平成28年度 問32

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 結晶の融点は、融解エントロピーΔSmに反比例するので、融解エントロピーによって、高分子結晶の融点の高低を推定することができる。振動のエントロピーは結晶と液体とで差は小さく無視することにし、コンフォーメーションのエントロピーのみを考慮して、ポリエチレン結晶中のメチレン基1 mol当たりの融解エントロピーの計算値として、最も近い値はどれか。
 なお、ポリエチレン分子鎖のコンフォーメーションは結晶中ではすべてトランス(\( T\))であり、液体中ではトランス、ゴーシュ(\( G\))、ゴーシュバー(\( \bar{G}\))の3種の立体配座が等確率で存在すると仮定せよ。必要であれば、次の式、及び値を用いよ。

Boltzmannの式:Sm=RlogW
ここで:S:モルエントロピー、R:気体定数、W:取りうる場合の数
log1=0、log3=1.10、log5=1.61、log10=2.30、R=8.31 JK-1mol-1

  1. 1.10 JK-1mol-1
  2. 1.61 JK-1mol-1
  3. 9.14 JK-1mol-1
  4. 13.4 JK-1mol-1
  5. 19.1 JK-1mol-1



解答解説

正答は3番です。

問題文にコンフォーメーションのエントロピーのみを考慮すると記載されており、取りうる場合の数Wは立体配座の数で決まります。

液体中ではトランス、ゴーシュ、ゴーシュバーの3種の立体配座が等確率で存在するとされています。つまりW=3です。よってモルエントロピー Sm=RlogW=8.31×log(3)=8.31×1.10=9.14です。

同様に、結晶中では全てトランス配座であるためW=1です。よってモルエントロピー Sm=RlogW=8.31×log(1)=8.31×0=0です。

融解エントロピーΔSmは液体状態のモルエントロピーから固体状態のモルエントロピーを引いた値ですので、ΔSm=9.14となります。

2024年3月10日