撹拌による混合時間の推算

2023年6月18日 広告

乱流における無次元混合時間

まずは乱流域で用いる式を紹介します。

基本式

乱流における無次元混合時間
$$ \frac{1}{n\theta_{M}}=0.092\left\{\left(\frac{d}{D}\right)^{3}N_{qd}+0.21\left(\frac{d}{D}\right)\left(\frac{N_{p}}{N_{qd}}\right)^{0.5}\right\}\left\{1-e^{-13\left(d/D\right)^{2}}\right\}$$
n:回転数[1/s]、θM:混合時間[s]、D:槽径[m]、d:翼径[m]
NP:動力数[-]、Nqd:吐出流量数[-]

上記実験式は8枚バッフル条件で行われており、上下流が強く円周方向の流れが極端に悪い条件です。

混合効果を十分に発揮できるように邪魔板配置や撹拌翼形状などを調節した場合、係数0.092は約1.6倍の0.15で計算できます。

参考資料:回分撹拌装置の混合性能(化学工学論文集 1967 年 31 巻 4 号 p. 365-372,a1)

液深さを加味した式

先の式に対して、液の深さも考慮して計算したい場合、以下の式を利用できます。

乱流における無次元混合時間(液深さ加味)
$$ n\theta_{M}=6.7\left(\frac{D}{d}\right)^{2}\left(\frac{N_{p}}{N_{qd}}\right)^{-0.25}\left(\frac{H}{D}\right)^{0.5}$$
n:回転数[1/s]、θM:混合時間[s]、D:槽径[m]、d:翼径[m]
NP:動力数[-]、Nqd:吐出流量数[-]、H:液深さ[m]

実験による参考値

いくつかの翼に対して撹拌動力一定で撹拌トルク・回転数・吐出流量を測定し、混合時間を測定した実験結果があります。

動力数と吐出流量数の比(Np/Nqd)と混合時間のみでは翼ごとの違いが見えづらい結果となっています。

このことから、混合時間は翼のせん断作用や循環作用なども影響していることが示唆されています。

翼名翼径と槽径の比
d/D
回転数 rpm循環時間 s
(同伴流を含まず)
動力数と吐出流量数の比
Np/Nqd
混合時間 s
タービン翼0.402274.15.609.8
プロペラ翼(30°)0.384953.31.0610.4
プロペラ翼(45°)0.383672.31.3410.3
傾斜パドル翼0.502492.31.679.1
三枚後退翼0.532223.42.809.0
実験による混合時間の算出(Pv=0.5kW/m3、D=400mm、H=500mm、4枚平板バッフル)

参考資料:傾斜翼と後退翼との撹拌特性の比較(神鋼ファウドラー技報 1984年 Vol. 28 No. 8)

層流における無次元混合時間

撹拌レイノルズ数Reが104以上の領域においては、レイノルズ数によらず混合時間θMはほぼ一定です。

それより低い領域の場合、レイノルズ数の低下に伴い混合時間θMが増加します。

層流における無次元混合時間
$$ \frac{1}{n\theta_{M}}=9.8×10^{-5}\left(\frac{d^{3}}{D^{2}H}\right)N_{p}Re$$
n:回転数[1/s]、θM:混合時間[s]、D:槽径[m]、d:翼径[m]
H:液深さ[m]、NP:動力数[-]、Re:撹拌レイノルズ数[-]

参考資料

・最新ミキシング技術の基礎と応用

撹拌に関する詳細な計算方法が解説されています。
撹拌機の機械的強度の計算など、撹拌装置を設計するためのノウハウが詰め込まれておりオススメです。

最新ミキシング技術の基礎と応用(化学工学の進歩42)
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・プロセスケミストのための化学工学

化学プロセスの各要素に対する設計方法や注意点が解説されています。
実用的なプロセス設計を勉強したいときにオススメの書籍です。

プロセスケミストのための化学工学(基礎編)
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・化学工学ー解説と演習ー

化学工学を勉強したい!と思ったら真っ先にオススメしたい書籍です。
他の汎用化学工学書籍には無い「撹拌動力計算」や「撹拌伝熱計算」も記載されています。

化学工学―解説と演習ー
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