非常停止ボタンの役割
b接点を使う理由を理解するために、まずは非常停止ボタンの役割を確認します。
非常時の停止
機器の動作や製造の状況に異常を確認した場合の緊急停止で用います。
挟まれや巻き込まれ、反応暴走が発生した時に停止させる場面も考えられます。
そのため1秒を争う時に確実に押せるよう、ボタンは赤色でキノコ型のような手のひらで押しやすい形状が採用されます。
確実な機器の停止
機器をメンテナンスする場合において、確実に機器は停止していなければなりません。
システム上で停止指示をしておく以外にも、非常停止ボタンを押しておく方法もあります。
この場合は安全確保ボタンと呼んでも良いかもしれません。
誤って起動指示をしてしまったとしても、非常停止しており動作しないため安全です。
ただし基本的には、ブレーカーを落として電源を断つのが確実です。
b接点を採用する理由
b接点はボタンを押したときに電気が流れなくなる(回路が切れる)形式です。
反対にボタンを押したときに電気が流れる形式をa接点と呼びます。
非常停止ボタンにb接点が採用される理由を解説します。
断線
a接点の場合、異常時にボタンを押した場合だけ電気が流れます。
裏を返せば電気が流れていない間は全て正常とみなされます。
つまりa接点の場合、非常停止ボタンの回路で断線が発生した場合は異常と認識できません。
b接点とすることで断線時に機能しない可能性を無くします。
接点不良
a接点は、物理的に接点が繋がることで電気が流れます。
例えばゴミが噛み込んだ場合には接点が繋がりません。
b接点とすることで物理的な接点の接触不良を防ぎます。
b接点なら確実なのか?
非常停止ボタンにはb接点を使いますが、あくまでa接点より確実というだけです。
b接点では溶着で接点が固定されて離れない可能性もあります。
ただし多く非常停止ボタンは、ボタンを押す時の力が直接接点を開く力に使われる直接回路動作機能を有しています。
バネなどの動力伝達部品を介していません。
非常停止ボタンは確実に機能するよう設計されていますが、始業前に非常停止が機能するか点検することが理想的です。
2接点式の非常停止ボタン
2接点式の非常停止ボタンは、ボタンを押すことで2つの接点を同時に機能させることができます。
二重化回路
同じ目的の接点を2つ設けることで二重化回路を構成しています。
たとえ片方の接点に異常があったとしても、もう片方の接点が機能して非常停止信号を送ることができます。
予知保全
予知保全は機器の故障の予兆を捉えて、異常が発生する前に交換・修繕するための保全形式です。
2接点式の非常停止ボタン使うことで予知保全にも繋げられます。
通常時はボタンを押したときに2接点の導通が同時に切れます。
どちらかの接点に異常が現れると、両接点の動作タイミングがズレてきます。
このズレから異常の兆候を捉えて保全に繋げます。
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