撹拌流量の分類
撹拌時の流量を評価するときは吐出流量や循環流量を用います。
吐出流量と同伴流量
撹拌機の回転に伴い翼から送り出される流量を吐出流量と呼びます。
また吐出時には周囲の流体も引き込みながら送り出され、その流量を同伴流量と呼びます。
循環流量
吐出流量と同伴流量を合計した値は循環流量と呼ばれます。
この循環流量が実際に撹拌に伴い送り出される流量となります。
循環流量
$$ q_{c} =q_{d}+q_{i}=\frac{V}{T_{ c }}$$qc:循環流量[m3/s]、qd:吐出流量[m3/s]、qi:同伴流量[m3/s]、
V:槽内の流体の体積[m3]、Tc:循環時間[s]
無次元数による性能の表現
吐出流量や循環流量は性能評価において重要な指標であり、無次元化した値で評価されます。
特に吐出流量数は撹拌翼そのものの能力であるため、動力数と吐出流量数の比(Np/Nqd)でよく用いられます(Np/Nqdの活用例)。
吐出流量数
$$ N_{ qd } = \frac{q_{ d } }{nd^3 }$$Nqd:吐出流量数[-]、qd:吐出流量[m3/s]
n:回転数[1/s]、d:翼径[m]
循環流量数
$$ N_{ qc } = \frac{q_{ c } }{nd^3 }$$Nqc:循環流量数[-]、qc:循環流量[m3/s]
n:回転数[1/s]、d:翼径[m]
無次元数同士の関係
吐出流量数や循環流量数は重要な無次元数であり、様々な無次元数との関係式が報告されています。
循環流量数と吐出流量数の関係
撹拌レイノルズ数が1000を超える完全乱流域において、循環流量数と吐出流量数との間には以下の関係があります。
循環流量数と吐出流量数の関係
$$ N_{ qc } = N_{ qd } \left\{ 1 + 0.16 { \left(\frac{D}{d}\right)^2 – 1 } \right\}$$Nqc:循環流量数[-]、Nqd:吐出流量数[-]
D:槽径[m]、d:翼径[m]
動力数と吐出流量数の関係
動力数と吐出流量数には以下の関係があります。
動力数と吐出流量数の関係
$$ N_{ qd } = 0.32\left( \frac{{n_{ p }}^{ 0.7 }b}{d} \right)^{ 0.25 } \left(\frac{D}{d} \right)^{ 0.34 } {N_{ p }}^{ 0.5 }$$Nqd:吐出流量数[-]、np:羽根枚数[-]、d:翼径[m]
b:羽根幅[m]、D:槽径[m]、Np:動力数[-]
無次元混合時間と吐出流量数の関係
撹拌レイノルズ数が1000を超える完全乱流域において、吐出流量数と無次元混合時間との間には以下の関係があります。
乱流における無次元混合時間
$$ \frac{1}{n\theta_{M}}=0.092\left\{\left(\frac{d}{D}\right)^{3}N_{qd}+0.21\left(\frac{d}{D}\right)\left(\frac{N_{p}}{N_{qd}}\right)^{0.5}\right\}\left\{1-e^{-13\left(d/D\right)^{2}}\right\}$$
n:回転数[1/s]、θM:混合時間[s]、D:槽径[m]、d:翼径[m]
NP:動力数[-]、Nqd:吐出流量数[-]
上記実験式は8枚バッフル条件で行われており、上下流が強く円周方向の流れが極端に悪い条件です。
混合効果を十分に発揮できるように邪魔板配置や撹拌翼形状などを調節した場合、係数0.092は約1.6倍の0.15で計算できます。
また、先の式に対して、液の深さも考慮して計算したい場合、以下の式を利用できます。
乱流における無次元混合時間(液深さ加味)
$$ n\theta_{M}=6.7\left(\frac{D}{d}\right)^{2}\left(\frac{N_{p}}{N_{qd}}\right)^{-0.25}\left(\frac{H}{D}\right)^{0.5}$$
n:回転数[1/s]、θM:混合時間[s]、D:槽径[m]、d:翼径[m]
NP:動力数[-]、Nqd:吐出流量数[-]、H:液深さ[m]
参考資料:回分撹拌装置の混合性能(化学工学論文集 1967 年 31 巻 4 号 p. 365-372,a1)
参考資料
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