静電気対策の目安

安全/防爆・静電気防爆・静電気の4本目(全4本)公開

可燃性の液や粉を扱う設備で、静電気による着火を防ぐ対策の目安をまとめました。接地・ボンディングの抵抗値や流速の制限、作業者の帯電対策を表で示します。数値は断りのない限り、労働安全衛生総合研究所「静電気安全指針2007」の値です。

静電気対策の目安

対象 目安 見落としやすい点
金属の設備・配管・容器 物体から大地までの漏洩抵抗(接触部や接地極を含む合計)が10⁶ Ω(1 MΩ)以下。接地極の接地抵抗は1,000 Ω以下 大型タンクなど固定設備の接地抵抗は10 Ω以下
ボンディング(導体どうしの接続) 1,000 Ω以下 ホースは導電性(1 mあたり10³〜10⁶ Ω)にし、ボンディングして接地する
作業者(人体) 人体の漏洩抵抗10⁸ Ω(100 MΩ)以下で、帯電電位を100 V以下にする。靴は10⁵〜10⁸ Ω、床は10⁸ Ω以下 厚手の靴下や絶縁性の中敷きで抵抗が上がる
低導電率の液(50 pS/m以下)を送る配管 7 m/sと流速制限の式(v·d)の小さい方 トルエン・キシレン・ヘキサン・灯油などが当たる。絶縁性の配管・容器は使わない
中・高導電率の液を送る配管 10 m/s以下 絶縁性の配管・容器では1 m/s以下
充填の始め、水滴や固体が混ざる液 1 m/s以下 ドラム缶も充填管の先が液に沈むまでは遅くする
充填後の検尺・サンプリング 低導電率の液は静置10分以上(50 m³程度まで)。100 m³以上のタンクや、遊離水などを含む液は30分以上 指針の参考表では、1 pS/m以下の液で50 m³を超えるタンクは60分以上。静置だけに頼らない。ゲージウェル(接地した検尺用の筒)があれば静置は要らない

表の値は指針の目安です。静電気の電流は数十μA以下と小さく、電気設備の接地より大きな抵抗で足ります。10⁶ Ωは、発生電流が100 μAでも電位を100 V以下に抑える値です。100 Vは、火花放電が始まる最小の電圧約330 Vに余裕を見た値です。

この記事の内容
  1. 静電気がたまりやすい作業と対策
  2. 放電の種類と最小着火エネルギー
  3. 接地とボンディングの考え方
  4. 低導電率の液の流速制限と静置時間
  5. 作業者の帯電対策(静電靴・床・作業服)
  6. 可燃性の液への粉体投入とフレコン
  7. 法令で求められる静電気対策
  8. 参考資料

静電気がたまりやすい作業と対策

静電気による火災は、1993〜2004年に毎年70〜110件ほど起きていました(総務省消防庁の火災年報)。原因の上位は作業者・着衣と粉体と液体の帯電で、それぞれ約15%です。

作業 帯電のしかた 主な対策
配管・ホースで液を送る 液と管壁の境で電荷が分かれ、片方が液と一緒に流れる。精密ろ過のフィルターで大きく増える 導電性の配管・ホースを接地する。流速を制限し、フィルターは上流に置く
タンク・ドラム缶への充填 帯電した液がたまり、液面の電位が上がる。上から落とすと、しぶきや泡で帯電が増える 底近くまで下げた充填管(ディップパイプ)か、底から入れる。液面に浮いた金属(フロートなど)をなくす
撹拌・混合 水分・粉体・空気が混ざると帯電が大きくなる 爆発性雰囲気ができる槽では、導電率を1,000 pS/m以上に上げるか不活性ガスで置換する。気体を吹き込むミキサーやジェットミキサー、高速のプロペラは使わない
可燃性の液への粉体投入 帯電した粉体や袋が、蒸気のある投入口で放電する。液面に浮いた帯電粉体からも放電する 接地した金属か導電性のシュート・ホッパーから少しずつ入れる
粉体の空気輸送 管壁との衝突と摩擦で帯電する。指針の表では1〜100 μC/kgと大きい 金属配管を接地し、曲がりを減らして速度を落とす
歩く・作業服を脱ぎ着する 床や服との摩擦とはく離で人が帯電する。帯電物に近づくと誘導でも帯電する 静電靴と導電性の床で人を接地する。危険場所では服を脱ぎ着しない
タンクの洗浄 噴射した液が霧になって帯電する ノズル・配管・ホースを接地し、容器の大きさと圧力・流量の上限を守る

どの作業でも、危険かどうかは4つの問いで確かめます。

  1. 爆発性雰囲気があるか
  2. 電荷が発生し、たまるか
  3. 放電が起こるか。起こるならどの種類か
  4. その放電で着火するか

静電気対策が難しい作業では、窒素などで爆発性雰囲気を作らないようにします。液の温度を引火点より5℃以上低く保つのも、その一つです。

放電の種類と最小着火エネルギー

着火するかどうかは、放電のエネルギーと可燃物の最小着火エネルギー(MIE)を比べて決めます。

放電 起こる場面 放電エネルギー 着火させうるもの 主な対策
火花放電 絶縁された金属や人と、接地した金属の間 1 J程度まで ガス・蒸気、粉体 接地・ボンディング
コロナ放電 とがった接地金属が帯電物に近づく 数十μJまで 水素・アセチレンなど 一般に対策は要らない
ブラシ放電 丸みのある接地金属や指先が、帯電した絶縁物に近づく 3 mJ程度まで ガス・蒸気、MIEの小さい粉体 絶縁物の面積・幅を制限する。静電遮へい
沿面放電 裏に接地金属がある薄い絶縁物(ライニング・コーティング)が強く帯電する 10 J程度まで ガス・蒸気、粉体 厚さ方向の絶縁破壊電圧が4 kV以下の材料にする
コーン放電 粒径0.1〜10 mmの高抵抗の粉体をサイロへ大量に充填する 数十mJ程度 ガス・蒸気、粉体 電荷をためない。不活性化

表は指針の表3.3をもとにまとめたもので、火花放電以外の放電エネルギーは着火試験から求めた等価エネルギーです。

物質 最小着火エネルギー(mJ) 導電率(pS/m) 導電率の区分
水素 0.016 – –
メタノール 0.14 4.4×10⁷(18℃) 高
キシレン 0.2 0.1 低
ベンゼン 0.2 5×10⁻³(精製品) 低
トルエン 0.24 1未満 低
ヘキサン 0.24 1×10⁻⁵(精製品) 低
酢酸エチル 0.46 4.6×10⁴(23℃) 高
2-プロパノール(IPA) 0.51 3.5×10⁸(25℃) 高
可燃性の粉じん 1〜5,000(多くは数mJ〜数十mJ) – –

MIEは常温・1気圧の空気中の値で、濃度によって変わります。導電率の区分の境は50 pS/mと1,000 pS/mです(指針の表8.1)。

トルエンやキシレンは電荷が逃げにくく、MIEも0.2 mJ前後と小さい液です。メタノールや酢酸エチルは、接地した金属の中なら電荷がすぐ逃げます。

帯電した導体の放電エネルギー

$$W = \frac{1}{2} C V^{2}$$

式は横にスクロールできます

W:放電エネルギー(導体にたまった静電エネルギー)[J]、C:導体の静電容量[F]、V:導体の帯電電位[V]

例として、接地の外れたドラム缶(200 pF)が10 kVに帯電したとします。放電エネルギーは½×200×10⁻¹²×(10⁴)²=0.01 J、つまり10 mJです。トルエンのMIE 0.24 mJの約40倍になります。

接地とボンディングの考え方

ボンディングは、直接の接地が難しい物体を近くの接地した導体に導線でつなぎ、同じ電位にして放電を防ぐことです。

接地で電荷が逃げるのは、体積抵抗率10⁸ Ω·m以下か表面抵抗率10¹⁰ Ω以下の材料です。樹脂やライニングの多くは不導体で、接地しても電荷が逃げません。導電性の材料に替えるか、接地した金網などで覆う静電遮へいを使います。

帯電や静電誘導のおそれがある金属は、大きさにかかわらず接地します。雷や漏電の保護接地につながっていれば、別に設ける必要はありません。接地線で防ぐべきは、断線・外れ・接触不良とつなぎ忘れです。

金属配管のフランジは、ボルトとナットで1,000 Ω以下につながっていれば導線は要りません。途中に絶縁性の配管やホースを入れると、そこでボンディングが切れます。やむを得ず使うときは導線でまたぎ、区間を短くします。接地は付けたままが原則です。付けては外すと、帯電物のそばの導体に電荷が残る誘導帯電が起きるためです。見落としやすい所を次に挙げます。

  • 樹脂の配管や容器についた金属のフランジ・ノズル。絶縁性の床に置いた金属のドラム
  • 導電性の床に置いた金属のバケツや台車。床やバケツの底、車輪の汚れで漏洩抵抗が上がり、災害が起きている。床任せにせず直接つなぐ
  • 液面に浮いた金属(ゲージのフロート、サンプル用の容器)。火花放電の原因になるので浮かせない
  • 検尺やサンプリングの器具。金属部はタンクにボンディングし、金属のチェーンは使わない
  • グラスライニングや樹脂の容器。大・中型のタンクや低導電率の液には使わない。やむを得ず使う容器は導電性のライニングに替えるか、接地した金属板を液に触れさせる(面積は容積[m³]×0.04 m²以上。5 m³までの容器で確かめられた値)
  • タンクローリー。作業前に接地、次にボンディングの順でつなぎ、外すのは作業後に逆の順。充填後はディップパイプを抜くまで5分以上おく
  • 流れている液や粉に接地した金網などを当てる対策。除電にならず、かえって帯電が増えることがある

低導電率の液の流速制限と静置時間

緩和時間は、電荷が初めの約37%に減るまでの時間です。

電荷緩和時間

$$\tau = \frac{\varepsilon_0 \varepsilon_r}{\sigma}$$

式は横にスクロールできます

τ:電荷緩和時間[s]、ε₀:真空の誘電率(8.85×10⁻¹²)[F/m]、εr:液の比誘電率[-]、σ:液の導電率[S/m]

例として、導電率1 pS/m(10⁻¹² S/m)で比誘電率2.38の液ならτは約21秒です。トルエンは導電率が1 pS/m未満で、指針の表の緩和時間は約100秒です。メタノール(導電率4.4×10⁷ pS/m)は約6.6 μsで、電荷はすぐに逃げます。

流速を制限するのは、長い配管では液の電荷密度が流速にほぼ比例するからです。タンクへの充填では、流速vと配管の径dの積に上限を置きます。

低導電率の液の充填の流速制限

$$v\,d \le K N$$

式は横にスクロールできます

v:配管内の流速[m/s]、d:上流側の配管の径[m]、N:タンクの大きさで決まる係数[-]、K:液の導電率で決まる値[m²/s]

条件 値
液の導電率が5 pS/mを超える K=0.50 m²/s
液の導電率が5 pS/m以下 K=0.38 m²/s
タンク断面の対角線の長さLが2 m未満 N=1
Lが2 m以上4.6 m以下 N=√(L/2)
Lが4.6 mを超える N=1.5
配管の径が途中で変わる dは最も細い所の径。その区間が10 m以下で、断面積が次に細い所の67%以上なら、次に細い所の径

例として、断面の対角線Lが3 mのタンクにトルエンを入れるとします。配管はSGP 80Aで、dは内径の80.7 mmです(配管サイズ一覧表)。N=√(3/2)≒1.225なので、v≦0.38×1.225÷0.0807≒5.8 m/sになります。7 m/sより小さいので、これが上限です。底から入れるボトムローディングは75%の約4.3 m/sになります。どの容器でも、充填管の先が液に沈むまでは1 m/s以下にします(指針の目安は液面下0.6 mか管径の2倍)。

この式は、水滴や固体が混ざらない液に使います。混ざる液は1 m/s以下です。不活性化していない固定屋根の大型タンク(直径か対角線が5 m以上)も同じです。窒素などで満たしたタンクなら、指針では速度の制限はありません。

精密ろ過のフィルターは帯電を大きく増やすので、上流に置きます。タンクまでに緩和距離3vτが取れなければ、配管内に30秒以上とどまるようにします。静置時間は緩和時間の3倍以上が基本で、電荷が初めの約5%に減る時間です。流速を落とせないなら、導電率を上げる方法もあります。添加量の目安は帯電防止剤で1〜5 ppm、アルコールやケトンで20 vol%程度です。ただし、キシレンにケトンを加えると引火点が下がります。

作業者の帯電対策(静電靴・床・作業服)

人は静電気の上では導体で、帯電すると火花放電を起こします。人の静電容量は100〜300 pFで、ドラム缶と同じ桁です。帯電電位を100 Vに抑えれば、200 pFでも放電エネルギーは0.001 mJです。水素のMIE 0.016 mJも下回ります。

人体の漏洩抵抗はおもに靴と床の抵抗の和で、合わせて10⁸ Ω以下にします。下限は10⁵ Ωで、400 V以下の配線に触れたときの感電を防ぐ値です。靴の目安は10⁵〜10⁸ Ωです。指針は、JIS T 8103(静電気帯電防止靴)の適合品ならよいとしています(当時のJISの上限は10⁹ Ωで、版で違う)。同じJISの導電靴は交流100 V以下の電路でも感電の危険があり、使える作業が限られます。そのほかの注意点は次の4つです。

  • 床は10⁸ Ω以下にし、乾燥する季節を含めて年1回以上は測る。掃除に絶縁性のワックスは使わない
  • 作業服はJIS T 8118(静電気帯電防止作業服)の適合品を、ボタンやファスナーを留めて着る。危険場所では脱ぎ着しない
  • 座ったままの作業は、リストストラップで接地してもよい
  • 水素のようなIICのガスがあるゾーン0・1では、人体の漏洩抵抗を10⁶ Ω以下にする。指針は、そもそも人が作業すべきでない場所としている

可燃性の液への粉体投入とフレコン

可燃性の溶剤が入った槽への粉体投入は、指針が容器まわりで災害が最も多いとする作業です。槽を窒素で置換していても、投入口から粉体と一緒に空気が入ります。指針の主な対策は次の5つです。

  • 直接は入れず、接地した導電性のシュート(長さ3 m以内)か、ロータリーバルブ付きのホッパーを通す
  • 内袋やコートのない紙袋は、シュートやホッパーに触れさせて電位差をなくす
  • 人が入れるときは、1回25 kg以下ずつゆっくり入れる
  • 袋を振って残った粉を落とさない。ブラシ放電の原因になる
  • フレキシブルコンテナ(フレコン)からは、ホッパーとロータリーバルブを通して入れる

使えるフレコンの型は、周りの可燃物のMIEで決まります。

周りの状況 使えるフレコン(IEC 61340-4-4のタイプ)
MIE 0.14 mJ以下のガス・蒸気がある どの型も使えない
MIE 0.14 mJを超えるガス・蒸気がある。またはMIE 3 mJ以下の可燃性粉体を扱う 帯電防止型(タイプC・D)だけ
ガス・蒸気はなく、MIE 3 mJを超える可燃性粉体を扱う 帯電防止型か沿面放電防止型(タイプB)
ガス・蒸気がなく、粉体も燃えない 制限なし

メタノールのMIE(0.14 mJ)はちょうどこの境目で、指針とIEC 61340-4-4:2018で扱いが分かれる値です。帯電防止型でも、周り1 m以内の導体と人は接地します。絶縁性の内袋を重ねると、型の性能が保たれないおそれがあります。

法令で求められる静電気対策

数値まで決めた条文には、タンクローリーでガソリンと灯油・軽油を入れ替えて注入するときの1 m/s以下があります。

法令 条文 要点
労働安全衛生規則 第287条 危険物をタンク自動車・ドラム缶などに注入する設備、可燃性の粉のスパウト移送・ふるい分けの設備、化学設備(配管を除く)などで静電気による爆発・火災のおそれがあるときは、接地・除電剤・加湿・点火源となるおそれのない除電装置などで静電気を除く
労働安全衛生規則 第286条の2 第280〜282条の爆発の危険がある箇所・場所で作業させるときは、静電気帯電防止作業服と静電気帯電防止用作業靴を着用させるなどの措置をとる
危険物の規制に関する政令 第9条第1項第18号(第19条第1項で一般取扱所に準用) 製造所で静電気が発生するおそれのある設備に、たまる静電気を有効に除く装置を設ける
危険物の規制に関する政令 第15条第1項第14号・第16号 ガソリン・ベンゼンなど静電気の災害のおそれがある液体の移動貯蔵タンク(タンクローリーなど)に接地導線を設ける。計量棒で量るタンクには、計量時の静電気の災害を防ぐ装置を設ける
危険物の規制に関する政令 第27条第6項第4号ハ・ホ・ヘ 同じ液体を移動貯蔵タンクに入れる・出すときはタンクを接地する。上から入れるときは注入管の先を底に着ける。ガソリンと灯油・軽油を入れ替えて注入するときは、静電気などの災害を防ぐ措置をとる
危険物の規制に関する規則 第40条の7 上の入れ替え注入は、液面が注入管の先(底から入れるときは底弁の頂部)を超えるまで1 m/s以下。ほかの方法では、可燃性の蒸気が残っていないことを確かめてから入れる
一般高圧ガス保安規則 第6条第1項第38号 定置式製造設備の基準として、可燃性ガスと特定不活性ガスの製造設備に静電気を除く措置を講じる

表は条文の要点です。法令の要求は、所轄の行政機関と最新の条文で確かめる必要があります。

参考資料

  1. 労働安全衛生総合研究所「静電気安全指針2007」JNIOSH-TR-No.42(2007年)
  2. 労働安全衛生規則 第280条〜第282条・第286条の2・第287条(e-Gov法令検索)
  3. 危険物の規制に関する政令 第9条第1項第18号・第15条第1項第14号・第16号・第19条第1項・第27条第6項第4号(e-Gov法令検索)
  4. 危険物の規制に関する規則 第40条の7(e-Gov法令検索)
  5. 一般高圧ガス保安規則 第6条第1項第38号(e-Gov法令検索)
  6. JIS T 8103:2024「静電気帯電防止靴」、JIS T 8118:2001「静電気帯電防止作業服」、JIS G 3452「配管用炭素鋼鋼管」
  7. IEC 61340-4-4:2018 Electrostatics – Part 4-4: Standard test methods for specific applications – Electrostatic classification of flexible intermediate bulk containers (FIBC)

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