容器の体積を真空ポンプの排気速度で割ると、時間の単位になります。しかし、V/Sをそのまま目標圧力までの所要時間にはできません。どこまで圧力を下げるかによって、排気に必要な時間は変わります。
容器側の排気速度を使う
気体の流入を無視した理想的な排気時間は、次の式で表せます。
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Vは容器の体積[m³]、Sは容器側の有効排気速度[m³/s]です。p₀は初期圧力、p₁は目標圧力で、どちらも絶対圧力を使います。lnは自然対数、tの単位は秒になります。
排気速度は、その場所の圧力で表した気体の体積を単位時間に吸い出す量です。圧力が下がると、同じSでも吸い出せる気体の量は減ります。
また、細い配管やバルブは気体の流れを妨げます。カタログに載るポンプ単体の値を、そのまま容器側のSとして使えるとは限りません。
この式では、容積と気体温度を一定とし、計算する圧力範囲でSも変わらないと仮定します。漏れや容器壁から放出される気体は無視し、ポンプ自身の到達圧力も目標に比べて十分低い条件です。参照したLeyboldの資料では、目標圧力が0.01 mbar(1 Pa)より高い範囲にこの簡易式を使っています。
V=1 m³、S=0.01 m³/sの架空の容器を考えましょう。100000 Paから1000 Paまで排気すると、V/Sは100秒でも、所要時間は100×ln(100)=約460.5秒になります。
同じ圧力区間でガス負荷を比べる
次は圧力区間を変え、1000 Paから200 Paまでの時間を比べます。容積とSは先ほどと同じです。
まず、気体の流入がなければ、所要時間は100×ln(1000/200)=約160.9秒となります。ここへ一定量の気体が入り続けると、排気はどう変わるでしょうか。
容器へ入る気体の量をガス負荷q[Pa·m³/s]とします。容積と気体温度に加え、Sとqも一定とします。この条件での気体収支はV dp/dt=q−Spです。これを積分すると次の関係を得られます。
式は横にスクロールできます
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p∞は流入と排気がつり合う圧力です。このモデルでは、圧力が時間とともにp∞へ近づきます。
q=1 Pa·m³/sならp∞=100 Paです。1000 Paから200 Paまでの時間は、100×ln(900/100)=約219.7秒になります。同じ圧力区間で比べると、ガス負荷のない約160.9秒より長くなりました。
この例で100 Paより低くできない理由
前の例では、圧力が100 Paのとき、単位時間に容器へ入ってくるガスの量と吸い出す量がつり合います。1000 Paから排気を始めると、100 Paに近づくほど圧力の下がり方が遅くなります。排気を続けても90 Paまでは下がりません。
この条件で90 Paを目標にするなら、ガスの流入を減らすか、容器側の有効排気速度を大きくする必要があります。流入と排気がつり合う圧力を90 Paより低くするためです。
この100 Paは、ガスの流入と排気速度を一定として計算した値です。ポンプ自身の性能や脱ガス量の変化もあるため、実機で同じ圧力になるとは限りません。
参考資料
Leybold:Fundamentals of Leak Detection(2024)、p.7・p.36(別サイト)
www.leybold.com


