ヒーターの断線はテスターの抵抗測定で確認します。
断線している場合は抵抗値が無限大になることを利用しています。
ただし三相ヒーターを利用する場合には合成抵抗を考えなければなりません。
三相ヒーターは断線本数によって表示される抵抗値が異なることが特徴です。
1本断線の場合はRと2R、2本断線の場合はRと∞の測定値をそれぞれ示す様になります。
ヒーターの原理
そもそもヒーターはどのようにして加熱しているのでしょうか。
異常を理解するためにはまず原理を知ることが大切です。
加熱原理
物体に電気を流すことでその抵抗値に応じた熱が発生します。
これをジュール熱と呼びます。
ヒーターは金属やセラミックスなどの発熱体へ電気を流すことで発生するジュール熱を利用しています。
発生する熱量はジュールの法則に従うため予測をしやすいことが特徴です。
$$P=I^2{\times}R$$
P:熱量[W]、I:電流値[A]、R:抵抗値[Ω]
また電気エネルギーをそのまま熱エネルギーに変換することが出来ることからエネルギー変換効率が100%に近い事も特徴です。
プラントの加熱機器としては抵抗加熱に比べて使用頻度は低いですが、他にも以下の加熱方法が存在します。
ヒーターの種類
ヒーターには大きく単相ヒーターと三相ヒーターの2種類に分けられます。
更に三相ヒーターは抵抗同士の接続方法の違いによりデルタ結線、スター結線、V結線の3種類に分けられます。
テスターによる断線確認(抵抗測定)
ここではテスターによる断線確認方法を解説します。
注意が必要なのは三相ヒーターです。
※抵抗測定では回路の電源を遮断してから測定しなければなりません。
単相ヒーター
単相ヒーターは通常の抵抗測定と同様の調べ方で確認することが出来ます。
断線していると電気は流れないため抵抗値は無限大を示します。
三相ヒーター
例としてデルタ結線の三相ヒーターを挙げます。
単相ヒーターの時と違い抵抗を3つ使用しています。
そのためテスターによる抵抗測定を行う際は合成抵抗を考えなければなりません。
デルタ結線の場合、テスターを当てる配線間にはRと2Rの抵抗が並列で繋がれている状態となっています。
そのため断線していない通常状態での合成抵抗はどの配線同士で測っても2/3Rとなります。
そしてどこかの配線が断線している場合、測定する配線の組み合わせで合成抵抗が変化します。
1本断線の場合はRと2R、2本断線の場合はRと∞の測定値をそれぞれ示す様になります。
断線時は測定箇所で抵抗値が変化するためヒーターの断線位置を特定することが出来ます。
参考資料
先のデルタ結線による合成抵抗の考え方を理解すればその他の結線でも同様の考え方ができます。
日本ヒーター株式会社やオムロン株式会社のHPには断線時の抵抗値や電流値が参考にまとめられています。
ぜひ活用してみてください。
断線警報
ヒーター故障時には抵抗値に合わせて電流値の値も変化します。
そのため電流の閾値を設定し、断線検知した時に警報を鳴らすこともできます。
オムロン株式会社のHPに記載されている三相200Vのデルタ結線1kWヒーターを使用した場合を例を挙げます。
このヒーターの場合、通常時は8.7Aの電流が流れます。
対して断線時には7.5Aや5.0Aへ電流値が下がってしまいます。
つまり通常使用による劣化・損失も考慮して8.0A程度を電流の閾値と設定することで断線時の警報とすることが出来ます。
オススメ書籍
・現場エンジニアが読む 電気の本
電気の基本理論から始まり、測定機器や電子部品、制御機器など基本的な要素が解説されています。
-
現場エンジニアが読む 電気の本(第2版)
www.amazon.co.jp
・現場エンジニアのための電気の実務がわかる本
動力回路や制御回路の設計、トラブルシューティング、保全など電気に関する現場向けの解説がされています。
-
現場エンジニアのための電気の実務がわかる本―もう現場でつまずかないズバリ答える50の疑問!
www.amazon.co.jp