反応の進み方
化学反応にも種類があり、まずは基本事項を解説します。
正反応と逆反応
化学反応によっては反応が進むに連れて元の物質に戻る反応も起こり始めることがあります。
このような反応を逆反応と呼びます。
それに対して通常の方向に進む反応を正反応と呼んで区別します。
正反応と逆反応が同時に進む反応形を可逆反応、正反応のみが進む反応形を不可逆反応と呼びます。
化学平衡
ある量まで正反応が進むと、生成物の濃度が増えて逆反応の方が進みやすくなります。
次第に正反応と逆反応のバランスが取れて反応が停止したように見えます。
この状態を平衡(化学平衡)と呼びます。
平衡定数
平衡状態において、反応物と生成物の濃度には一定の関係があります。
この関係は平衡定数により表されます。
平衡定数の求め方
平衡定数は以下のようにして求められます。
平衡定数
$$ \begin{gather}
a\left[A\right]+b\left[B\right]\rightleftharpoons{c}\left[C\right]\\\\
K=\frac{\left[C\right]^c}{\left[A\right]^a\left[B\right]^b}
\end{gather}$$
K:平衡定数、[A]:物質Aのモル濃度(B, Cも同様)
同じ反応・温度の場合、平衡定数は一定です。
つまり原料の濃度比に対する生成物の量が予測できます。
平衡定数の単位
平衡定数は各成分の濃度に次数で乗じて計算するため、反応物と生成物の量によって単位が異なります。
例えばアンモニアは、1モルの窒素と3モルの水素から2モルのアンモニアが生成するため単位は[mol/L]-2です。
※後述しますが圧力で平衡定数を計算することもあり、必ずしもモル濃度を使うわけではありません。
アンモニアの平衡定数
$$ \begin{gather}
\left[N_2\right]+3\left[{H_2}\right]\rightleftharpoons{2}\left[NH_3\right]\\\\
K=\frac{\left[NH_3\right]^2}{\left[N_2\right]\left[{H_2}\right]^3}
\end{gather}$$
物質の状態による差
反応は主に気体・液体・固体と3種類に分類されます。
液体の場合は先に紹介したモル濃度を使い平衡定数を算出します。
気体は分圧、固体は1で考えます。
そのため2相系の反応の場合は平衡定数の計算に注意が必要です。
物質の状態によって使う数値が違うため、平衡定数は活量で表現します。
ルシャトリエの原理
平衡状態にある系に対して新たな反応物を加えたとします。
このとき原料の濃度が減って生成物の濃度が増えてきます。
反応系において一方の濃度が変化すると、それを打ち消すようにもう一方の濃度が変化します。
これをルシャトリエの原理と呼びます。
この原理を応用すると、反応中にうまく生成物をとり除ければ効率的な反応収率が見込めます。
平衡への温度圧力影響
化学平衡は温度や圧力の影響を大きく受けます。
温度影響
温度により平衡定数は変化します。
その変化は発熱反応と吸熱反応により異なります。
例えば外界から熱を加えると吸熱反応が起きやすくなります。
圧力影響
圧力で直接的に平衡定数は変化しません。
ただし反応系に圧力をかけると、それに応じた分圧変化があります。
気体の平衡定数は分圧考えるため、平衡定数に影響を及ぼします。
この影響は反応物と生成物の分子数に差がなければ起きません。
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