層流と乱流
撹拌における流体の流れ方は、流速や粘度によって変化します。
流れの種類は大きく層流と乱流に分かれます。
層流
流体が撹拌機の回転方向に流れる状態を層流と呼びます。
例えば回転数が低い時や高粘度流体を扱うときに見られます。
撹拌においては液同士の混ざりが悪く、撹拌不良の原因となります。
そのためバッフル(邪魔板)を取り付けて強制的に流れを変化させることが多々あります。
乱流
撹拌機の回転方向に関係なく、流体の各部分が互いに入り乱れている流れを乱流と呼びます。
例えば回転数が早い時や低粘度流体を扱う時に見られます。
多くの撹拌に関する条件式は乱流域でのみ利用できる制約があります。
撹拌レイノルズ数
撹拌における流体の流れが層流か乱流かどうかはレイノルズ数によって判定できます。
計算式
撹拌レイノルズ数は以下の計算式で求められます。
単位のない無次元数です。
撹拌レイノルズ数
$$ Re=\frac{d\left(nd\right)\rho}{\mu}=\frac{nd^{2}\rho}{\mu}$$Re:撹拌レイノルズ数[-]、n:回転数[1/s]、d:翼径[m]
ρ:密度[kg/m3]、μ:粘度[Pa・s]
式の意味するところ
レイノルズ数は流体の慣性力と粘性力の比を表しています。
分子が慣性力、分母が粘性力を表します。
正確には先に示した計算式は、既に慣性力と粘性力の比から約分して整理した形です。
慣性力と粘性力をかみ砕いて説明すると以下のイメージです。
- 慣性力:流れ続けようとする力(質量×加速度)
- 粘性力:流れを留めようとする力(せん断力×面積)
層流と乱流の判定
おおよそ撹拌レイノルズ数が50以下で層流、1000以上で乱流となります。
つまり層流においては粘性力が、乱流においては慣性力が流れを支配していると考えられます。
更に層流から乱流に変化する過程(50~1000)での流れを遷移流と呼び、その値は槽径と翼径の比(D/d)により異なります。
流れの判定値は書籍によりバラツキはありますが、概ねこのあたりの数値で表現されています。
撹拌レイノルズ数が10000以上では完全乱流域と呼ぶことも多く、いくつかの物性値が一定に保たれスケールアップ時の目安とされます。
配管内におけるレイノルズ数との違い
レイノルズ数の計算は配管内の流れを計算する際に用いられます。
意味は同じですが、撹拌レイノルズ数とで使用する値が異なります。
項目 | 撹拌 | 配管 |
---|---|---|
代表流速 | 回転速度nd[m/s] | 流速u[m/s] |
代表長さ | d:翼径[m] | 配管内径D[m] |
流体の密度 | ρ:密度[kg/m3] | ρ:密度[kg/m3] |
流体の粘性係数 | μ:粘度[Pa・s] | μ:粘度[Pa・s] |
参考資料
・最新ミキシング技術の基礎と応用
撹拌に関する詳細な計算方法が解説されています。
撹拌機の機械的強度の計算など、撹拌装置を設計するためのノウハウが詰め込まれておりオススメです。
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最新ミキシング技術の基礎と応用(化学工学の進歩42)
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・プロセスケミストのための化学工学
化学プロセスの各要素に対する設計方法や注意点が解説されています。
実用的なプロセス設計を勉強したいときにオススメの書籍です。
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プロセスケミストのための化学工学(基礎編)
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・化学工学ー解説と演習ー
化学工学を勉強したい!と思ったら真っ先にオススメしたい書籍です。
他の汎用化学工学書籍には無い「撹拌動力計算」や「撹拌伝熱計算」も記載されています。
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