ここ数年で協働ロボットの高可搬重量ラインナップが増えています。
今回は可搬重量が20kgを超えるような協働ロボットをまとめてみました。
高可搬重量の協働ロボット
各社のロボットを紹介します。
特徴比較 | ファナック | 安川電機 | テックマン | ユニバーサルロボット | Doosan Robotics |
---|---|---|---|---|---|
型番 | CR35iB | HC30PL | TM25S | UR30 | H2515 |
可搬重量 | 35kg (最大50kg) | 30kg | 25kg | 30kg | 25kg |
動作半径 | 1,831mm(35kgモード) 1,643mm(50kgモード) | 1,600mm 1,700mm(27kg以下) | 1,902mm | 1,300mm | 1,500mm |
本体重量 | 386kg | 140kg | 80.6kg | 63.5kg | 72~74kg |
ファナック(CR-35iB)
ファナックのCR-35iBは可搬重量35kgです。
更にソフトウェア上で可動範囲を多少狭めることで可搬質量を35kgから50kgへアップできます。
50kgだけでなく35kgという可搬重量はどの会社も発表しておらず、調べた限りファナックのみにラインナップにあります。
ただし本体重量は386kgと非常に重く、機器の取り扱いに多少注意が要ります。
特にファナックは高可搬重量の発表が早く、他社よりも先を進んでいる印象です。
安川電機(HC30PL)
安川電機のHC30PLは可搬質量30kgです。
ファナックの次に高可搬重量の製品を発表することが多い印象です。
動作半径や可搬重量が段ボールのパレタイジング用途を想定して最適化された仕様になっています。
テックマン(TM25S)
テックマンのTM25Sは可搬重量25kgです。
カメラが標準装備されており、1つのソフト上でビジョンシステムも容易に設定できるのが最大の特徴です。
通常はロボットと別会社のカメラを連携して使いますが、テックマンは技術的な障壁が低く、初心者でも扱いやすい製品です。
また可搬重量に対して動作半径が広いのが特徴的です。
ユニバーサルロボット(UR30)
ユニバーサルロボットのUR30は可搬重量30kgです。
他社製品よりも軽量でコンパクトでありながらも高可搬重量を達成しています。
特にユニバーサルロボットには"ステディモード"という作業に伴う高トルクがかかっても保護機能で停止しないモードが選択できます。
そのため高トルクのねじ締めなどに適しています。
Doosan Robotics(H2515)
Doosan Robotics(ドゥーサンロボティクス)のH2515は可搬重量25kgです。
繰り返し位置精度が0.1mmと、多くが0.05mmですので多少劣っています。
またこれまでは可搬重量に対して本体が軽いことが特徴でした。
ただユニバーサルロボットが高可搬化してきたことにより本体重量の売りも弱くなっています。
導入する際の注意点
協働ロボットですので安全柵は不要です。
とはいえ搬送物の重量が大きくなるため注意しなければなりません。
安全性の確保
前提として、協働ロボットが保証しているのはロボット本体の安全性です。
トータルの安全性はロボットシステムインテグレータと相談しながらユーザーの責任で判断しなければなりません。
極端な例では、ロボットに刃物を持たせると、いくら衝撃で止まると言っても安全ではありません。
今回対象となる重量物の搬送においては、例えばロボットに人がぶつかって止まったとしても、ロボットが重量物を足元に落とす可能性もあります。
人間とロボットの協働エリアの安全対策を十分組み込んだ状態で導入しなければなりません。
”最大”可搬重量である
ハンドの形状によってはワークの位置がロボットのツールフランジ(ハンドとロボットの接続位置)から離れる場合があります。
そのような距離がある場合、可搬重量は減少します。
例えばユニバーサルロボットのUR30はサイトに可搬重量性能が載っています。
ワークの重心位置がツールフランジから100mm離れていても30kgの可搬重量です。
そこから更に離れると400mmで15kg、800mmで10kgの可搬重量へ減少していきます。
経済性
高可搬重量になると、会社の方針によっては安全柵を設けるように言われたり、大量のレーザースキャナーを設けたりする可能性があります。
そもそも協働ロボットは通常の柵を要する産業用ロボットに比べて2~3倍の値段がすることもあります。
協働ロボットのメリットを受けづらい場合は、コスト対効果を考えて通常の産業用ロボットの選択をするのもアリです。
オススメ書籍
・トコトンやさしいロボットの本
ロボットを構成する要素や技術、また活用場所について解説されています。
まずロボットを理解するためにオススメしたい書籍です。
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今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしいロボットの本 第2版
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・産業用ロボット The ビギニング
産業用ロボットに焦点を当てて、種類や構成要素について詳細な解説がされています。
重要となる法令と規則についても勉強になります。
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産業用ロボット The ビギニング
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・産業用ロボット全史
産業用ロボットを扱うにあたり、予備知識として発展の歴史が学べます。
技術的に何が求められ、技術的に発展し、現在に至るのか非常に参考になります。
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産業用ロボット全史 自動化の発展から見る要素技術と生産システムの変遷
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