粘度と動粘度は、密度で割るか掛けるかで換算できます。単位の換算表と計算例のほか、水と主な液体・気体の値を温度つきで載せました。温度での変わり方や粘度計で測れる量、cPとcStの取り違えも扱います。
粘度と動粘度の換算(早見)
| 求めるもの | 計算 | 単位をそろえた形 |
|---|---|---|
| 動粘度 ν | 粘度 ÷ 密度 | mm²/s(cSt)= mPa·s(cP)÷ g/cm³ |
| 粘度 μ | 動粘度 × 密度 | mPa·s(cP)= mm²/s(cSt)× g/cm³ |
| SI単位のまま計算するとき | ν = μ ÷ ρ | m²/s = Pa·s ÷ kg/m³ |
20℃のトルエンは、粘度0.587 mPa·sで密度0.867 g/cm³です(NIST)。割り算すると、動粘度は0.677 mm²/s(cSt)です。粘度と密度は、同じ温度の値を組み合わせます。換算は液体の粘度・動粘度換算ツール(別サイト)でもできます。
この記事の内容
粘度と動粘度の単位換算表
粘度は、流体の層どうしがずれて動くときの抵抗の大きさを表します。せん断応力がせん断速度に比例する流体では、その比例定数が粘度です。
ニュートンの粘性法則
式は横にスクロールできます
τ:せん断応力[Pa]、μ:粘度[Pa·s]、du/dy:せん断速度[1/s]
動粘度は粘度を密度で割った値で、動粘性係数とも呼びます。単位は拡散係数と同じm²/sで、運動量の伝わりやすさを表す量です。
動粘度
式は横にスクロールできます
ν:動粘度[m²/s]、ρ:密度[kg/m³]、μ:粘度[Pa·s]
| 量 | SI単位 | よく見る単位 | 換算 |
|---|---|---|---|
| 粘度(粘性係数・粘性率) | Pa·s | mPa·s、cP(センチポアズ)、P(ポアズ) | 1 mPa·s=1 cP=0.001 Pa·s、1 P=0.1 Pa·s |
| 動粘度(動粘性係数) | m²/s | mm²/s、cSt(センチストークス)、St(ストークス) | 1 mm²/s=1 cSt=10⁻⁶ m²/s、1 St=10⁻⁴ m²/s |
| 気体の粘度 | Pa·s | μPa·s | 1 μPa·s=0.001 mPa·s |
PとStはCGS単位系の単位です。SIへの換算係数は、丸めのない正確な値です(NIST SP 811)。記号はμのほか、ηを使う資料もあります。
水の粘度と動粘度(0〜100℃)
大気圧の水の値を、IAPWSの式で計算しました。100℃だけは沸点の飽和水の値です。20℃の動粘度1.0034 mm²/sは、水の粘度の国際基準値です(ISO/TR 3666)。粘度計の校正も、この値を基準にしています。
| 温度 ℃ | 粘度 mPa·s | 密度 kg/m³ | 動粘度 mm²/s |
|---|---|---|---|
| 0 | 1.792 | 999.8 | 1.792 |
| 10 | 1.306 | 999.7 | 1.306 |
| 20 | 1.002 | 998.2 | 1.003 |
| 25 | 0.890 | 997.0 | 0.893 |
| 30 | 0.797 | 995.6 | 0.801 |
| 40 | 0.653 | 992.2 | 0.658 |
| 50 | 0.547 | 988.0 | 0.553 |
| 60 | 0.466 | 983.2 | 0.474 |
| 70 | 0.404 | 977.8 | 0.413 |
| 80 | 0.354 | 971.8 | 0.364 |
| 90 | 0.314 | 965.3 | 0.325 |
| 100 | 0.282 | 958.3 | 0.294 |
- 20℃から80℃で、粘度は約3分の1に下がります。
- 20℃付近では、1℃上がるごとに約2.4%下がる計算です。
- 水は密度がほぼ1 g/cm³なので、mPa·sとmm²/sの数字がほぼそろいます。密度が1から離れた液では、そろいません。
主な液体と気体の粘度と動粘度
常温常圧での液体の粘度は、0.05〜10⁵ mPa·sにわたります(化学工学便覧)。気体は5〜30 μPa·sの範囲に収まります。下の表には、出典で温度がそろう値を集めました。
| 物質 | 温度 | 粘度 mPa·s | 動粘度 mm²/s | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 水 | 20℃ | 1.002 | 1.003 | IAPWSの式 |
| メタノール | 20℃ | 0.585 | 0.740 | NIST |
| アセトン | 20℃ | 0.32 | 0.40 | PubChem |
| トルエン | 20℃ | 0.587 | 0.677 | NIST |
| n-ヘキサン | 20℃ | 0.313 | 0.475 | NIST |
| 2-プロパノール | 25℃ | 2.04 | 2.61 | PubChem |
| エチレングリコール | 20℃ | 19.8 | 17.8 | MEGlobal(密度はPubChem) |
| グリセリン(無水) | 25℃ | 約950 | 約760 | PubChem |
| 潤滑油(ISO VG32) | 40℃ | - | 28.8〜35.2 | JIS K 2001 |
| 窒素(大気圧) | 20℃ | 0.0176 | 15.1 | NIST |
| 水蒸気(大気圧) | 100℃ | 0.0122 | 20.5 | IAPWSの式 |
動粘度は、同じ温度の密度で割った値です。グリセリンだけは20℃の密度で割った概算で、差は0.3%ほどです。グリセリンは吸湿しやすく、水を含むと粘度が大きく下がります。ISO VG32の範囲は、日本建設機械施工協会の公開資料でも確かめました。
20℃の窒素の粘度は、水の約60分の1しかありません。それでも密度が約860分の1と小さいので、動粘度は水の15倍になります。
温度による粘度の変わり方
液体の粘度は温度が上がると下がり、気体の粘度は上がります。下がり方は液の種類で大きく違います。
| 物質 | 温度 | 粘度の変化 | 変化の倍率 |
|---|---|---|---|
| 水 | 20→80℃ | 1.002→0.354 mPa·s | 0.35倍 |
| トルエン | 20→80℃ | 0.587→0.317 mPa·s | 0.54倍 |
| エチレングリコール | 25→100℃ | 16.1→1.98 mPa·s | 0.12倍 |
| 粘度計校正用標準液(20℃で1,000 mm²/s) | 20→40℃ | 1,000→約270 mm²/s(動粘度) | 約0.27倍 |
| 窒素(大気圧) | 20→100℃ | 0.0176→0.0211 mPa·s | 1.20倍 |
| 水蒸気(大気圧) | 100→200℃ | 0.0122→0.0162 mPa·s | 1.32倍 |
水と水蒸気はIAPWSの式で計算し、トルエンと窒素はNISTの値を使いました。エチレングリコールはPubChemの値です。標準液はJIS Z 8809の粘度計校正用標準液で、40℃はエー・アンド・デイの資料にある概略値を使いました。
室温付近の10℃あたりの下がり方は、トルエンで約1割、水で約2割です。エチレングリコールでは約3割になります。表の中では粘い液ほど下がり方が大きく、標準液は10℃ごとにほぼ半分です。気体の粘度は、10〜300 kPaなら圧力でほとんど変わりません(化学工学便覧)。1 MPaの窒素でも、粘度は大気圧のときより1%も増えません(NIST)。一方で動粘度は、密度に反比例して約10分の1になります。
2点の値から間の温度を求める
分子どうしが会合しない液体では、粘度の対数と絶対温度の逆数がほぼ直線の関係になります。直線と見なせるのは、温度の幅がそれほど広くない範囲です。この関係をAndradeの式と呼び、2つの温度の値から間の温度の粘度を出せます。
Andradeの式(2点の値から求める形)
式は横にスクロールできます
μ:求める温度での粘度[mPa·s]、μ₁・μ₂:温度T₁・T₂での粘度[mPa·s]、T・T₁・T₂:絶対温度[K]
トルエンの20℃と80℃の値から40℃を出すと、0.466 mPa·sです。NISTの値との差は0.1%しかありません。水で20℃と60℃から40℃を出すと、2%高く出ます。水やアルコールのように分子どうしが会合する液は、直線から外れやすい液です。2点の外へ伸ばすと誤差が増えます。水で20℃と60℃の値から100℃を出すと、9%低くなりました。
ニュートン流体と非ニュートン流体
せん断速度を変えても粘度が一定の液を、ニュートン流体と呼びます(JIS Z 8803)。水やアルコール、一般の溶剤がこれに当たります。高分子の溶液やスラリーの多くは、せん断速度で粘度が変わる非ニュートン流体です。そのときの粘度は見掛け粘度と呼び、測った条件での値です。
| 種類 | 粘度のふるまい | 例 |
|---|---|---|
| ニュートン流体 | せん断速度によらず一定 | 水、アルコール、一般の溶剤、グリセリン |
| 擬塑性流体 | せん断速度を上げると下がる | 高分子の溶液、エマルション |
| ダイラタント流体 | せん断速度を上げると上がる | でんぷんの濃い懸濁液、高濃度のサスペンション |
| ビンガム流体 | 降伏応力を超えるまで流れず、超えるとせん断応力とせん断速度が直線の関係 | トマトケチャップ、練り歯磨き、各種スラリー |
| チクソトロピーを示す流体 | 流し続けると下がり、止めると元に戻る | グリース、印刷インク |
分類は化学工学便覧とJIS Z 8803、例はエー・アンド・デイの技術資料の表によります。
見掛け粘度(指数法則モデル)
式は横にスクロールできます
μ_a:見掛け粘度[Pa·s]、m:流動係数[Pa·sⁿ]、n:流動指数[-]、γ̇:せん断速度[1/s]
n=1ならニュートン流体です。n<1で擬塑性、n>1でダイラタントになります。例としてn=0.5の液では、せん断速度を10倍にすると見掛け粘度が約0.32倍です。装置の計算には、せん断速度と見掛け粘度の関係を測ってから使います。レイノルズ数にも、非ニュートン流体用の別の定義があります。
粘度計の種類と測れる量
JIS Z 8803は、細管・落球・回転・振動の4種類の粘度計による測り方を定めています。直接わかる量は方式で違います。
| 方式 | 直接わかる量 | 注意 |
|---|---|---|
| 細管(毛細管)粘度計 | 動粘度(流下時間×粘度計定数) | 粘度は密度を掛けて出す。石油製品の動粘度試験(JIS K 2283)もこの方式 |
| 落球粘度計 | 粘度 | 球が一定の距離を落ちる時間から出す。球と液の密度が要る。連続測定はできない |
| 回転粘度計(単一円筒形。ブルックフィールド形、B形とも呼ぶ) | 粘度、見掛け粘度 | 非ニュートン液体ではロータと回転数で値が変わる |
| 回転粘度計(共軸二重円筒形・円すい-平板形) | 粘度、見掛け粘度、流動曲線 | せん断速度を変えて、非ニュートン液体の流動曲線を取れる |
| 振動粘度計 | 粘度×密度 | 粘度に直すには密度で割る。連続測定ができる |
方式と直接わかる量はJIS Z 8803、ブルックフィールド形の名はJIS K 7117-1の題名が出典です。注意の欄は、エー・アンド・デイの技術資料と『解説 化学工学』で確かめました。
ニュートン液体なら、条件を守ればどの方式でも同じ値になります(JIS Z 8803)。非ニュートン液体の流動曲線は、共軸二重円筒形や円すい-平板形の回転粘度計で求めます。工程の中で連続して測る粘度計には、インラインセンサーの種類と用途で触れています。
レイノルズ数と圧力損失への効き方
配管のレイノルズ数は、動粘度を使うとRe=Du/νで出せます。例として、50A Sch40(内径52.7 mm)に1 m/sで流す場合を比べます。20℃の水(1.003 mm²/s)ならRe≒52,500で乱流です。40℃のISO VG68の油(中心値68 mm²/s)では、Re≒775です。層流の範囲(2,300以下)に入ります。
層流の圧力損失は、ハーゲン・ポアズイユの式のとおり粘度に比例します。油が冷えて粘度が2倍になれば、同じ流量で圧力損失も2倍です。式はファニングの式の記事、層流と乱流の境目はレイノルズ数の記事にあります。計算はレイノルズ数(別サイト)とハーゲン・ポアズイユ流れ(別サイト)のツールでもできます。
遠心(渦巻)ポンプのカタログの性能は、常温の清水で試験した値です。遠心ポンプで動粘度が大きい液を送ると、揚程と効率が下がり軸動力が増えます。撹拌槽でも、撹拌レイノルズ数と撹拌所要動力の計算に粘度を使います。
換算と値の使い方の注意
- cPとcStは、密度が1 g/cm³のときだけ同じ数字になります。 20℃のn-ヘキサンは0.313 cPで0.475 cSt、窒素は0.0176 cPで15.1 cStです。気体では桁が変わります。
- 仕様書の「粘度」が動粘度を指すことがあります。ポンプの仕様では、動粘度を単に粘度と書く例があります。単位がcPかcStかで確かめます。
- 粘度と密度は同じ温度の値を使います。80℃のトルエンの粘度を20℃の密度で割ると、動粘度は6.6%小さく出ます。
- 混合物の粘度は、成分の割合で平均した値になりません。 グリセリン(無水で954 mPa·s)の70%水溶液は25℃で17 mPa·sです(HSDB)。水と70:30で平均した約670 mPa·sの40分の1にあたります。エタノールと水は逆に、中ほどの濃度(質量40%前後)で両方より粘くなります。混合気体の粘度も、組成と直線の関係になるとは限りません。成分の粘度と分子量から、Wilke式で推算します(計算ツール(別サイト))。
- 粘度の値は、測った温度と一緒に扱います。非ニュートン液体なら、粘度計の方式・ロータ・回転数も添えます。条件の違う値どうしは比べません。
参考資料
- 化学工学会編:改訂六版 化学工学便覧,丸善(1999),1·13·1 粘度(p.99〜104),2·8 レオロジー(p.159〜164)
- 化学工学会監修,多田豊編:化学工学(改訂第3版)-解説と演習-,朝倉書店(2008),p.35〜41,p.59〜60,p.66
- 佐藤一雄:物性定数推算法,丸善,第12章 液体の粘度(p.251〜255,p.276〜279)
- 竹内雍,松岡正邦,越智健二,茅原一之:解説 化学工学(改訂版),培風館(2001),p.222〜223,p.258
- 化学工学会監修:最新 ミキシング技術の基礎と応用(化学工学の進歩42),三恵社(2008),p.98〜99
- 外山幸雄:絵とき「ポンプ」基礎のきそ,日刊工業新聞社(2014),p.28,p.32,p.116〜117
- 今西忠:プラント操作の基礎知識 第2版,化学工業日報社(2005),p.46
- JIS Z 8803:2011「液体の粘度測定方法」
- JIS Z 8809:2011「粘度計校正用標準液」
- JIS K 7117-1:1999「プラスチック-液状,乳濁状又は分散状の樹脂-ブルックフィールド形回転粘度計による見掛け粘度の測定方法」
- JIS K 2001:1993「工業用潤滑油-ISO粘度分類」
- JIS K 2283:2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」
- IAPWS:Release on the IAPWS Formulation 2008 for the Viscosity of Ordinary Water Substance(2008)
- IAPWS:Revised Release on the IAPWS Formulation 1995 for the Thermodynamic Properties of Ordinary Water Substance for General and Scientific Use(2018)
- E. W. Lemmon,M. O. McLinden,D. G. Friend:Thermophysical Properties of Fluid Systems,NIST Chemistry WebBook,NIST Standard Reference Database Number 69(2026年10月参照)
- NIST:Guide for the Use of the International System of Units (SI),NIST Special Publication 811,Appendix B.9
- 製品評価技術基盤機構 認定センター:JCSS 技術的要求事項適用指針(粘度)JCT20601-12(2026)
- PubChem:Acetone(CID 180),2-Propanol(CID 3776),Ethylene glycol(CID 174),Glycerol(CID 753)の Viscosity・Density(HSDB,DOE PAC Chemical Database)
- MEGlobal:Ethylene Glycol Product Guide(2013)
- エー・アンド・デイ:音叉振動式粘度計 Users' Handbook Ver.1.15J(2013)
- 日本建設機械施工協会:油圧作動油 耐摩耗性作動油の規格(Web公開資料)
