燃焼計算の手順

化学工学/物質・熱収支物質・熱収支の2本目(全2本)公開

燃料を燃やすのに要る空気の量と排ガスの量は、燃料の組成と反応式から物質収支で出せます。ボイラーや加熱炉の燃焼計算の手順を、輸入LNG相当のガスと灯油の例で示します。排ガスの酸素濃度から空気比を出す式と、湿り・乾きや高位・低位発熱量で数字がずれる所もまとめました。

燃焼計算の手順

  1. 燃料の組成を決める。気体燃料は成分の体積分率、液体と固体の燃料は元素分析の質量分率を使う。
  2. 成分ごとの反応式から、燃料1 m³N(気体)または1 kg(液体・固体)が燃えるのに要る理論酸素量 O0 を足し合わせる。
  3. 理論空気量 A0=O0÷0.21 を出す。
  4. 空気比 m を決める。運転中の設備なら、排ガスの酸素濃度から逆算する。
  5. 実際の空気量 A=mA0 と、燃焼ガス量 G=G0+(m−1)A0 を出す。
  6. CO2・H2O・O2・N2 の量から、排ガスの湿りと乾きの組成を出す。
  7. ファンやダクトに使うときは、温度と圧力で実際の体積(m³/h)に直す。

m³N(Nm³とも書く)は、0 ℃・101.325 kPa に換算した気体の体積です。手順7の換算は標準状態換算のツール(別サイト)で計算できます。

この記事の内容
  1. 主な燃料の理論空気量と燃焼ガス量
  2. 組成から理論空気量を出す式
  3. 例:輸入LNG相当のガスを燃やすボイラー
  4. 例:灯油を燃やす加熱器
  5. 排ガスの酸素濃度から空気比を出す
  6. 空気比の決め方と省エネ法の基準
  7. 不完全燃焼とCOの補正
  8. 高位発熱量と低位発熱量の使い分け
  9. 参考資料

主な燃料の理論空気量と燃焼ガス量

燃料 単位 理論酸素量 O0 理論空気量 A0 理論湿り燃焼ガス量 G0 理論乾き燃焼ガス量 G0' 乾き排ガスの CO2(空気比1)
水素 H2 m³N/m³N 0.5 2.38 2.88 1.88 0%
一酸化炭素 CO m³N/m³N 0.5 2.38 2.88 2.88 34.7%
メタン CH4 m³N/m³N 2.0 9.52 10.52 8.52 11.7%
エタン C2H6 m³N/m³N 3.5 16.67 18.17 15.17 13.2%
プロパン C3H8 m³N/m³N 5.0 23.81 25.81 21.81 13.8%
ブタン C4H10 m³N/m³N 6.5 30.95 33.45 28.45 14.1%
輸入LNG相当のガス(例) m³N/m³N 2.17 10.32 11.37 9.26 12.0%
灯油(例) m³N/kg 2.38 11.34 12.13 10.56 15.1%

反応式と空気中の酸素21%から計算した値(例の2つの燃料の組成は後の節)

右端の列は、空気比1のときの乾き排ガスの CO2 濃度です。空気を増やすと CO2 は薄まるので、測った値がこれを超えたら計器か組成を疑います。

化学工学便覧の表18·7 は、メタンの理論空気量を9.55 m³N/m³N としています。理論酸素量2.0を酸素20.95%で割った値と同じで、21%なら9.52です。同じ便覧でも表18·10 の式は21%で組んであり、差は0.2%ほどです。

組成から理論空気量を出す式

気体燃料の理論空気量[m³N/m³N]

$$A_{0}=\{0.5h_{2}+0.5co+\sum(x+y/4)c_{x}h_{y}-o_{2}\}/0.21$$

式は横にスクロールできます

h2・co・cxhy・o2:燃料1 m³N 中の水素・一酸化炭素・炭化水素 CxHy・酸素の体積[m³N/m³N]

液体・固体燃料の理論空気量[m³N/kg]

$$A_{0}=8.89c+26.47\left(h-\frac{o}{7.94}\right)+3.33s$$

式は横にスクロールできます

c・h・o・s:燃料1 kg 中の炭素・水素・酸素・硫黄の質量[kg/kg]

液体・固体燃料の理論湿り燃焼ガス量[m³N/kg]

$$G_{0}=0.79A_{0}+1.866c+11.12h+0.699s+0.80n+1.244w$$

式は横にスクロールできます

n・w:燃料1 kg 中の窒素・水分の質量[kg/kg]

燃焼ガス量[m³N/m³N または m³N/kg]

$$G=G_{0}+(m-1)A_{0} \qquad G'=G_{0}'+(m-1)A_{0}$$

式は横にスクロールできます

G・G':湿り・乾き燃焼ガス量、G0':理論乾き燃焼ガス量(G0 から燃焼でできた水と燃料の水分を除いた量)、m:空気比[−]

液体・固体燃料の式の8.89は、炭素1 kg が燃えるのに要る酸素1.866 m³N を0.21で割った値です。o/7.94 は、燃料にもとから含まれる酸素と結び付いた水素の分を引く項です。式は乾いた空気で組んであり、空気の湿分は湿り燃焼ガスに水蒸気として加わります。

例:輸入LNG相当のガスを燃やすボイラー

例として、メタン92%・エタン5.6%・プロパン1.7%・ブタン0.7%のガスを100 m³N/h 燃やすボイラーを考えます。組成は輸入天然ガスの平均(資源エネルギー庁の解説 表6-5)を丸めた値です。空気比は1.2、排ガスは200 ℃で煙突に出るとします。

  1. 理論酸素量は成分ごとに足す。O0=2×0.92+3.5×0.056+5×0.017+6.5×0.007=2.17 m³N/m³N。
  2. 0.21で割ると理論空気量 A0=10.32 m³N/m³N。空気比1.2なら、燃料1 m³N に12.38 m³N の空気を送る。
  3. 燃焼でできるのは CO2 1.11 m³N と H2O 2.11 m³N。これに空気の窒素(0.79×12.38=9.78)と、使われずに残る酸素(0.21×0.2×10.32=0.43)が加わる。
  4. 足し合わせた湿り燃焼ガス量 G は13.44 m³N/m³N、水を除いた乾き燃焼ガス量 G' は11.32 m³N/m³N。
  5. 100 m³N/h を燃やすと、空気は1,238 m³N/h、湿り排ガスは1,344 m³N/h。煙突の200 ℃では1,344×473÷273 で約2,330 m³/h になる。
  6. 熱の入力(成分の発熱量は化学工学便覧 表18·7)は高位発熱量で4.30 GJ/h、低位発熱量で3.89 GJ/h。
成分 燃料1 m³N あたり[m³N] 湿り[vol%] 乾き[vol%]
CO2 1.11 8.3 9.8
H2O 2.11 15.7 −
O2 0.43 3.2 3.8
N2 9.78 72.8 86.4
計 13.44 100 100

例のガスを空気比1.2で燃やしたときの排ガス組成(計算)

ダクトの中が大気圧から外れるときは、圧力も絶対圧で入れて換算します。

例:灯油を燃やす加熱器

液体燃料は、燃料1 kg あたりで計算します。例として、灯油を10 L/h 燃やす加熱器を考えます。組成は化学工学便覧 表18·8 の例(C 85.7%・H 14.1%・O 0.2%)です。

  1. A0=8.89×0.857+26.47×(0.141−0.002÷7.94)=11.34 m³N/kg。
  2. G0=0.79×11.34+1.866×0.857+11.12×0.141=12.13 m³N/kg。G0'=12.13−11.12×0.141=10.56 m³N/kg。
  3. 空気比1.2なら G=12.13+0.2×11.34=14.40 m³N/kg。乾き排ガスの酸素は3.7%。
  4. 密度0.794 kg/L(便覧 表18·8 の比重)で、10 L/h は7.94 kg/h。空気108 m³N/h、湿り排ガス114 m³N/h。

灯油1 L の理論空気量は約9.0 m³N です。

排ガスの酸素濃度から空気比を出す

省エネ法の判断基準(経済産業省告示)は、排ガスの酸素濃度から空気比を出す次の式を定めています。

排ガスの酸素濃度から空気比を出す簡易式[−]

$$m=\frac{21}{21-O_{2}}$$

式は横にスクロールできます

O2:排ガス中の酸素濃度[%]

この式は、乾き排ガスの量を供給した空気の量とみなしています。炭素だけの燃料ならそのとおりです。水素を含む燃料では、できた水が乾き排ガスから抜ける分だけ乾きの酸素濃度が高く出ます。CO2 も乾きで測っていれば、窒素の濃度を使う次の式でこの誤差を除けます。

窒素を使う空気比の式[−]

$$m=\frac{21N_{2}}{21N_{2}-79\left(O_{2}-0.5CO\right)}$$

式は横にスクロールできます

O2・CO・N2:乾き排ガス中の濃度[%]

N2 は、100から CO2・O2・CO を引いて出します。燃料に窒素を含まない場合の式で、化学工学便覧 表18·10 の式(10′)を整理した形です。

空気比 m 乾きの O2[%] 湿りの O2[%] 簡易式に乾きの値を入れた m 簡易式に湿りの値を入れた m
1.05 1.1 0.9 1.06 1.05
1.10 2.1 1.7 1.11 1.09
1.15 3.0 2.5 1.17 1.14
1.20 3.8 3.2 1.22 1.18
1.30 5.3 4.5 1.33 1.27
1.40 6.5 5.6 1.45 1.36

例のガス(輸入LNG相当)で計算した値です。窒素を使う式に乾きの値を入れると、どの行も左端の空気比に戻ります。

本当の空気比が1.20のとき、簡易式に乾きの酸素を入れると1.22です。湿りの酸素を入れると1.18と、今度は小さく出ます。乾きか湿りかは計器と測り方で違い、環境省の対策シートもこの確認を計測の注意点に挙げています。判断基準の値と比べるときに使うのは、告示の簡易式です。告示は乾き・湿りを決めていないので、どちらで測ったかを記録しておきます。

空気比の決め方と省エネ法の基準

空気比を下げると排ガスの量が減り、煙突から持ち去られる熱も減ります。下げすぎると不完全燃焼になり、すすが伝熱面に付いて熱効率が落ちます。環境省の対策シートの13A都市ガスの試算では、排ガス200 ℃・過剰空気20%(空気比1.2)の排ガス損失が9.4%です。過剰空気40%なら10.8%に増えます。どちらも、排ガスが0 ℃から持ち去る顕熱を低位発熱量で割った値です。排ガスが800 ℃の熱処理炉なら、空気比1.4を1.3に下げると燃料が約5%減るという環境省の別の試算もあります。

下げられる下限を左右するのは、燃料と炉やバーナーの形式です。ヒンメルブラウの『化学工学の基礎と計算』は、燃料油ではバーナーの設計によって5〜20%の過剰空気が要るとしています。

設備(判断基準の区分) 気体燃料 液体燃料
一般用ボイラー(蒸発量30 t/h以上) 1.1〜1.2 1.1〜1.25
一般用ボイラー(10 t/h以上30 t/h未満) 1.15〜1.3 1.15〜1.3
一般用ボイラー(10 t/h未満) 1.2〜1.3 1.2〜1.3
小型貫流ボイラー 1.25〜1.4 1.3〜1.45
石油加熱炉、熱分解炉・改質炉(連続式) 1.20 1.25
乾燥炉(連続式。バーナー燃焼部のみ) 1.25 1.30

出典:「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(経済産業省告示)別表第3(A)の基準空気比。ボイラーは負荷率50〜100%(小型貫流ボイラーは100%)の値

ボイラーの値は、定期検査の後に一定の負荷で安定して燃やしたときのボイラー出口の空気比です。炉の値は、点検・修理の後に定格に近い負荷で燃やしたときの排気出口の空気比です。告示は、これらの値を基準に空気比を下げる向きで管理標準を決めるよう求めています。電気事業用・固体燃料・副生ガスの区分は表から省きました。廃熱を利用するボイラーや、定格容量が原油換算20 L/h 未満の炉は対象外です。法令の求めは、所轄の行政機関と最新の告示で確かめてください。

不完全燃焼とCOの補正

不完全燃焼の目印は、排ガスに出る CO とすすです。排ガスに CO が残ると、CO が CO2 まで燃えるのに使うはずだった酸素が余って見えます。その量は CO の半分です。理論空気量は、CO が出ていても完全燃焼として数えます。窒素を使う式の O2−0.5CO は、この余って見える酸素を差し引く項です。

例として、乾き排ガスが O2 3.0%・CO 1.0%・CO2 9.4% の場合を考えます。CO を無視すると空気比は1.15、CO を入れると1.12です。CO が0.2%(2,000 ppm)なら、差は0.01以下に収まります。

例のガスで乾き排ガスに CO が1,000 ppm 残ると、高位発熱量の約0.3%が燃え残る計算です。CO の発熱量は、便覧 表18·7 の12.63 MJ/m³N を使いました。

高位発熱量と低位発熱量の使い分け

熱量計で測る高位発熱量(総発熱量)は、燃焼でできた水が液体まで凝縮したときの値です。炉やボイラーでは水は蒸気のまま煙突を出るため、凝縮の潜熱を引いた低位発熱量(真発熱量)も使います。

低位発熱量(液体・固体燃料)[MJ/kg]

$$H_{l}=H_{h}-2.443\left(8.937h+w\right)$$

式は横にスクロールできます

Hh・Hl:高位・低位発熱量[MJ/kg]、h・w:燃料1 kg 中の水素・水分[kg/kg]、2.443:25 ℃の水の蒸発潜熱[MJ/kg]

かっこの中は、燃焼ガスに出る水蒸気の質量です。灯油の組成例(H 14.1%)なら、差は3.08 MJ/kg になります。気体燃料は、できる水蒸気1 m³N あたり1.96 MJ を引きます。メタンなら39.72−1.96×2=35.80 MJ/m³N で、便覧 表18·7 の低位発熱量と同じ値です。

燃料 高位発熱量 低位発熱量 差(高位に対して)
都市ガス[MJ/m³、25 ℃・1 bar] 39.75 36.24 8.8%
LPG[MJ/kg] 50.12 46.47 7.3%
灯油[MJ/L] 36.60 34.38 6.1%
A重油[MJ/L] 38.82 36.62 5.7%

出典:資源エネルギー庁「エネルギー源別標準発熱量・炭素排出係数(2023年度改訂)の解説」の燃料ごとの表(低位は参考値)

水素の割合が大きい燃料ほど、高位と低位の差が開きます。表の高位発熱量は、資源エネルギー庁が2023年度改訂で定めた標準発熱量(総発熱量)です。気体の m³ は25 ℃・1 bar の体積なので、m³N あたりに直すには1.106を掛けます。都市ガスの39.75 MJ/m³ は、m³N あたり約44.0 MJ です。輸入天然ガス(気化LNG)の38.88 MJ/m³ は43.0 MJ/m³N です。例のガスを便覧の値で足した43.02 MJ/m³N とそろいます。

熱勘定の基準は、化学工学便覧の中でも分かれます。本文は低位発熱量をとり、計算例の表18·11 は高位発熱量を入熱にした形です。IPCC と IEA の値は低位発熱量の基準なので、効率を比べる前にどちらの値かを確かめます。燃料ごとの値の一覧は燃料の発熱量の記事です。

参考資料

  1. 化学工学会 編『改訂六版 化学工学便覧』丸善(1999)18·4 燃焼および燃焼装置
  2. D.M.ヒンメルブラウ 著、大竹伝雄 訳『化学工学の基礎と計算(原書第4版)』培風館(1986)
  3. 経済産業省「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(平成21年経済産業省告示第66号、令和7年12月26日 経済産業省告示第185号による改正まで)別表第3(A) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/laws/data/gorika.pdf(別サイト)
  4. 資源エネルギー庁 総合エネルギー統計検討会事務局「エネルギー源別標準発熱量・炭素排出係数(2023年度改訂)の解説」(2025年3月、2026年3月一部更新) https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/shv2023_cmt.pdf(別サイト)
  5. 環境省 SHIFT事業 対策シート「121142 ボイラーの燃焼空気比改善(都市ガス)」 https://shift.env.go.jp/files/navi/measure/121142.pdf(別サイト)
  6. 環境省「燃焼設備及び使用する燃料の種類に応じた空気比の適正化」温室効果ガス排出削減等指針 対策シート(2024) https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_22.pdf(別サイト)
  7. 中小企業基盤整備機構 J-Net21「ボイラーや工業炉における空気比の目安と、空気比削減効果の算出方法は?」(2019) https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/EQ0001.html(別サイト)

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