反応器の種類と設計方程式

化学工学/反応工学反応工学の4本目(全4本)公開

反応器は、運転のしかたと中の流れ方で回分・半回分・連続槽型(CSTR)・管型(PFR)に分けると選びやすくなります。形式ごとの向き不向きを表で比べ、同じ転化率に要る容積を1次反応の設計方程式で計算しました。直列CSTRと除熱、滞留時間分布の注意点も入れています。

反応器の形式ごとの違いと向く場面

形式 運転のしかた 中の濃度と温度 向く場面 気を付けること
回分(バッチ) 原料を全部仕込み、反応が済んだら全体を抜き出す 原料の濃度は時間とともに下がる。温度は槽内でそろい、時間変化は反応熱と加熱・除熱で決まる 液相の反応。少量多品種や品種の切替が多い医薬・ファインケミカル 仕込み・昇温・冷却・抜出し・洗浄の時間と人手。バッチごとの品質の差
半回分(セミバッチ) 一方の原料を先に仕込み、もう一方を連続か間欠で入れる 入れる側の原料の濃度を低く保てる。液量は増えていく(ガスだけを流す場合はほぼ一定) 一度に混ぜると反応が激しすぎる発熱反応。気液反応でガスだけを流す場合 入れた原料が反応せずにたまると、あとでまとめて反応する
連続槽型(CSTR) 撹拌槽に原料を連続で入れ、同じ量を連続で抜く 槽内のどこでも出口と同じ濃度と温度 液相の連続生産。槽内の温度をそろえたい反応 正の次数の反応では、同じ転化率にPFRより大きな容積が要る。滞留時間に分布がある
直列CSTR(多段槽) CSTRを何基か直列につなぐ 原料の濃度は槽ごとに階段状に下がる。温度は反応熱と加熱・除熱で決まる 粘度が上がる重合のように、撹拌しながら押出し流れに近づけたい場合 槽を増やすほど、1基増やす効果は小さくなる
管型(PFR) 管の入口から出口へ押し出すように流す 原料の濃度は入口から出口へ連続して下がる。温度は反応熱と加熱・除熱で決まる 気相の反応や固体触媒を詰めた反応の連続生産 発熱の大きい反応では管の途中に高温部(ホットスポット)ができやすい。層流では押出し流れから外れる

出典:形式と中の状態=化学工学便覧 pp.186〜189、橋本『反応工学』pp.5〜10/向く場面と注意=同、化学工学-解説と演習- p.312、Levenspiel pp.121〜123・128、プロセスケミストのための化学工学 p.48

温度は、反応熱と加熱・除熱の釣り合いによって上昇・低下・一定のいずれにもなります。表の濃度と同じ向きに変わるとは限りません。回分と連続の運転の違いはバッチ式と連続式の違いで扱っています。

この記事の内容
  1. 設計方程式と1次反応の式
  2. 例題:転化率90%に要る容積
  3. CSTRを直列にしたときの容積
  4. 転化率・収率・選択率の定義
  5. 発熱反応の除熱と暴走を防ぐ考え方
  6. 滞留時間分布と理想の流れからのずれ
  7. 参考資料

設計方程式と1次反応の式

反応器の大きさは、成分Aの物質収支から出す設計方程式で決まります。ここでは液相のように反応で密度が変わらない場合を考えます。Aは量論の比より少なく入れる原料(限定反応成分)です。

回分反応器の反応時間[s]

$$t=C_{A0}\int_{0}^{X_{A}}\frac{dX_{A}}{-r_{A}}$$

式は横にスクロールできます

CSTRの空間時間[s]

$$\tau=\frac{V}{q_{0}}=\frac{C_{A0}X_{A}}{-r_{A}}$$

式は横にスクロールできます

PFRの空間時間[s]

$$\tau=\frac{V}{q_{0}}=C_{A0}\int_{0}^{X_{A}}\frac{dX_{A}}{-r_{A}}$$

式は横にスクロールできます

t:反応時間[s]、τ:空間時間[s]、V:反応器の容積(反応液の入る部分)[m³]、q0:原料の体積流量[m³/s]、CA0:Aの入口濃度(回分では仕込んだときの濃度)[mol/m³]、XA:Aの転化率(反応率とも)[−]、−rA:Aの反応速度[mol/(m³·s)]

CSTRの式の−rAは、出口の転化率での反応速度です。τの逆数は空間速度(SV)と呼びます。密度が変わらなければτは平均滞留時間と等しく、気相で物質量が変わる反応などでは一致しません。

1次反応(−rA=kCA)なら、3つの式は次の形に積分できます(化学工学便覧 表3·8・3·9)。

形式 1次反応の式 転化率90%での値
回分 kt=−ln(1−XA) kt=2.30
CSTR kτ=XA/(1−XA) kτ=9.0
PFR kτ=−ln(1−XA) kτ=2.30

回分とPFRは同じ形の式で、回分の反応時間tがPFRの空間時間τに当たります。CSTRだけ値が大きいのは、槽の中が出口と同じ低い濃度で反応するからです。kは温度で変わるので、運転温度での値をアレニウスの式で出して使います。0次・1次・2次の計算は回分反応器の反応時間(別サイト)・CSTR設計(別サイト)・PFR設計(別サイト)のツールでできます。

CA0/(−rA)を転化率に対して描くと、PFRの空間時間は曲線の下の面積です。CSTRは出口の高さの長方形で、反応速度が転化率とともに下がるなら必ず大きくなります。

例外は、生成物が触媒として働く自触媒反応のように進むほど速くなる反応です。速度が最大になる転化率まではCSTRの方が小さく、その先はCSTRの後ろにPFRをつなぐと最小です。可逆反応は平衡転化率より先へ進まないので、表の1次の式は使えません。逆反応を含む速度式で設計方程式を積分します(化学平衡)。

例題:転化率90%に要る容積

例として、液相の1次反応A→Rを運転温度での速度定数k=1.0 h−1で行うとします。原料は2.0 m³/hで、転化率を90%にします。回分は仕込み・昇温・冷却・抜出しに1回2.0時間かかると置きました。

形式 必要な時間 容積 PFRとの比
PFR τ=2.30 h 4.6 m³ 1
回分 反応2.30 h+段取り2.0 h=1回4.30 h 8.6 m³(1回の仕込み量) 1.9
CSTR 1槽 τ=9.0 h 18.0 m³ 3.9
CSTR 2槽直列 1槽あたりτ=2.16 h 8.6 m³(4.3 m³×2基) 1.9
CSTR 3槽直列 1槽あたりτ=1.15 h 6.9 m³(2.3 m³×3基) 1.5

容積は反応液の入る部分の量で、気相部の余裕は含みません。値は上の式から計算しました。

CSTRを1槽で使うと、PFRの3.9倍の容積が要ります。回分は反応時間ならPFRと同じでも、段取りの分だけ大きな釜が必要です。この例の条件では、転化率がおよそ78%より低いと回分の方がCSTRより大きくなります。50%ならCSTRは2.0 m³で、段取りを含む回分は5.4 m³です。

CSTRとPFRの差は、転化率と反応の次数が高いほど開きます。

転化率とCSTR/PFRの容積の比

転化率 0次反応 1次反応 2次反応
50% 1.0 1.4 2.0
90% 1.0 3.9 10
99% 1.0 21.5 100

出典:化学工学便覧 表3·8・3·9の式から計算(2次は−rA=kCA2の場合)

CSTRを直列にしたときの容積

同じ大きさのN槽を直列にしたCSTRでは、1次反応の出口の転化率を次の式で出せます(化学工学便覧 式3·144)。

N槽直列のCSTRの転化率(同じ大きさの槽・1次反応)[−]

$$1-X_{A}=\frac{1}{(1+k\tau_{i})^{N}}$$

式は横にスクロールできます

N:槽の数[−]、τi:1槽あたりの空間時間[h]、k:速度定数[h−1]

槽の数N 転化率90%での合計の容積(PFR=1、計算値) 転化率99%での合計の容積(PFR=1、計算値)
1 3.91 21.5
2 1.88 3.91
3 1.50 2.37
4 1.35 1.88
5 1.27 1.64
10 1.12 1.27

2槽に分けるだけで、転化率90%の合計の容積は1槽の半分以下です。槽を増やすほどPFRに近づきますが、1基ごとの効果は小さくなります。2次反応を転化率70%まで進める例でも、3槽に分けると1槽の約60%で済みます(化学工学便覧 pp.204〜205)。粘度が上がる重合は、管型が使いにくい反応です。ポリスチレンの塊状重合では、4〜6基の槽を直列に並べます(同 p.188)。

転化率・収率・選択率の定義

Aを原料の中の限定反応成分、Rを目的の生成物、Sを副生成物とします。

指標 定義 例(例として置いた値)
転化率(反応率)XA 反応したAの量÷供給したAの量 0.90
選択率 SR Rに変わったAの量÷反応したAの量 0.80
収率 YR Rに変わったAの量÷供給したAの量 0.90×0.80=0.72

収率は転化率と選択率の積です。どの値も「Aの量」にそろえて数えます。A 1 molからRが2 molできる反応なら、Rの物質量を2で割ります。収率と選択率の定義は資料によって統一されていません。値を比べる前に、分母が供給した量か反応した量かを確かめます。

選択率も形式しだいです。目的のRがさらに反応する逐次反応(A→R→S)では、回分かPFRの方がCSTRよりRの選択率が高くなります。並列反応(A→RとA→S)で目的の反応の次数が副反応より高いときも、Aの濃度を高く保てる回分かPFRが有利です。次数が低ければCSTRが向きます。

発熱反応の除熱と暴走を防ぐ考え方

反応器の温度は、反応の発熱と除熱の釣り合いで決まります。例として活性化エネルギー80 kJ/molの反応では、80 ℃から90 ℃で速度定数が約2.1倍です(アレニウスの式で計算)。除熱が追いつかないと、温度の上昇がさらに発熱を増やします。

温度が一定なら、回分の正の次数の反応は仕込んだ直後に発熱が最大になります。半回分は、この発熱を滴下の速さで冷却の能力に合わせる操作です。温度が上がれば供給を止めて上昇を防げます。ただし滴下が反応より速いと、入れた原料が反応せずにたまります。撹拌の不良や反応温度が不適切なとき、触媒の不足でも同じです。たまった原料があとで一度に反応すると暴走につながります。

CSTRの定常運転点は、物質収支を満たす発熱速度の曲線と除熱の直線の交点です。交点が3つあるとき、高温側は転化率を高くできる運転点の候補です。ただし、交点の位置や熱収支の傾きだけでは安定性は決まりません。物質収支と熱収支を連立し、濃度と温度の小さなずれが減衰することを確かめてから選びます。

管型の弱点は除熱です。管壁からの伝熱が小さく、発熱の大きい反応では管の途中に高温部ができやすくなります。触媒を詰めた固定層で発熱の強い反応は、温度の制御が難しく暴走のおそれがあります。対策の一つは、直径2〜5 cm程度の管に触媒を詰めて並べる多管式です(化学工学便覧 p.189)。触媒層を分けて間で冷やす多段断熱式も使われます。

釜を大きくすると、液量あたりの伝熱面積は減ります。形が同じなら、容積は長さの3乗に比例し伝熱面積は2乗に比例するからです(伊藤『プロセス開発を楽しもう』p.97)。同じ形のまま容量を10倍にすると、伝熱面積は4.6倍にしかなりません。液量あたりでは0.46倍、50倍なら0.27倍です(容量の2/3乗で計算)。実験室で冷やせた反応でも、実機ではジャケットの能力が足りなくなりえます(スケールアップの基礎)。反応の条件や規模を変える前には、反応熱量計などによる危険性の評価が要ります。

滞留時間分布と理想の流れからのずれ

PFRではすべての流体が同じ時間だけとどまり、CSTRでは早く出る流体と長く残る流体が混ざります。ある時刻に完全混合の槽へ入った流体のうち、時間tまでに出ていく割合Fは次の式です。

完全混合の槽の滞留時間分布[−]

$$F=1-\exp\left(-\frac{t}{\bar{t}}\right)$$

式は横にスクロールできます

F:ある時刻に入った流体のうち時間tまでに出た割合[−]、t:入ってからの時間[h]、t̄:平均滞留時間(=V/q0)[h]

平均滞留時間の1/10の間に約1割が出ていき、2倍の時間がたっても約14%が残ります。管内が層流の管型も押出し流れではありません。中心の流体は平均の半分の時間で出口に届くからです(化学工学便覧 図3·15)。

実際の装置の分布は、入口に入れたトレーサー(色素や食塩水など)の出口での濃度の変化から求めます。撹拌翼の選び方や回転数を誤ると、液のよどむ所(デッドゾーン)や入口から出口への近道の流れ(短絡流)ができます。よどみが容積の20%で近道が流量の30%の槽を計算した例では、2次反応の転化率は0.510でした。完全混合なら0.714になる条件です(橋本『反応工学』pp.194〜197)。

参考資料

  1. 化学工学会 編『改訂六版 化学工学便覧』丸善(1999)3·5 反応装置設計の基礎 pp.186〜199、3·7 反応装置の設計・操作 pp.202〜209、3·8 流通反応装置の流体混合 pp.210〜211
  2. 橋本健治『反応工学(改訂増補版)』培風館(2019)pp.5〜10、pp.39〜59、pp.82〜89、pp.98〜99、pp.120〜121、pp.133〜136、pp.194〜197
  3. 化学工学会 監修・多田豊 編『化学工学(改訂第3版)-解説と演習-』朝倉書店(2008)12章 反応工学 pp.307〜319
  4. O. Levenspiel『Chemical Reaction Engineering, 3rd ed.』John Wiley & Sons(1999)pp.121〜128
  5. 日本プロセス化学会 編『プロセスケミストのための化学工学(基礎編)』化学工業日報社(2015)pp.13、18、23、48
  6. 伊藤東『プロセス開発を楽しもう-ビーカーから本プラントへ-』化学工業日報社(2021)p.97

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