防爆構造の種類と記号の読み方

安全/防爆・静電気防爆・静電気の3本目(全4本)公開

防爆機器の銘板にある「Ex db IIB T4 Gb」のような記号を、1つずつ分解して読めるようにまとめました。ゾーン・防爆構造・ガスのグループ・温度等級の対応は表にしています。国内に残る古い表示(d2G4 など)の読み替えと、型式検定の確かめ方も載せました。

防爆記号「Ex db IIB T4 Gb」の読み方

記号 意味 読むときの要点
Ex IEC 60079 に整合した防爆機器 国内の構造規格による表示(d2G4 など)には付かない
db 防爆構造 d(耐圧防爆)と保護レベル b 保護レベルは a・b・c の順に高い
IIB 機器グループ II(鉱山以外のガス・蒸気)の細分類 B IIC が最も厳しい。IIB の機器は IIA のガスにも使える
T4 温度等級。機器の最高表面温度が135℃以下 発火温度が135℃を超えるガスに使える
Gb 機器保護レベル(EPL)。G はガス用 Gb はゾーン1と2で使える

この機器はゾーン1・2で使え、対象は IIA・IIB で発火温度が135℃を超えるガスです。水素やアセチレン(IIC)の場所には使えません。

この記事の内容
  1. 危険場所のゾーンと機器保護レベル(EPL)の対応
  2. 防爆構造の種類と使える場所
  3. ガス・蒸気のグループ(IIA・IIB・IIC)
  4. 温度等級(T1〜T6)と発火温度
  5. 記号に付く追加の表示
  6. 国内の制度と古い表示(d2G4 など)
  7. 選ぶときに間違えやすい点
  8. 参考資料

危険場所のゾーンと機器保護レベル(EPL)の対応

危険場所は、爆発性雰囲気が生じる頻度と続く時間で3つに分けます。法令(電気機械器具防爆構造規格)では危険箇所、国際整合防爆指針ではゾーンと呼びます。

ゾーン 爆発性雰囲気の状態 法令の呼び方 使える EPL 場所の例
ゾーン0 連続して、または長時間・頻繁に存在する 特別危険箇所 Ga ふたを開けた容器の液面付近、タンク内の液面より上の空間
ゾーン1 通常の運転中にときどき生じる 第1類危険箇所 Ga・Gb ドラム缶の充填口、安全弁やタンク通気管の開口部付近、蒸気がたまるピット
ゾーン2 通常は生じない。生じても短時間 第2類危険箇所 Ga・Gb・Gc パッキンの劣化で漏れるおそれのあるフランジ、強制換気が止まると蒸気が滞留する場所

EPL は機器が点火源になりにくい度合いを示す記号です。Ga は稀な故障が起きても、Gb は想定される故障が起きても点火源になりません。Gc は通常の運転で点火源にならず、よくある不具合(ランプ切れなど)に備えた追加の保護を持つ機器です。粉じんの場所はゾーン20・21・22 に分け、EPL の Da・Db・Dc が同じように対応します。

防爆構造の種類と使える場所

防爆構造は「点火源を隔てる」「安全度を増す」「点火のエネルギーを抑える」の3つの考え方に分かれます。記号の後ろの a・b・c が保護レベルで、EPL の Ga・Gb・Gc に対応します。

防爆構造(記号) 原理 保護レベル(EPL)と使えるゾーン 主な機器の例
耐圧防爆(d) 中で爆発しても容器が耐え、接合部のすき間から外へ火炎を出さない db(Gb):1・2/dc(Gc):2 モーター、押しボタン・スイッチ、照明、接続箱
内圧防爆(p) 容器に保護ガスを送って外より高い圧力に保ち、外のガスを入れない pxb・pyb(Gb):1・2/pzc(Gc):2 リレーや計器をまとめて収めた制御盤
安全増防爆(e) 通常は火花が出ない機器に、過熱や火花を防ぐ追加の対策(温度上昇の制限・絶縁距離)を施す eb(Gb):1・2/ec(Gc):2 かご形モーター、端子箱、照明
本質安全防爆(i) 回路の電気エネルギーを、火花や熱で着火しない大きさに抑える ia(Ga):0・1・2/ib(Gb):1・2/ic(Gc):2 センサー、低電力の電磁弁
油入防爆(o) 火花が出る部分を保護液に浸す ob(Gb):1・2/oc(Gc):2 保護液の中で動く開閉器
樹脂充塡防爆(m) 着火しうる部分を樹脂の中に完全に封じる ma(Ga):0・1・2/mb(Gb):1・2/mc(Gc):2 電磁弁のコイル
非点火防爆(n) 通常の運転と通常予期される事象で点火しない nC・nR(Gc):2(旧 nA は ec) ゾーン2専用の機器(指針の表示例は照明器具)
砂詰防爆(q) 着火しうる部分を固定し、石英やガラスの粒で囲む IEC では Gb(国内は特殊防爆構造として審査する道がある) 16 A・1,000 V・1,000 W 以下の電子回路やリレー

ゾーン0に使えるのは保護レベル a の機器(ia・ma・da)です。耐圧の da は、可搬形ガス検知器の触媒センサーだけに認められています。モーターは本質安全と油入にはできず、国内メーカーのカタログでは耐圧と安全増が並びます。Ex db eb のように2つ並ぶ表示は、本体が耐圧で端子箱が安全増といった機器のものです。q は IEC 60079-5 の構造です。TIISは、IECEx認証を持つ砂詰防爆機器を国内の特殊防爆構造として受け付け、該当するIEC規格で審査します。IECEx認証だけで国内の検定に代えることはできません。

ガス・蒸気のグループ(IIA・IIB・IIC)

グループ II は、ガスの最大安全すき間(MESG)と最小点火電流比で3つに分けます。MESG は奥行き25 mm の接合部で、爆発の火炎が外へ伝わらない最大のすき間です。

グループ 代表ガス 最大安全すき間(MESG) 最小点火電流比(メタン=1) 使える機器の表示
IIA プロパン 0.9 mm 以上 0.8 を超える IIA・IIB・IIC
IIB エチレン 0.5 mm を超え0.9 mm 未満 0.45 以上0.8 以下 IIB・IIC
IIC 水素、アセチレン 0.5 mm 以下 0.45 未満 IIC

すき間が狭くても火炎が抜けるガスほど厳しく、IIC が最上位です。IIC の機器は IIA・IIB の場所にも使えますが、IIB の機器は水素の場所に使えません。IIB + H2 のように特定のガスを足した表示もあります。耐圧はすき間の寸法、本質安全は火花のエネルギーの許容値がこの区分ごとに決まります。以前の安全増や内圧の表示は、Ex e II T3 のように II だけでした。

温度等級(T1〜T6)と発火温度

温度等級は機器の表面が達する最高温度の上限です。ガスの発火温度がその上限より高ければ使えます。

温度等級 機器の最高表面温度 使えるガスの発火温度 ガスの例(グループ・発火温度)
T1 450℃以下 450℃を超える 水素(IIC・560℃)、メタン(IIA・537℃)、アセトン(IIA・535℃)
T2 300℃以下 300℃を超える エチレン(IIB・425℃)、エタノール(IIA・425℃)、アセチレン(IIC・305℃)
T3 200℃以下 200℃を超える ヘキサン(IIA・233℃)
T4 135℃以下 135℃を超える アセトアルデヒド(IIA・140℃)
T5 100℃以下 100℃を超える –
T6 85℃以下 85℃を超える –

数字が大きいほど機器の表面温度が低く、使えるガスの範囲は広がります。T6 の機器なら T1〜T5 のガスにも使用可能です。逆に T3 の機器は表面が200℃まで上がるので、発火温度140℃のアセトアルデヒドには使えません。機器の T4 は「表面が135℃を超えない」という意味で、135℃まで耐えるという意味ではありません。ガスの表に T4 とあれば、T4〜T6 の機器が要ります。

表の発火温度は日立産機システムのカタログの値で、資料によって差があります。二硫化炭素はその表で102℃(T5)です。Pepperl+Fuchs の資料は95℃、厚生労働省のモデルSDS は90℃で、どちらも T6 の範囲です。境目に近い物質は、どの資料の値かを確かめてから等級を選びます。

温度等級の前提は周囲温度 −20〜+40℃ です。範囲を外れる機器は、Ta(Tamb)と温度の範囲か記号 X の表示になります。加熱した配管や容器に付ける計器では、プロセスの熱も表面温度を押し上げる要因です。外部熱源の条件は、認証書と取扱説明書の記載で確かめる必要があります。

記号に付く追加の表示

基本の5つの記号のほかに、銘板や認証番号に次のような表示が付くことがあります。

表示の例 意味
Ex db eb IIB T3 Gb 2つの防爆構造を組み合わせた機器
Ex db [ia Ga] IIC T4 Gb 耐圧の容器の中に本安関連機器(例:シャントダイオード安全保持器)を持つ
[Ex ia Ga] IIC 危険場所に置けない本安関連機器(制御室側のバリアなど)。温度等級は付かない
Ex ia/db IIC T6 Ga/Gb ゾーン0とそれより危険でない場所の境(容器の壁)に取り付ける機器
IIB + H2 IIB に加えて水素の中でも使える
Ex db (NH3) Gb 特定のガス(この例はアンモニア)の中だけで使う
−30℃ ≤ Ta ≤ +40℃ 周囲温度の範囲が標準(−20〜+40℃)と違う
認証番号の末尾の X 特別な使用条件がある。合格証と取扱説明書で条件を確かめる
認証番号の末尾の U Ex コンポーネント(部品)。単体では機器として使えない

国内の制度と古い表示(d2G4 など)

型式検定と2つの基準

国内で危険箇所に置く電気機器は、型式検定に合格して合格標章が付いたものに限られます。根拠は労働安全衛生法第44条の2と労働安全衛生規則第280条です。検定の基準は2系統あります。電気機械器具防爆構造規格に直結する防爆指針と、IEC 60079 に整合した国際整合防爆指針です。構造規格による機器も今なお広く使われ、銘板の書き方が違います。

文書 役割 表示の例
労働安全衛生法・同施行令・労働安全衛生規則 防爆構造電気機械器具の型式検定(法第44条の2、令第14条の2)と、危険箇所ではガスの種類と危険のおそれに応じた防爆性能の機器を使う義務(規則第280条) –
電気機械器具防爆構造規格(昭和44年労働省告示第16号) 国の規格。第5条で、IEC 規格などに基づき同等以上の防爆性能を確かめた機器も適合とみなす –
工場電気設備防爆指針(ガス蒸気防爆2006) 構造規格による検定の基準 d2G4、eG3
工場電気設備防爆指針(国際整合技術指針、JNIOSH-TR-46) IEC 60079 による検定の基準。2015年版から EPL を表示 Ex db IIB T4 Gb
ユーザーのための工場防爆設備ガイド(JNIOSH-TR-No.44) 使う側の手引き。危険箇所の分類にも使える –

構造規格の表示の読み方

構造規格の表示は、防爆構造・爆発等級・発火度の順に並びます。d2G4 は耐圧防爆で、爆発等級1・2と発火度 G1〜G4 のガスに使える機器です。

項目 構造規格の表示 国際整合の表示
例 d2G4、eG3 Ex db IIB T4 Gb
先頭の記号 なし Ex
防爆構造 d・f(内圧)・e・o・ia/ib・ma/mb・n・s d・p・e・o・i・m に保護レベル(a・b・c)を付ける。n は nC・nR(旧 nA は ec)
ガスの区分 爆発等級1・2・3(3a=水素と水性ガス、3b=二硫化炭素、3c=アセチレン、3n=等級3のすべて) グループ IIA・IIB・IIC
温度 発火度 G1〜G5(ガスの発火温度の区分) 温度等級 T1〜T6(機器の最高表面温度)
使える場所 表示されない。合格証の内容で判断する EPL(Ga・Gb・Gc)で表示する
特別な条件 使用条件の要点を表示 記号 X

爆発等級とグループは、試験容器の大きさ(8,000 cm³ と 20 cm³)も境目の値も違います。そのため1対1には対応しません。シアン化水素は爆発等級1ですが、グループでは IIB です。温度の決め方も違います。発火度は機器の許容温度を発火温度の下限の80%とし、G4 なら110℃です。温度等級は表示の温度そのものが上限で、T4 なら135℃です。型式試験では、測定値が表示より5 K 以上低いことを確かめます。発火温度85〜100℃に当たる発火度は構造規格に無く、T6 に相当する旧表示もありません。メーカーのカタログに G6 が見えることがありますが、検定の基準には無い区分です(安衛研の研究報告の表4)。

3a・3b・3c は特定のガスを指す記号で、互いの代わりになりません。例えば 3a(水素)の機器は、アセチレン(3c)の場所には使えません。爆発等級3のすべてに使えるのは 3n の機器です。国際整合の表示も版で変わりました。EPL の無い Ex d IIB T4 は2008年版以前の書き方です。2015年版で Ex d IIB T4 Gb、2018年版以降は Ex db IIB T4 Gb になりました。古い表示の機器も、合格した型式なら引き続き使えます。

選ぶときに間違えやすい点

  • ゾーンは設備ごとの評価で決まります。 安衛則第280条は、ガスの種類と「爆発の危険のある濃度に達するおそれ」に応じた防爆性能を求めています。分類の方法は JIS C 60079-10 か、安衛研の「ユーザーのための工場防爆設備ガイド」です。放出源の頻度や換気の効き方によって、同じ物質でも範囲が変わります。
  • 本質安全防爆には、電池を内蔵して単独で使う認証機器もあります。例えば理研計器のGP-03は、乾電池または充電池で動く本安のガス検知器です。外部機器と接続する場合は、本安機器・バリア(本安関連機器)・配線を組み合わせて、合格した接続条件を確かめます。接続と配線の注意点は本質安全防爆とリレーバリアで解説しています。
  • 型式検定の合格標章を確かめます。 IECEx や ATEX の表示だけでは国内で使えません(例は防爆の協働ロボットの記事)。IECEx の試験報告書(ExTR)は検定の審査に使えますが、型式検定そのものは省けません。
  • 安全増防爆は、表示によって使えるゾーンが違います。安衛研の研究報告(大塚ほか、2018年)では、構造規格の安全増はゾーン2に限る合格証とされています。日立のカタログの選定表も、旧規格の安全増を1種場所では「なるべく避けたいもの」としています。国際整合の eb はゾーン1でも使えます。モーターの構造の違いはモーターの安全増防爆と耐圧防爆の違いで扱っています。
  • エアーパージは内圧防爆の代わりになりません。腐食性ガスを防ぐために清浄な空気を送るだけの盤には、内圧が下がったときの保護装置がありません(宮木電機の技術資料)。そのため爆発性ガスの場所には使えません。内圧防爆では、pxb・pyb が外より50 Pa 以上、pzc が25 Pa 以上の圧力を保ちます。
  • ごく小さな電力の機器は対象外です。 定格が1.5 V・0.1 A・25 mW 以下の機器には、安衛則第280条〜第282条が適用されません(2021年の厚生労働省の通達)。ほかの機器につないでこの値を超えるおそれがあれば、対象に戻ります。

参考資料

  1. 労働安全衛生総合研究所「工場電気設備防爆指針(国際整合技術指針 2020)第1編 総則」JNIOSH-TR-46-1:2020(対応国際規格 IEC 60079-0:2017)
  2. 同「第2編 耐圧防爆構造“d”」JNIOSH-TR-46-2:2018、「第3編 内圧防爆構造“p”」JNIOSH-TR-46-3:2018、「第4編 油入防爆構造“o”」JNIOSH-TR-46-4:2018、「第5編 安全増防爆構造“e”」JNIOSH-TR-46-5:2018
  3. 同「第6編 本質安全防爆構造“i”」JNIOSH-TR-46-6:2015(2025年版も公開。検定で使える版は厚生労働省の通達で決まる)、「第7編 樹脂充塡防爆構造“m”」JNIOSH-TR-46-7:2018、「第8編 非点火防爆構造“n”」JNIOSH-TR-46-8:2020
  4. 厚生労働省労働基準局長通達 基発0812第5号(2021年8月12日)「電気機械器具防爆構造規格第5条の規定に基づき、防爆構造規格に適合するものと同等以上の防爆性能を有することを確認するための基準等について」
  5. 厚生労働省 基安発0218第1号(2021年2月18日)「引火性の物の蒸気又はガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所の分類の方法及び範囲の判定の方法に関する運用について」
  6. 労働安全衛生法 第42条・第44条の2、労働安全衛生法施行令 第14条の2、労働安全衛生規則 第27条・第280条、機械等検定規則 第14条
  7. 電気機械器具防爆構造規格(昭和44年労働省告示第16号)
  8. 大塚輝人ほか「防爆構造電気機器器具に関する国際電気標準会議(IEC)規格に関する調査研究」厚生労働科学研究費補助金 平成29年度総括研究報告書(2018年)
  9. IEC 60079-5:2015 Explosive atmospheres – Part 5: Equipment protection by powder filling "q"
  10. JIS C 60079-0:2010「爆発性雰囲気-第0部:電気機器-一般要件」、JIS C 60079-10:2008「爆発性雰囲気で使用する電気機械器具-第10部:危険区域の分類」、JIS C 60079-14:2008「爆発性雰囲気で使用する電気機械器具-第14部:危険区域内の電気設備(鉱山以外)」
  11. さいたま市「危険物規制事務に関する審査基準」別記第11 電気設備の基準
  12. 日立産機システム「日立防爆型モータ」カタログ SM-443Y(2019年)
  13. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「GHS対応モデルラベル・モデルSDS情報」二硫化炭素
  14. ニデック「防爆モータ概要」、パナソニック「特殊環境用照明設備:防爆器具」、宮木電機「防爆シリーズ・総合カタログ」
  15. Pepperl+Fuchs「防爆基礎概要 技術・理論と考え方」