理想気体の性質と蒸発潜熱に関する次の記述のうち、不適切なものはどれか。
- 気体の粘度は、温度が上がると共に小さくなる。
- 水の蒸発潜熱は、室温から温度が上がると共に小さくなる。
- 気体の熱伝導率は、温度の上昇と共に大きくなる。
- 気体の定圧モル熱容量は、温度のみの関数で表わすことができる。
- 理想気体の温度は、物質量が保たれていれば、温度を変えずに圧力と体積を変えられる。
解答解説
正答は1番です。
液体の場合は温度が上がるにつれて粘度が低下します。温度と粘度の関係は次のアンドレードの式が有名です。対して気体の温度が上がると、分子の運動が活発になる一方で分子間の衝突が増えることから粘度が大きくなります。
アンドレードの式
$$ \ln\eta= \ln A + \frac{E}{RT}$$
η:粘度[Pa・s]、E:流動活性化エネルギー[J/mol]
T:絶対温度[K]、A:比例定数[Pa・s]
R:気体定数=8.314[J/(mol・K)]
2番の潜熱は物体が状態変化するときに必要な熱量です。つまり蒸発潜熱は液体から気体に変化させるときに必要な熱量です。対して物質の状態変化ではなく温度上昇に使用される熱は顕熱と呼ばれます。
水の蒸発潜熱は、温度の上昇とともに減少します。この傾向は、温度が上がるにつれて水分子間の結合が弱くなり、液体から気体への状態変化に必要なエネルギーが減少するためです。同様に、圧力の上昇とともに蒸発潜熱が減少します。高圧下では分子がより密集しており、液体と気体の状態の差が小さくなり、相変化に必要なエネルギー(蒸発潜熱)が減少します。
参考資料
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液体の温度と粘度の関係
www.mohno-dispenser.jp
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気体の熱伝導度と圧力、温度の関係は?
www.i-netschool.com
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気体のモル比熱
zukai-kikenbutu.com
-
各種物質の性質: 気体の性質
www.hakko.co.jp