ポンプの種類と選び方

機械/ポンプポンプの4本目(全4本)公開

ポンプの形式は液の性状と流量・揚程、それに漏れの許容で決まります。渦巻・容積式・シールレスなど主なポンプを、条件から引ける早見表にしました。選ぶ順番と、選び違えたときに現場で起きるトラブルも載せています。

液と運転の条件から選ぶ早見表

液と運転の条件 まず考える形式 あわせて決めること
水に近い清澄な液を送る 渦巻ポンプ(単段) 流量は吐出し弁か回転数で調節する
単段では揚程が足りない 多段渦巻ポンプ 段数が増えるほど構造が複雑になる
ポンプを液面より上に置き、呼び水の手間を減らしたい 自吸式ポンプ 最初の運転ではポンプ内を液で満たす
決まった量を少しずつ注入する ダイヤフラム・プランジャなどの往復ポンプ 脈動の対策と逃し弁
粘度が高い(燃料油・潤滑油など) ギヤ・ねじなどの回転ポンプ 逃し弁と、固形物による摩耗
流量が小さく吐出し圧力が高い プランジャポンプ 逃し弁と脈動の対策
毒性・引火性・高価で漏れが許されない マグネットポンプ・キャンドモータポンプ、またはダブルメカニカルシール 空運転を防ぐ手段と、液に固形物が無いこと
スラリーを含む 摩耗に強いスラリー用の渦巻ポンプ(高濃度のスラリーや大きく硬い粒には一軸ねじポンプ・ホースポンプも) 羽根車の形と材料、軸封のフラッシング
沸点に近い液・液化ガス ポンプを液面より下に置く渦巻ポンプ(キャンドなら循環の形を選ぶ) NPSHの余裕と、締切運転をさせないこと

出典は資料1・2(1〜3行目)/資料1・2・5・6(4〜6行目)/資料1・3・6〜8(7行目)/資料1・3・6(8行目)/資料1・3・7(9行目)です。

ポンプを選ぶ順番

  1. 液の性状を集めます。液名・濃度・温度のほか、密度・粘度・蒸気圧・腐食性・スラリーの有無・毒性や引火性を調べます。
  2. 流量(定格・最大・最小)と全揚程を決めます。
  3. 流量・揚程・粘度から、渦巻ポンプか容積式ポンプかを決めます。
  4. 漏れをどこまで許すかで、軸封の形かシールレスかを決めます。
  5. 接液部の材質と、ポンプの設計規格を決めます。
  6. 流量の調節方法と、逃し弁・空運転防止などの保護を決めます。
  7. NPSH(吸込み口の圧力が蒸気圧を上回る分を液柱の高さで表した値)と軸動力を確かめ、仕様書にまとめてメーカーに出します。
この記事の内容
  1. ポンプの種類と特徴の一覧
  2. 漏れの許容で軸封とシールレスを選ぶ
  3. 粘度の高い液と渦巻ポンプの性能
  4. 容積式は吐出し側を閉じると圧力が上がり続ける
  5. マグネットポンプの空運転と脱調
  6. ダイヤフラムポンプの脈動と配管
  7. 液の性状で変わる注意点
  8. 台数と設計規格も先に決める
  9. 参考資料

ポンプの種類と特徴の一覧

押し出すしくみで分けると、ポンプは主にターボ形と容積式になります。ターボ形の代表が渦巻ポンプで、揚程が上がるほど流量が減ります。運転する流量は、配管の抵抗とつり合う点で決まるのが特徴です。容積式は吸い込む容積が決まっているので、吐出し圧力によらず流量がほぼ一定です。送液のしくみはポンプの役割と送液原理で扱いました。

種類 液を押し出すしくみ 流量・揚程の段階 向く液・用途 弱いところ
渦巻ポンプ(単段) 回る羽根車で液に勢いを与える 流量 小〜大、揚程 低〜中 水をはじめ各種の清澄な液 粘度が高いと性能が落ちる
多段渦巻ポンプ 羽根車を2〜16段つなぐ 流量 小〜中、揚程 中〜高 揚程の高い送液 段数が増えるほど構造が複雑
自吸式ポンプ 呼び水とフート弁(吸込み管の先でポンプ内の液を保つ弁)なしで吸い上げる渦巻ポンプ (渦巻ポンプの一種) 液面より上に置くポンプ 最初の運転はポンプ内を満水にする
回転ポンプ(ギヤ・ねじ・ベーン) 歯車やねじとケーシングの間の容積を送る 流量 小〜中、揚程 中〜高 燃料油・潤滑油など粘度の高い液 硬い粒で摩耗する。締め切ると圧力が上がる
ダイヤフラムポンプ(モーター・電磁駆動) 膜の往復でポンプ室の容積を変え、弁で流れの向きをそろえる 流量 小、揚程 低〜中 薬液の注入(定量ポンプ) 脈動。大きく硬い粒が弁にかむ
ダイヤフラムポンプ(エア駆動) 圧縮空気で2枚の膜を往復させ、2つのポンプ室で吸込みと吐出しを交互に行う 空気の圧力で流量を調節する 火花を避けたい場所での移送、スラリー 排気音が大きい。動力の効率は電動より低い
プランジャポンプ プランジャの往復で押し出す 流量 小、揚程 高 高い圧力での注入 脈動。締め切ると圧力が上がる

出典は資料1〜3・5・6・9です。

形式ごとの範囲は、化学工学便覧の選定範囲の図(図5·66)から読めます。遠心式は流量がおよそ3〜15,000 m³/h、揚程が数 mから2,000 m余りです。往復式は100 m³/h以下で、揚程は数千 mまで届きます。回転式は1,000 m³/h以下で、揚程は500 m程度までです。この図は概略の範囲として示されたものです。往復ポンプは高揚程・小流量に向き、回転ポンプは中揚程・中流量に向きます。遠心ポンプは往復式より効率が低くても、構造が簡単で軽く安価なため広く使われています。

漏れの許容で軸封とシールレスを選ぶ

回る主軸がケーシングを貫くポンプでは、貫く部分に軸封を設けます。どこまで漏れるかは軸封の形で決まり、その形は購入者が指定するものです。メカニカルシールとシールレスポンプの構造はポンプに重要なメカニカルシールの基礎知識で説明しています。

方式 しくみ 向く場面 注意すること
グランドパッキン 軸の周りに詰めたパッキンを押さえる。漏れは連続して滴る程度に保つ 水など、漏れても危険でない液 締め付けがゆるいと漏れが多く、強いと発熱する
メカニカルシール(シングル) 回転する環と固定した環の摺動面でシールする 一般の液 摺動面の冷却と潤滑にフラッシング液(軸封部へ送り込む液)が要る
ダブルメカニカルシール シールを2組にし、外から清浄な液を軸封部より高い圧力で入れる 漏れると危険な液 停止中もフラッシング液を流す
マグネット駆動 磁石の力で羽根車を回し、軸の貫通部をなくす 漏れては困る薬液 空運転・脱調・スラリーに弱い
キャンドモータポンプ モーターとポンプを一つの容器に収め、軸封をなくす 毒性・引火性の液、液化ガス 送る液で軸受を潤滑し、モーターを冷やす

出典は資料2・3・6〜8です。

マグネットポンプとキャンドモータポンプには軸封が無く、軸封からの漏れがありません。便覧は有害な液や高価な液に、キャンドモータポンプを挙げています。外山の本も、液体アンモニア・液化ガス・可燃性の液で特に効果があるとしています。外気を吸い込まないため、真空の系や空気で変質する液にも向くのが利点です。弱点は、軸受を送る液で潤滑・冷却していることです。空運転とスラリーに弱く、液の比重と粘度にも上限があります。小型のマグネットポンプで比重1.1以下・粘度20 mPa·s以下とした例があります(資料8)。キャンドモータポンプでも、標準仕様の粘度の上限を100 cStとする例があります(資料7)。

粘度の高い液と渦巻ポンプの性能

メーカーの性能曲線は、常温の清水で試験した値です。試験の方法はJIS B 8301(ISO 9906)で定められています。動粘度が大きい液では、流量が増えるにつれて全揚程と効率が下がります。軸動力はかならず増え、締切点(流量0)の全揚程だけは変わりません。KSBの資料によると、影響がはっきり出るのは動粘度が20 mm²/sを超えてからです。粘度の高い液ではISO/TR 17766で換算した性能曲線を出してもらい、式のばらつきの分だけモーター出力と全揚程に余裕を見ます。

停止中に液が冷えると粘度が上がり、選定した範囲を超えることがあります。物性表の値が粘度(mPa·s)なら、密度で割った動粘度(mm²/s)にそろえて比べる方が間違いがありません。換算は液体の粘度・動粘度換算(別サイト)でできます。便覧は、往復ポンプと回転ポンプの効率は粘度が上がってもほとんど変わらないとしています。

容積式は吐出し側を閉じると圧力が上がり続ける

渦巻ポンプの圧力は、吐出し弁を閉じても締切揚程までしか上がりません。締切揚程は流量0のときの全揚程です。容積式は吸い込んだ液をかならず押し出すので、出口が閉じると圧力が上がり続けます。逃し弁が無ければ、配管やポンプの破裂かモーターの焼損まで止まりません。

  • ポンプの近くの吐出し側に逃し弁(安全弁)を付け、逃がした液は安全な所へ導きます。モーターにはサーマルリレーなどの過負荷保護も付けます。
  • 流量を吐出し弁や調節弁で絞りません。回転数か、ストロークの長さ・回数で変えます。
  • 調節弁で絞ったダイヤフラムポンプが、吐出し量の減らないまま圧力が上がって壊れた例があります。
  • 起動するときは、吸込み側と吐出し側の弁を両方とも開けておきます。
  • カタログにある最高圧力は、渦巻ポンプの揚程と意味が違います。ポンプにかかる圧力は吐出し側の抵抗で決まり、最高圧力はその上限です。
  • エア駆動のダイヤフラムポンプは、吐出し弁を閉じて止める使い方(先止め)ができるとメーカーの資料にあります。逃し弁が要るかは機種の資料で確かめます。

渦巻ポンプでも締切運転を続けると、入った動力がポンプ内の液を温めます。液化ガスでは蒸気圧が短時間で上がるので、かじりやケーシングの割れにつながり危険です。吐出し弁を閉じて起動したら、ゆるやかに開けていきます。締切り近くの小流量で長く回すなら、オリフィスを入れた戻し配管で液を逃がし続けます。

マグネットポンプの空運転と脱調

マグネットポンプの軸受は、送る液で潤滑と冷却をする構造です。液の無いまま回すと摩擦熱で軸受が傷み、渦巻形のものは短時間で壊れます。温度は数十秒で一気に上がると、イワキの資料は説明しています。タンクを空にしたあとの運転は、空運転そのものです。吸込み弁を閉めたまま、または吐出し側を締め切ったまま回し続ける運転も同じ扱いです。空運転に気づいたら、すぐ止めて自然に冷めるのを待ちます。熱いうちに冷たい液を入れると、ヒートショックでセラミックの部品が割れることがあります。防ぐ手段の一つは、吸込みタンクの低液面でポンプを止めるレベルスイッチです。

脱調は、駆動側と羽根車側の磁石が同期しなくなる現象です。羽根車はほとんど回らず、送液できなくなります。原因は異物による羽根車のロックや、比重・粘度の増加です。急な起動や過大な流量、インバータでの急な増速でも起こります。脱調している間は磁石が渦電流で熱を持ち、くり返すと磁力が弱まっていく点が厄介です。頻繁に脱調するときは、液の比重・粘度と運転のしかたを見直します。

ダイヤフラムポンプの脈動と配管

往復ポンプは吸込みと吐出しを交互にくり返すため、吐出しの流れが脈を打ちます。モーター駆動の1連(単動)の定量ポンプでは、瞬間の最大流量が平均の約3.14倍(π倍)です(資料5)。電磁(ソレノイド)駆動の定量ポンプでは50倍以上になります。配管の圧力損失はこの最大流量で計算し、配管は渦巻ポンプのときより太くします。脈動による振動は、溶接部やねじの継手を傷める原因です。

  • 2連・3連にして吐出しの時期をずらします。2連は180°、3連は120°ずらし、最大流量は平均の約1.57倍・約1.05倍まで下がります(単動の場合の計算値)。
  • 吐出し側にエアチャンバやアキュムレータを付けます。エアチャンバの空気は液に溶けて減るので、補充が要ります。
  • 吐出し側の圧力が低く配管が細く長いと、液の慣性で定格より多く流れることがあります(オーバーフィード)。背圧弁を付けて防ぎます。
  • 大きく硬い粒を含む液では、弁に粒がかんで詰まりやすくなります。

液の性状で変わる注意点

  • スラリーを含む液について、便覧は一般論として往復ポンプと回転ポンプを不適とし、摩耗に注意して遠心ポンプを使うとしています。羽根車はセミオープン形かオープン形にし、硬い材料かゴムを使って回転速度を下げます。軸封部にスラリーが入らないよう、清浄な液を外から送り込みます。その例外として、高濃度のスラリーや脱水ケーキには一軸ねじポンプ、大きく硬い粒にはホースポンプを使う例がメーカーの資料にあります。
  • 揮発しやすい液や液化ガスは、温度が少し変わるだけで蒸気圧が大きく変わり軸封部で気化することがあります。仕様書には運転温度での蒸気圧を書き、軸封部の圧力を上げるかフラッシング液を冷やすかを決めます。空気抜きのしやすい立形ポンプもよく使われます。蒸気圧が高い液ほど、NPSHの余裕も減ります。
  • 腐食性の液とは、ねずみ鋳鉄や炭素鋼が腐食される液を指します。仕様書に腐食する成分を書き、オーステナイト系ステンレス鋼や高合金鋼などから使って問題の無かった材料を指定します。
  • 温水のポンプは80〜100 ℃で軸封部を水冷にし、150 ℃を超えると軸受も水冷にします(資料2)。高温の液で何 ℃から冷やすかは、メーカーによって基準が違います。

台数と設計規格も先に決める

吐出し量の変動が大きいときは複数台に分け、止められない用途には予備機を置きます。渦巻ポンプの作りには、壊れたら取り替える汎用品・修理して長く使う産業用・API 610で作るものの段階があります。どの設計規格(ISO 5199や米国石油協会のAPI 610など)で作るかは、購入者が決める事項です。重要度・運転する年数・価格をもとに選びます。外山の本は、API 610の目安として次の値を紹介しています。どれか1つでも超えるなら、API 610で作ると費用に見合う効果が期待できるという内容です。

項目 API 610で作る目安(資料3)
吐出し圧力(ゲージ圧) 19 bar
吸込み圧力(ゲージ圧) 5 bar
液温 150 ℃
回転速度 3,600 min⁻¹
全揚程 120 m
羽根車の直径(片持ち形だけ) 330 mm

全揚程とNPSHは、ポンプ計算ツール(全揚程・NPSH・軸動力)(別サイト)で確かめられます。

参考資料

  1. 化学工学会 編『改訂六版 化学工学便覧』丸善(1999)5·6·2 液体輸送プランニング設計 pp.330〜332、5·6·4 液体輸送機 pp.336〜337
  2. 高田秋一・堀川武廣『わかる!ポンプの選び方・使い方』オーム社(2000)
  3. 外山幸雄『絵とき「ポンプ」基礎のきそ 選定・運転・保守点検』日刊工業新聞社(2014)
  4. KSB「Viscosity」(Centrifugal Pump Lexicon) https://www.ksb.com/en-global/centrifugal-pump-lexicon/article/viscosity-1117612
  5. タクミナ「精密ポンプ技術」1-1 ダイヤフラムポンプとは?、1-2 よく起こるトラブル、2-2 ピーク流速(流量)の存在、3-1 オーバーフィード現象が原因で起こるトラブル、4-1 エアチャンバーの原理 https://www.tacmina.co.jp/library/basics/231
  6. イワキ「ポンプなるほど」用語編【安全弁】【ポンプの脈動】【ポンプのコントロール】【空運転とヒートショック】【脱調】【スラリー液の移送】【ポンプと粘性液】【ダイヤフラムポンプ】【エアー駆動(空気駆動)ポンプ】 https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/
  7. 帝国電機製作所「キャンドモータポンプとは?」「キャンドモータポンプの製作仕様」 https://www.teikokucp.co.jp/products-top/technical/ 、キャンドモータポンプの製品ページ(循環の方式による形の区分) https://www.teikokucp.co.jp/products/canned/
  8. トーケミ「マグネットポンプ 取扱説明書」(2021年8月改訂) https://www.tohkemy.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/pdf/Manual_Pump_TSN.pdf
  9. ヤマダコーポレーション「エア駆動ダイアフラムポンプ」案内資料(2023年2月) https://partner.yamadacorp.co.jp/flier/docs/DP_SafeTransfer.pdf

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