動粘度と粘度の換算・求め方

化学工学/物性・熱力学物性・熱力学の5本目(全5本)公開

粘度と動粘度は、密度で割るか掛けるかで換算できます。単位の換算表と計算例のほか、水と主な液体・気体の値を温度つきで載せました。温度での変わり方や粘度計で測れる量、cPとcStの取り違えも扱います。

粘度と動粘度の換算(早見)

求めるもの 計算 単位をそろえた形
動粘度 ν 粘度 ÷ 密度 mm²/s(cSt)= mPa·s(cP)÷ g/cm³
粘度 μ 動粘度 × 密度 mPa·s(cP)= mm²/s(cSt)× g/cm³
SI単位のまま計算するとき ν = μ ÷ ρ m²/s = Pa·s ÷ kg/m³

20℃のトルエンは、粘度0.587 mPa·sで密度0.867 g/cm³です(NIST)。割り算すると、動粘度は0.677 mm²/s(cSt)です。粘度と密度は、同じ温度の値を組み合わせます。換算は液体の粘度・動粘度換算ツール(別サイト)でもできます。

この記事の内容
  1. 粘度と動粘度の単位換算表
  2. 水の粘度と動粘度(0〜100℃)
  3. 主な液体と気体の粘度と動粘度
  4. 温度による粘度の変わり方
  5. ニュートン流体と非ニュートン流体
  6. 粘度計の種類と測れる量
  7. レイノルズ数と圧力損失への効き方
  8. 換算と値の使い方の注意
  9. 参考資料

粘度と動粘度の単位換算表

粘度は、流体の層どうしがずれて動くときの抵抗の大きさを表します。せん断応力がせん断速度に比例する流体では、その比例定数が粘度です。

ニュートンの粘性法則

$$\tau = \mu \frac{du}{dy}$$

式は横にスクロールできます

τ:せん断応力[Pa]、μ:粘度[Pa·s]、du/dy:せん断速度[1/s]

動粘度は粘度を密度で割った値で、動粘性係数とも呼びます。単位は拡散係数と同じm²/sで、運動量の伝わりやすさを表す量です。

動粘度

$$\nu = \frac{\mu}{\rho}$$

式は横にスクロールできます

ν:動粘度[m²/s]、ρ:密度[kg/m³]、μ:粘度[Pa·s]

量 SI単位 よく見る単位 換算
粘度(粘性係数・粘性率) Pa·s mPa·s、cP(センチポアズ)、P(ポアズ) 1 mPa·s=1 cP=0.001 Pa·s、1 P=0.1 Pa·s
動粘度(動粘性係数) m²/s mm²/s、cSt(センチストークス)、St(ストークス) 1 mm²/s=1 cSt=10⁻⁶ m²/s、1 St=10⁻⁴ m²/s
気体の粘度 Pa·s μPa·s 1 μPa·s=0.001 mPa·s

PとStはCGS単位系の単位です。SIへの換算係数は、丸めのない正確な値です(NIST SP 811)。記号はμのほか、ηを使う資料もあります。

水の粘度と動粘度(0〜100℃)

大気圧の水の値を、IAPWSの式で計算しました。100℃だけは沸点の飽和水の値です。20℃の動粘度1.0034 mm²/sは、水の粘度の国際基準値です(ISO/TR 3666)。粘度計の校正も、この値を基準にしています。

温度 ℃ 粘度 mPa·s 密度 kg/m³ 動粘度 mm²/s
0 1.792 999.8 1.792
10 1.306 999.7 1.306
20 1.002 998.2 1.003
25 0.890 997.0 0.893
30 0.797 995.6 0.801
40 0.653 992.2 0.658
50 0.547 988.0 0.553
60 0.466 983.2 0.474
70 0.404 977.8 0.413
80 0.354 971.8 0.364
90 0.314 965.3 0.325
100 0.282 958.3 0.294
  • 20℃から80℃で、粘度は約3分の1に下がります。
  • 20℃付近では、1℃上がるごとに約2.4%下がる計算です。
  • 水は密度がほぼ1 g/cm³なので、mPa·sとmm²/sの数字がほぼそろいます。密度が1から離れた液では、そろいません。

主な液体と気体の粘度と動粘度

常温常圧での液体の粘度は、0.05〜10⁵ mPa·sにわたります(化学工学便覧)。気体は5〜30 μPa·sの範囲に収まります。下の表には、出典で温度がそろう値を集めました。

物質 温度 粘度 mPa·s 動粘度 mm²/s 出典
水 20℃ 1.002 1.003 IAPWSの式
メタノール 20℃ 0.585 0.740 NIST
アセトン 20℃ 0.32 0.40 PubChem
トルエン 20℃ 0.587 0.677 NIST
n-ヘキサン 20℃ 0.313 0.475 NIST
2-プロパノール 25℃ 2.04 2.61 PubChem
エチレングリコール 20℃ 19.8 17.8 MEGlobal(密度はPubChem)
グリセリン(無水) 25℃ 約950 約760 PubChem
潤滑油(ISO VG32) 40℃ - 28.8〜35.2 JIS K 2001
窒素(大気圧) 20℃ 0.0176 15.1 NIST
水蒸気(大気圧) 100℃ 0.0122 20.5 IAPWSの式

動粘度は、同じ温度の密度で割った値です。グリセリンだけは20℃の密度で割った概算で、差は0.3%ほどです。グリセリンは吸湿しやすく、水を含むと粘度が大きく下がります。ISO VG32の範囲は、日本建設機械施工協会の公開資料でも確かめました。

20℃の窒素の粘度は、水の約60分の1しかありません。それでも密度が約860分の1と小さいので、動粘度は水の15倍になります。

温度による粘度の変わり方

液体の粘度は温度が上がると下がり、気体の粘度は上がります。下がり方は液の種類で大きく違います。

物質 温度 粘度の変化 変化の倍率
水 20→80℃ 1.002→0.354 mPa·s 0.35倍
トルエン 20→80℃ 0.587→0.317 mPa·s 0.54倍
エチレングリコール 25→100℃ 16.1→1.98 mPa·s 0.12倍
粘度計校正用標準液(20℃で1,000 mm²/s) 20→40℃ 1,000→約270 mm²/s(動粘度) 約0.27倍
窒素(大気圧) 20→100℃ 0.0176→0.0211 mPa·s 1.20倍
水蒸気(大気圧) 100→200℃ 0.0122→0.0162 mPa·s 1.32倍

水と水蒸気はIAPWSの式で計算し、トルエンと窒素はNISTの値を使いました。エチレングリコールはPubChemの値です。標準液はJIS Z 8809の粘度計校正用標準液で、40℃はエー・アンド・デイの資料にある概略値を使いました。

室温付近の10℃あたりの下がり方は、トルエンで約1割、水で約2割です。エチレングリコールでは約3割になります。表の中では粘い液ほど下がり方が大きく、標準液は10℃ごとにほぼ半分です。気体の粘度は、10〜300 kPaなら圧力でほとんど変わりません(化学工学便覧)。1 MPaの窒素でも、粘度は大気圧のときより1%も増えません(NIST)。一方で動粘度は、密度に反比例して約10分の1になります。

2点の値から間の温度を求める

分子どうしが会合しない液体では、粘度の対数と絶対温度の逆数がほぼ直線の関係になります。直線と見なせるのは、温度の幅がそれほど広くない範囲です。この関係をAndradeの式と呼び、2つの温度の値から間の温度の粘度を出せます。

Andradeの式(2点の値から求める形)

$$\ln\frac{\mu}{\mu_1} = \frac{\ln(\mu_2/\mu_1)}{1/T_2 - 1/T_1}\left(\frac{1}{T}-\frac{1}{T_1}\right)$$

式は横にスクロールできます

μ:求める温度での粘度[mPa·s]、μ₁・μ₂:温度T₁・T₂での粘度[mPa·s]、T・T₁・T₂:絶対温度[K]

トルエンの20℃と80℃の値から40℃を出すと、0.466 mPa·sです。NISTの値との差は0.1%しかありません。水で20℃と60℃から40℃を出すと、2%高く出ます。水やアルコールのように分子どうしが会合する液は、直線から外れやすい液です。2点の外へ伸ばすと誤差が増えます。水で20℃と60℃の値から100℃を出すと、9%低くなりました。

ニュートン流体と非ニュートン流体

せん断速度を変えても粘度が一定の液を、ニュートン流体と呼びます(JIS Z 8803)。水やアルコール、一般の溶剤がこれに当たります。高分子の溶液やスラリーの多くは、せん断速度で粘度が変わる非ニュートン流体です。そのときの粘度は見掛け粘度と呼び、測った条件での値です。

種類 粘度のふるまい 例
ニュートン流体 せん断速度によらず一定 水、アルコール、一般の溶剤、グリセリン
擬塑性流体 せん断速度を上げると下がる 高分子の溶液、エマルション
ダイラタント流体 せん断速度を上げると上がる でんぷんの濃い懸濁液、高濃度のサスペンション
ビンガム流体 降伏応力を超えるまで流れず、超えるとせん断応力とせん断速度が直線の関係 トマトケチャップ、練り歯磨き、各種スラリー
チクソトロピーを示す流体 流し続けると下がり、止めると元に戻る グリース、印刷インク

分類は化学工学便覧とJIS Z 8803、例はエー・アンド・デイの技術資料の表によります。

見掛け粘度(指数法則モデル)

$$\mu_a = m\,\dot{\gamma}^{\,n-1}$$

式は横にスクロールできます

μ_a:見掛け粘度[Pa·s]、m:流動係数[Pa·sⁿ]、n:流動指数[-]、γ̇:せん断速度[1/s]

n=1ならニュートン流体です。n<1で擬塑性、n>1でダイラタントになります。例としてn=0.5の液では、せん断速度を10倍にすると見掛け粘度が約0.32倍です。装置の計算には、せん断速度と見掛け粘度の関係を測ってから使います。レイノルズ数にも、非ニュートン流体用の別の定義があります。

粘度計の種類と測れる量

JIS Z 8803は、細管・落球・回転・振動の4種類の粘度計による測り方を定めています。直接わかる量は方式で違います。

方式 直接わかる量 注意
細管(毛細管)粘度計 動粘度(流下時間×粘度計定数) 粘度は密度を掛けて出す。石油製品の動粘度試験(JIS K 2283)もこの方式
落球粘度計 粘度 球が一定の距離を落ちる時間から出す。球と液の密度が要る。連続測定はできない
回転粘度計(単一円筒形。ブルックフィールド形、B形とも呼ぶ) 粘度、見掛け粘度 非ニュートン液体ではロータと回転数で値が変わる
回転粘度計(共軸二重円筒形・円すい-平板形) 粘度、見掛け粘度、流動曲線 せん断速度を変えて、非ニュートン液体の流動曲線を取れる
振動粘度計 粘度×密度 粘度に直すには密度で割る。連続測定ができる

方式と直接わかる量はJIS Z 8803、ブルックフィールド形の名はJIS K 7117-1の題名が出典です。注意の欄は、エー・アンド・デイの技術資料と『解説 化学工学』で確かめました。

ニュートン液体なら、条件を守ればどの方式でも同じ値になります(JIS Z 8803)。非ニュートン液体の流動曲線は、共軸二重円筒形や円すい-平板形の回転粘度計で求めます。工程の中で連続して測る粘度計には、インラインセンサーの種類と用途で触れています。

レイノルズ数と圧力損失への効き方

配管のレイノルズ数は、動粘度を使うとRe=Du/νで出せます。例として、50A Sch40(内径52.7 mm)に1 m/sで流す場合を比べます。20℃の水(1.003 mm²/s)ならRe≒52,500で乱流です。40℃のISO VG68の油(中心値68 mm²/s)では、Re≒775です。層流の範囲(2,300以下)に入ります。

層流の圧力損失は、ハーゲン・ポアズイユの式のとおり粘度に比例します。油が冷えて粘度が2倍になれば、同じ流量で圧力損失も2倍です。式はファニングの式の記事、層流と乱流の境目はレイノルズ数の記事にあります。計算はレイノルズ数(別サイト)とハーゲン・ポアズイユ流れ(別サイト)のツールでもできます。

遠心(渦巻)ポンプのカタログの性能は、常温の清水で試験した値です。遠心ポンプで動粘度が大きい液を送ると、揚程と効率が下がり軸動力が増えます。撹拌槽でも、撹拌レイノルズ数と撹拌所要動力の計算に粘度を使います。

換算と値の使い方の注意

  • cPとcStは、密度が1 g/cm³のときだけ同じ数字になります。 20℃のn-ヘキサンは0.313 cPで0.475 cSt、窒素は0.0176 cPで15.1 cStです。気体では桁が変わります。
  • 仕様書の「粘度」が動粘度を指すことがあります。ポンプの仕様では、動粘度を単に粘度と書く例があります。単位がcPかcStかで確かめます。
  • 粘度と密度は同じ温度の値を使います。80℃のトルエンの粘度を20℃の密度で割ると、動粘度は6.6%小さく出ます。
  • 混合物の粘度は、成分の割合で平均した値になりません。 グリセリン(無水で954 mPa·s)の70%水溶液は25℃で17 mPa·sです(HSDB)。水と70:30で平均した約670 mPa·sの40分の1にあたります。エタノールと水は逆に、中ほどの濃度(質量40%前後)で両方より粘くなります。混合気体の粘度も、組成と直線の関係になるとは限りません。成分の粘度と分子量から、Wilke式で推算します(計算ツール(別サイト))。
  • 粘度の値は、測った温度と一緒に扱います。非ニュートン液体なら、粘度計の方式・ロータ・回転数も添えます。条件の違う値どうしは比べません。

参考資料

  1. 化学工学会編:改訂六版 化学工学便覧,丸善(1999),1·13·1 粘度(p.99〜104),2·8 レオロジー(p.159〜164)
  2. 化学工学会監修,多田豊編:化学工学(改訂第3版)-解説と演習-,朝倉書店(2008),p.35〜41,p.59〜60,p.66
  3. 佐藤一雄:物性定数推算法,丸善,第12章 液体の粘度(p.251〜255,p.276〜279)
  4. 竹内雍,松岡正邦,越智健二,茅原一之:解説 化学工学(改訂版),培風館(2001),p.222〜223,p.258
  5. 化学工学会監修:最新 ミキシング技術の基礎と応用(化学工学の進歩42),三恵社(2008),p.98〜99
  6. 外山幸雄:絵とき「ポンプ」基礎のきそ,日刊工業新聞社(2014),p.28,p.32,p.116〜117
  7. 今西忠:プラント操作の基礎知識 第2版,化学工業日報社(2005),p.46
  8. JIS Z 8803:2011「液体の粘度測定方法」
  9. JIS Z 8809:2011「粘度計校正用標準液」
  10. JIS K 7117-1:1999「プラスチック-液状,乳濁状又は分散状の樹脂-ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」
  11. JIS K 2001:1993「工業用潤滑油-ISO粘度分類」
  12. JIS K 2283:2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」
  13. IAPWS:Release on the IAPWS Formulation 2008 for the Viscosity of Ordinary Water Substance(2008)
  14. IAPWS:Revised Release on the IAPWS Formulation 1995 for the Thermodynamic Properties of Ordinary Water Substance for General and Scientific Use(2018)
  15. E. W. Lemmon,M. O. McLinden,D. G. Friend:Thermophysical Properties of Fluid Systems,NIST Chemistry WebBook,NIST Standard Reference Database Number 69(2026年10月参照)
  16. NIST:Guide for the Use of the International System of Units (SI),NIST Special Publication 811,Appendix B.9
  17. 製品評価技術基盤機構 認定センター:JCSS 技術的要求事項適用指針(粘度)JCT20601-12(2026)
  18. PubChem:Acetone(CID 180),2-Propanol(CID 3776),Ethylene glycol(CID 174),Glycerol(CID 753)の Viscosity・Density(HSDB,DOE PAC Chemical Database)
  19. MEGlobal:Ethylene Glycol Product Guide(2013)
  20. エー・アンド・デイ:音叉振動式粘度計 Users' Handbook Ver.1.15J(2013)
  21. 日本建設機械施工協会:油圧作動油 耐摩耗性作動油の規格(Web公開資料)

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