 弁と計器 | 安定運転に要る主な制御 | すべての配管付属品と計器、インターロック、緊急停止 |
| 作る順と使う人 | プロセス設計で先に作る | PFDのあとに作り、設計・施工・運転の共通の資料になる |
| 別の呼び名 | プロセスフローシート | EFD(エンジニアリングフローダイアグラム)、P&Iダイアグラム、配管計装系統図、作業系統図 |
| 出典 | 白石 p.21 | 白石 p.22、石井 p.186〜187、大野 p.53、化学工学便覧 p.1149 |
P&IDは名前のとおり、配管と計装の設計者が中心になって作る図面です。原案は配管設計者が作ることが多い、と石井の本にあります。発注者(エンドユーザー)の意向は打ち合わせで確かめます。ユーティリティ(蒸気・冷却水・空気など)は、プロセスのP&IDと分けて描くのが一般的です(大野)。ユーティリティヘッダーダイアグラム(UHD)、ユーティリティP&IDとも呼びます。
計器のタグ番号は文字記号とループ番号でできている
計器の丸の中には、文字記号とループ番号を書きます。JIS Z 8204(計装用記号)は、ループという言葉を定めています。変量を表示・記録・制御するためにつながった計器の系統のことです。そのループを区別する番号がループ番号です。
文字記号の1文字目は変量で、その後に機能の文字が続きます。差(D)のように、変量の意味を補う文字が間に入ることもあります。同じ文字でも位置で意味が変わり、Tは1文字目なら温度、後ろなら伝送です。文字の一覧と、機能の文字を並べる順(I・R・C・T・Q・S・Z・A)は計装用の文字記号にまとめています。
例として置いた3つのループのタグ
| タグの例 | 文字の意味 | 計器 |
|---|---|---|
| FT-101 | F 流量、T 伝送 | 流量の伝送器 |
| FIC-101 | F 流量、I 指示、C 調節 | 流量の指示調節計 |
| FY-101 | F 流量、Y 演算器・変換器 | 調節計の電気信号を空気圧に変える変換器など |
| FV-101 | F 流量、V バルブなどの調節部 | 流量の調節弁。DOE教材の書き方ではFCV |
| TT-102 | T 温度、T 伝送 | 温度の伝送器 |
| TZ-102 | T 温度、Z 安全・緊急 | 温度で働く安全・緊急用の機器 |
| PDI-103 | P 圧力、D 差、I 指示 | 差圧の指示計 |
文字の意味は、上の記事の表(JIS Z 8204:1983 の表1をもとにしたもの)に合わせました。FT・FIC・FY と TT・TZ の組み合わせは秋山の図1.2.2にならい、番号はこの記事で置いています。
同じループの計器は同じ番号を持ちます。番号の付け方を決めるのは、プロジェクトごとの符番要領です。
ライン番号の組み立て
配管の線に沿って書く番号がライン番号です。並び方と記号はプロジェクトで決めます。石井と大野の本の例は、どちらも口径・流体記号・番号・配管クラス・保温の順でした。
| 部分 | 石井 p.180 の例 3B-P-4 03-B2H-H40 | 大野 p.54 の例 2B-W03-A-45 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 口径 | 3B | 2B | 呼び径。A呼称で書く図面もある |
| 流体記号 | P | W | 流れる流体の種類 |
| 番号 | 4(区域)と03(追番) | 03 | 流体ごとに上流から付ける通し番号 |
| 配管クラス | B2H | A | 管・継手・フランジ・弁の仕様をまとめた記号 |
| 保温 | H40 | 45 | 断熱の種類と厚さ。大野の例は厚さだけ |
配管クラスは、フランジの圧力・温度レーティングと管の材質などを英字と数字で表した記号です。記号から配管材料基準書を引くと、そのラインに使う管・フランジ・弁の材質と種類が分かります。配管材料基準書は、クラスごとの材料の決まりをまとめた書類です。保温の記号には、保温・保冷・火傷防止・防露・凍結防止・蒸気トレースの区分があります。
ラインリストは、配管の条件をライン番号ごとに1行ずつ並べた一覧です。運転と設計の温度・圧力、試験圧力、塗装の区分はラインリストに載ります。AとBの呼び径の対応は配管の呼び径で確かめられます。
機器と注記の表し方
機器は外形の略図に、機器番号・名称・主な寸法を添えて描きます。予備機も含めて流れの順に並べ、大小が分かる程度の略図にします。縮尺どおりではないので、寸法を書いた所のほかは高さや長さを図から読めません。配置は、正確な縮尺で描くプロットプランで確かめます。
機器の欄には、運転・設計の温度と圧力や適用法規まで書く例があります。ポンプなら揚程、モーターなら出力と極数です。配置のすき間や要る直管長などの設計上の注意は、図の中かNOTE(注記)に書き込みます。
凡例を先に読む理由と記号のつまずき
P&IDの記号に、どの会社でも通じる一つの決まりはありません。石井の本によると、図面の体裁や図示記号は発注者やエンジニアリング会社ごとに大きく違います。エンジニアリング会社が、発注者の図面を自社の標準に書き直す場合も多いほどです。記号・略号・番号の付け方をまとめた図面が、凡例(レジェンドシート)です。
- 弁の形だけでは型式を決められません。 DOE教材によると、グローブ弁とゲート弁は同じ記号で描かれることが多く、番号や注記を見ても分からない場合があります。型式を確かめる手がかりは、凡例の記号と、ラインの配管クラスの配管材料基準書です。基準書の例では、口径の範囲ごとに弁の種類・圧力区分・接続・材質・形式が並んでいます。手で操作する弁の使い分けは開閉バルブの種類と使い分けにまとめました。
- 調節弁は、記号だけでは空気で開くか閉じるかが分からないこともあります。計装用空気などの駆動源が失われたときに開く弁にはFO、閉じる弁にはFCと書き添える描き方があります。
- 信号線の印を凡例と照らせば、その信号を電線で送るのか空気の管で送るのかが分かります。4〜20mAの電気信号は遠くまで送りやすく、20〜100kPaの空気圧信号は防爆の面で扱いやすい信号です。違いは電気信号と空気圧信号の違いで比べています。
記号のもとになる規格
P&IDの記号のもとになる規格は一つではありません。JIS Z 8204(計装用記号)は、化学や石油精製などの工程図に使う計装の記号の規格です。最新の改正は1983年で、2024年の見直しでもそのまま確認されました。電気信号・空気圧信号・油圧信号・細管なども用語として定めています。細管は、圧力式温度計の検出器などから圧力を伝える細い管です。
JIS Z 8209(化学プラント用配管図記号)は、正投影や等角投影で描く化学プラントの配管図の規格です。P&Iダイアグラムも配管図と同じ記号を使います(大野)。JIS Z 8209には、管を示す線の太さの使い分けを図面の中に明示する決まりがあります。配管の簡略図示方法は、JIS B 0011(第1部 通則及び正投影図、第2部 等角投影図)にも定めがあります。ダイヤグラム用の図記号の規格は、ISO 14617に対応するJIS Z 8617の各部です。米国の規格はISA-5.1で、2024年版で題名にControlが加わりました。ISAは、世界のプロセス産業で広く使われているとしています。
参考資料
- 化学工学会編『改訂六版 化学工学便覧』丸善、1999年(23·1·2 プロセス設計の内容と手順 p.1149、25·4 安全設計と安全管理 p.1235)
- 白石浩『化学プラントのプロセス設計-化学プラント工学入門-』分離技術会(分離技術シリーズ22)、2011年(p.20〜22)
- 石井泰範『化学プラント配管設計の基本~配管技術者への道しるべ~』日本工業出版、2012年(p.167〜168、180、185〜188、193、239〜243)
- 大野光之『配管技術ノート』工業調査会、2004年(p.53〜54)
- 秋山尚『和英対訳 誰にでもわかるプラント計装工事のすすめ方』日本計装工業会、2003年(p.12、18)
- 化学工学会監修、多田豊編『化学工学(改訂第3版)-解説と演習-』朝倉書店、2008年(p.286)
- U.S. Department of Energy「DOE Fundamentals Handbook: Engineering Symbology, Prints, and Drawings, Volume 1 of 2」DOE-HDBK-1016/1-93、1993年(2016年に廃止、アーカイブ) https://www.energy.gov/sites/default/files/2026-04/DOE-HDBK-1016-93_VOL1.pdf
- JIS Z 8204:1983「計装用記号」
- JIS Z 8209:1988「化学プラント用配管図記号」
- JIS B 0011-1:1998「製図-配管の簡略図示方法-第1部:通則及び正投影図」、JIS B 0011-2:1998「同-第2部:等角投影図」
- JIS Z 8617-1:2008「ダイヤグラム用図記号-第1部:一般事項及び索引」(第5部「計測及び制御装置」、第6部「計測及び制御機能」、第8部「バルブ及びダンパ」ほか)
- ISA「ANSI/ISA-5.1-2024, Instrumentation and Control – Symbols and Identification」(2024年10月10日の発表) https://www.isa.org/news-press-releases/2024/october/widely-used-engineering-symbols-and-drawings-stand
