プラントにおける5Gの利活用

2023年12月9日

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少しずつプラントにおいても5Gを検証・活用する事例が増えています。

公開されている事例および5G検証サービスについて調べてみました。

特に検証サービスについては、JFEエンジニアリングが検証プラントを設けられるなど導入のハードルが下がっています。



5G技術の概要とプラントへの適用

まずは5Gについて概要を押さえておきます。

5Gの基本特性

5G(第5世代移動通信システム)は、前世代の4G/LTE技術を大きく進化させた高速・大容量、低遅延、多接続の特性を持つ最新の通信技術です。

これらの特徴により、多数のIoTデバイスやセンサーを同時に接続したり、大量のデータを短時間で送受信したりと大きなメリットがあります。

5G環境を構築する方法により大きく3種類に分類されます。

  • パブリック5G:全国的に提供され、高速データ通信、低遅延、多数の端末を同時接続可能
  • ローカル5G:限定されたエリア内で高品質かつ高セキュリティな通信を提供し、外部の影響を受けにくい
  • プライベート5G:キャリアのネットワークを活用し専用環境を構築、無線局免許不要でカスタマイズ可能

日本国内での取り組み

国内においては総務省が主導して「5G活用モデルの創出」と題して実証試験が行われています。

5Gのイメージムービーも公開されています。

市場規模

株式会社矢野経済研究所の調査によると、国内の5Gソリューション市場は2030年度には市場規模が558億円に達すると予測されています。

ローカル5Gとプライベート5Gは用途に応じて使い分けが進む見通しです。

プラントにおける5Gの役割

プラント業界では、5Gの導入によりリアルタイムでデータの高速処理や遠隔制御が可能となり、生産性の向上や安全性の確保が期待されています。

5Gを活用することで、運用の効率化、設備の最適な保守管理、緊急時の迅速な対応が実現します。

中でもプラント敷地内で5G環境を構築する、ローカル5Gが注目されています。

5Gの課題

便利な5Gであるものの以下の課題が挙げられます。

  • コスト:5Gネットワークの構築と維持には高いコストがかかる
  • 周波数の限定性:使用できる周波数帯が限られているため、特定の地域や状況では利用可能な周波数の確保が難しい
  • エリアカバレッジ:高周波数帯を使用するため、ビルや壁などの障害物による影響を受けやすく、エリアカバレッジの確保が課題となる

実証実験と事例研究

ここで5Gに関する検証事例を紹介します。

広島ガス廿日市工場におけるスマート保安実証実験

広島ガスでは、ロボットとAI、そしてローカル5Gを組み合わせた保安業務の高度化を実現する実証実験を行いました。

走行ロボットやAI機能付きエッジコンピューティングサーバーを用いて天然ガスの漏洩を検知します。

分析・処理の結果から得た異常検知情報を、ローカル5Gでリアルタイムで中央制御室に情報を伝送する仕組みを構築しました。

これにより異常の早期把握に繋がります。

AGC千葉工場におけるプライベートLTEネットワーク導入

AGCは千葉工場にプライベートLTEネットワークを導入し、スマートファクトリー化を加速しました。

この取り組みは将来的な5G環境を視野に入れており、2025年を目途に一部のプラントでは5Gへの対応がされるようになります。

また自社で無線ネットワークを構築しているため、通信の安定性やセキュリティの向上に繋がっています。

NECと石坂産業によるLNGプラント実証実験

NECと石坂産業は、石坂産業の再資源化プラントにおいて、ローカル5GとAIを活用したスマートプラントの実現を目指す実証実験を実施しました。

この実証実験では、ローカル5Gの高速・大容量・低遅延の特長を活用しています。

例えば重機の稼働状況や廃棄物の処理量をリアルタイムで可視化し、作業効率の改善やリスクの把握を行いました。

また、重機の遠隔操縦により、効率化と安全な作業環境の実現を検証しました。

企業による5Gサービスの提供と発展

5Gの利用側だけでなく提供側についても紹介します。

活用することで安価な検証や確実な導入準備が進められます。

ソフトバンク「プライベート5G」サービス

ソフトバンクは2023年3月29日から、法人向けの5Gマネージドサービス「プライベート5G」を提供開始しました。

このサービスは、企業や自治体のニーズに合わせたカスタマイズされた5Gネットワークを提供します。

用途に応じて最適なネットワークリソースを割り振ることができ、高品質かつ安全な通信が実現します。

例えば製造業における工場の無線化や遠隔操縦などに利用されます。

JFEエンジニアリング「5G Innovation Plant」

JFEエンジニアリングが提供する5G Innovation Plantは、技術実証のための施設です。

この施設では、5Gの高速・大容量通信、低遅延、多接続の特性を活用し、ドローンや自走ロボット、センサー、カメラなどのデバイスを用いた実験を行います。

ベンチャー企業や研究団体と協力し、先進技術や事業アイデアを共有することで、プラント建設、運営、メンテナンスの分野における革新を目指しています。

これにより、稼働中のプラントと同等の条件下で、新しい価値やサービスの創出が進められます。

横河電機:ローカル5Gの利用による実証実験

横河電機およびパナソニックの関連会社は、2023年9月からローカル5Gの実証実験向けのレンタルパッケージの販売が開始されました。

このレンタルサービスは、ローカル5Gコアおよび基地局を顧客の現場に設置し、高セキュリティな無線ネットワーク環境の構築を支援します。

端末のレンタルやシステム設計におけるコストを抑えつつ、プラントの自動化や遠隔監視などの技術革新を可能にすることが期待されています。

導入検討用は月額265万円からです。

NTT東日本「ローカル5Gスマートファクトリー&ロジスティクスラボ」

NTTはスマートファクトリーソリューションの体験施設である「ローカル5Gスマートファクトリー&ロジスティクスラボ」を開設しました。

こちらはショールームおよび開発検証施設という2種類の役割があります。

建屋間自動搬送車、AMR搬送システム、AI検品システムなどローカル5G接続検証が完了した機器を試すことが出来ます。

参考資料

https://www.softbank.jp/biz/services/5g/column/column6/
https://www.softbank.jp/biz/services/5g/column/column6/

www.softbank.jp

ローカル5Gとは?プライベート5Gとの違いについて解説|パナソニックEWネットワークス株式会社|Panasonic
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オススメ書籍

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5Gもネットワーク技術であるためセキュリティが必ず考慮されます。
制御システムの基本構成に始まり、セキュリティの基礎を理解することができます。
今後はプラントも外部と繋がっていく時代になるためセキュリティ上のリスクを理解するのに最適です。

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