冷却水の必要量の計算

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冷却水の必要量は、除熱量を水の比熱と出入口の温度差で割って求めます。温度差の取り方と夏の冷却塔の水温で、水量も熱交換器の大きさも変わります。例題で水量と伝熱面積を比べ、冷却塔の補給水量とチラー・ブラインの使い分けも載せました。

除熱量100 kWあたりの冷却水量

冷却水の出入口の温度差 冷却水量
5 K 17.2 t/h
7 K 12.3 t/h
10 K 8.6 t/h
15 K 5.7 t/h

水の比熱を4.18 kJ/(kg·K)とした値です。水量[t/h]は0.86×除熱量[kW]÷温度差[K]で暗算できます。

必要水量を決める手順

  1. プロセス側で捨てる熱量Qを、顕熱と潜熱から出す(熱量・熱収支のツール(別サイト))。
  2. 冷却水の入口温度を決める。冷却塔の水なら、夏の設計湿球温度にアプローチを足した温度になる。
  3. 出口温度を決める。向流ならプロセス側の入口温度より低く、1シェル2パスの多管式なら補正係数Fが0.75以上になる範囲にする。冷却塔に戻す水は、工業用の設計例で40〜50 ℃程度。
  4. 冷却水量を W=Q/(cp Δt) で出す(冷却水・蒸気・熱媒油の必要量のツール(別サイト))。
  5. 管内の流速と汚れ係数を確かめる。
  6. 冷却塔の水なら、蒸発量・ブロー量・補給水量を出す。
この記事の内容
  1. 冷却水量の計算式
  2. 冷却手段の使い分け
  3. 出口温度と温度差の決め方(例題)
  4. 冷却塔の出口温度は湿球温度で決まる
  5. 冷却塔の補給水とブロー水の量
  6. 流速と汚れ係数
  7. 参考資料

冷却水量の計算式

冷却水量[kg/s]

$$W=\frac{Q}{c_{p}\,(t_{2}-t_{1})}$$

式は横にスクロールできます

W:冷却水の質量流量[kg/s]、Q:除熱量[kW]、cp:水の比熱[kJ/(kg·K)]、t₁・t₂:冷却水の入口・出口温度[℃]

30〜40 ℃の水の比熱は4.18 kJ/(kg·K)です。冷却水は温まるだけで、蒸発しない条件の式です。プロセス側の熱量は、液を冷やすなら顕熱で出します。蒸気を凝縮させるなら潜熱です(潜熱と顕熱の違い)。汚れの影響は、汚れ係数として伝熱面積の計算に見込みます。

冷却手段の使い分け

冷却手段 供給温度の目安 温度の下限を決めるもの 注意すること
冷却塔の水(開放式) 30〜35 ℃(工業用の夏の設計値) 外気の湿球温度とアプローチ 蒸発で塩類が濃縮する。ブロー・水処理・レジオネラ属菌の対策が要る
冷却塔の水(密閉式) 開放式より高め 湿球温度と管の伝熱に要る温度差 循環水は管の中を通り、大気に触れない。散布する水は濃縮する
工業用水・井戸水・河川水(一過式) 水源と季節で変わる 水源の水温 流し捨てるので水量が多い。汚れ係数は水道水・井戸水0.00018〜0.00035、河川水0.00018〜0.00070 m²·K/W
海水(一過式) 海域と季節で変わる 海水の温度 汚れ係数は0.00009〜0.00018 m²·K/Wと小さい。貝などの付着と塩分による腐食に対策が要る
チラーの冷水 空調用の定格は7 ℃(戻り12 ℃) 蒸発器が凍らない温度(機器の使用範囲) 電力が要る。水冷式は凝縮器を冷却水で冷やす(空調用の定格は30 ℃→35 ℃、JIS B 8613)
ブライン 0 ℃以下 凝固点(種類と濃度で決まる) エチレングリコール40 wt%で凝固点は約−22 ℃。0 ℃の比熱は約3.6 kJ/(kg·K)で水より約15 %小さい

出典:冷却塔=化学工学便覧 pp.752・755/汚れ係数=TEMA(同 表6·19)/チラー=JIS B 8613/ブライン=前島・殿垣内 p.16、MEGlobal

プロセス側の出口温度が冷却水の入口温度に近いほど、熱交換器は大きくなります。蒸留塔の凝縮器では、塔頂温度を冷却水の供給温度より20〜30 ℃高くするのが一般的です(白石 p.65)。夏の冷却塔の水が32 ℃なら、塔頂温度の目安は52〜62 ℃です。塔頂温度がこれに届かないときは、塔の圧力を上げて凝縮温度を上げます。

チラーが凝縮器から捨てる熱は、冷水から奪った熱に圧縮機の動力を足した量です(物質収支とエネルギー収支)。例として冷却能力100 kW・圧縮機の入力25 kWなら、水冷式の冷却塔は125 kWを捨てる能力が要ります。

エチレングリコールの水溶液は、濃くすると凍りにくくなる一方、比熱が下がり粘度が上がります。40 wt%の粘度は−12 ℃で約10 mPa·sで、10 ℃の水の約8倍です。同じ熱を運ぶのに、流量もポンプの動力も増えます。

出口温度と温度差の決め方(例題)

例として、溶剤を60 ℃から40 ℃まで冷やす多管式熱交換器を考えます。除熱量は300 kW、冷却塔の水の入口温度は32 ℃です。出口温度を37〜45 ℃に変えた結果が、次の表です。

冷却水の出口温度 温度差 冷却水量 LMTD(向流) 伝熱面積の比(向流・Uが同じ) 補正係数F(1シェル2パス)
37 ℃ 5 K 51.7 t/h 14.2 K 1.00 0.91
40 ℃ 8 K 32.3 t/h 13.1 K 1.08 0.81
42 ℃ 10 K 25.8 t/h 12.3 K 1.15 0.70
45 ℃ 13 K 19.9 t/h 11.1 K 1.28 1シェル2パスでは成り立たない

温度差を5 Kから10 Kに広げると、冷却水量は半分になりました。向流ならLMTDは14.2 Kから12.3 Kへ下がり、Uが同じなら伝熱面積の増加は15 %です。ところが1シェル2パスの多管式では、温度差の補正係数Fが0.70まで下がります。Fは0.75以上で選ぶのが目安です(化学工学便覧 p.392)。出口42 ℃では、この目安に届きません。水量を減らすと管内の流速も下がり、総括伝熱係数Uも小さくなります(LMTDとFは伝熱計算の基礎知識を参照)。

向流で冷却水の出口をプロセス側の入口60 ℃まで使い切る9.2 t/hが、理論上の最小水量です。ただし伝熱面積は無限に大きくなります。出口温度を高くすると、スケールも付きやすくなります。

冷却塔の出口温度は湿球温度で決まる

開放式の冷却塔は、水の一部を蒸発させてその潜熱で残りを冷やします。このため出口水温は、入口空気の湿球温度より下がりません。出口水温と湿球温度の差をアプローチと呼びます。入口水温と出口水温の差はレンジです。建築設備の用語解説(前島・殿垣内 p.132)では、アプローチは5 ℃程度、レンジは5〜7 ℃程度です。

湿球温度は、水でぬらした温度計が示す温度を指します。例として気温33 ℃・相対湿度60 %なら約26.4 ℃です(湿球温度・湿り空気状態量のツール(別サイト)で計算)。工業用冷却塔の設計例の湿球温度は、25〜27 ℃です。設計値を超える蒸し暑い日は、冷却水も設計より温かくなります。

アプローチを小さくするほど、水と空気のエンタルピー差が小さくなり塔は大きくなります。夏に湿球温度+数Kより冷たい水が要るなら、チラーを使う場面です。

密閉式は管の外に散布した水の蒸発で冷やすので、管の壁を通す温度差の分だけ出口水温が開放式より高くなります。

冷却塔の補給水とブロー水の量

冷却塔で捨てる熱の大部分は、水の蒸発の潜熱です。全部を蒸発で捨てるとして見積もります。

蒸発量[kg/s]

$$E=\frac{Q}{\lambda}$$

式は横にスクロールできます

E:蒸発量[kg/s]、Q:冷却塔で捨てる熱量[kW]、λ:水の蒸発潜熱(32 ℃で2,425 kJ/kg)[kJ/kg]

例題の300 kWでは、蒸発量は0.124 kg/s(1日に約11 t)です。空気を温める顕熱の分もあるので、実際はこれより少し小さくなります。循環水量に対しては、温度差5 Kで0.86 %、10 Kで1.7 %です。見積もりの蒸発量は捨てる熱量だけで決まり、循環水量を変えても0.124 kg/sのままです。

水が蒸発しても、溶けている塩類は塔に残ります。循環水と補給水の濃度の比が、濃縮倍率Nです。塩類の収支から、ブロー量と補給水量は次の式で求まります。

ブロー量・補給水量[kg/s]

$$B=\frac{E}{N-1} \qquad M=E+B=\frac{N}{N-1}E$$

式は横にスクロールできます

B:ブロー量(飛散で失う水を含む)[kg/s]、M:補給水量[kg/s]、N:濃縮倍率[-]

濃縮倍率 N ブロー量 補給水量
2 0.45 t/h 0.89 t/h
3 0.22 t/h 0.67 t/h
4 0.15 t/h 0.59 t/h
6 0.09 t/h 0.53 t/h

Nを2から4に上げると、補給水は3割減ります。4から6では1割しか減りません。一過式で同じ熱を捨てるなら、温度差10 Kでも25.8 t/hを流し捨てます。

日本冷凍空調工業会のガイドライン(JRA GL-02)は、冷凍空調機器の冷却水の電気伝導率を80 mS/m以下としています。例として補給水が20 mS/mなら、電気伝導率だけで見れば4倍までです。硬度やシリカも同じ倍率で濃くなるので、先に基準に届く項目が上限を決めます。水処理の薬剤を使うときの管理値は、その処理に合わせた値です。濃縮しすぎると塩類が析出してスケールになり、腐食も進みます。SUS304製の冷却水熱交換器では、塩化物が数ppm〜100 ppm程度でも応力腐食割れが起きた例があります(化学工学便覧 図28·4)。割れたのは管壁温度が約30〜90 ℃を超える範囲で、境界は置き方と水を流す側で違います。

開放式の冷却塔では、飛散する水滴とともに広がるレジオネラ属菌にも注意が要ります。厚生労働省のマニュアルによれば、空調用の冷却水は夏に25〜35 ℃程度で、微生物が増えやすい環境です。同じマニュアルの対策は、定期的な清掃と化学的洗浄に、運転中の殺菌剤の連続注入を組み合わせる方法です。点検・清掃に関わる法令の要求は、所轄の行政と最新の条文で確かめてください。

流速と汚れ係数

TEMA(米国の多管式熱交換器の工業会)の汚れ係数は、温度で欄が分かれます。補給水を処理した冷却塔の水は、加熱側115 ℃以下・冷却水50 ℃以下で0.00018 m²·K/Wです。加熱側115〜205 ℃・冷却水50 ℃超では0.00035 m²·K/Wです。河川水などでは、流速0.9 m/s以下で値が大きくなります。補給水を処理しない水は0.00053〜0.00088 m²·K/Wです。

建築設備で一般に使う推奨流速は、冷却水で0.9〜2.4 m/sです(高田・堀川 pp.25〜26)。速すぎると配管が浸食されるため、年8,000時間運転なら2.4 m/sまでが目安です。凝縮器やクーラーの出口温度を冷却水の量で制御するのは、流速と上限温度の制約があるので向かないとする教科書もあります。絞ると流速が落ち、出口温度も上がるためです。

参考資料

  1. 化学工学会 編『改訂六版 化学工学便覧』丸善(1999)6·6·3 汚れ係数 p.391、6·6·4 熱交換器の設計法 p.392、14·3·4 冷水装置 pp.752〜755、28·2 耐食性と耐熱性 p.1299
  2. 前島健・殿垣内恭平『1級管工事用語徹底解説』オーム社(2005)p.16、p.132
  3. 白石浩『化学プラントのプロセス設計-化学プラント工学入門-』分離技術会(2011)pp.64〜65、p.92
  4. 高田秋一・堀川武廣『わかる!ポンプの選び方・使い方』オーム社(2000)pp.25〜26
  5. 厚生労働省「建築物における維持管理マニュアル」第1章Ⅱ 冷却塔及び冷却水の維持管理方法(2008) https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei09/03.html
  6. 環境省「温室効果ガス排出削減等指針」対策メニュー「冷却水の水質の適正な管理」 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_140.pdf
  7. JIS B 8613:2019「ウォータチリングユニット」
  8. MEGlobal「Ethylene Glycol Product Guide」 https://www.meglobal.biz/wp-content/uploads/2019/01/Monoethylene-Glycol-MEG-Technical-Product-Brochure-PDF.pdf
  9. Kurita America「Cooling Tower Blowdown: Your Questions Answered」 https://www.kuritaamerica.com/cooling-tower-blowdown-your-questions-answered
  10. IAPWS R7-97(2012)「Revised Release on the IAPWS Industrial Formulation 1997 for the Thermodynamic Properties of Water and Steam」 https://www.iapws.org/technical-guidance/release/IF97-Rev

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