タンクの容量は、胴(円筒)の容量に鏡板2枚の容量を足して求めます。縦型は液面が胴にあれば液位と容量が比例しますが、横型と球形は比例しません。鏡板の形ごとの式と横型の早見表を先に載せ、例題と法令上の容量の扱いまでまとめました。
鏡板込みのタンク容量の式(D:内径、L:TL間の長さ、H:円すいの深さ)
| 部分・形 | TLからの深さ | 容量 | 内径2.0 mのとき |
|---|---|---|---|
| 胴(円筒) | - | πD²L/4 ≒ 0.785D²L | 長さ1 mあたり3.14 m³ |
| 平鏡板 | 0 | 0 | 0 |
| 10%皿形鏡板 | 0.194D | 0.09896D³ | 0.79 m³ |
| 2:1半だ円体鏡板(正半だ円形) | D/4 | πD³/24 ≒ 0.131D³ | 1.05 m³ |
| 全半球形鏡板 | D/2 | πD³/12 ≒ 0.262D³ | 2.09 m³ |
| 円すい(頂点まで) | H | πD²H/12 | - |
| 球形タンク(全体) | - | πD³/6 ≒ 0.524D³ | 4.19 m³ |
この表の鏡板の式は、消防庁が危険物タンクの内容積の計算例に示した式と同じです。10%皿形は中央部の半径がD、すみの丸みの半径が0.1Dの形を指します。
横型タンクの液位と容量の割合(満液=100 %)
| 液位 h/D | 胴 | 鏡板(2:1半だ円体・全半球形)と球形タンク |
|---|---|---|
| 0.1 | 5.2 % | 2.8 % |
| 0.2 | 14.2 % | 10.4 % |
| 0.25 | 19.6 % | 15.6 % |
| 0.3 | 25.2 % | 21.6 % |
| 0.4 | 37.4 % | 35.2 % |
| 0.5 | 50.0 % | 50.0 % |
| 0.6 | 62.6 % | 64.8 % |
| 0.7 | 74.8 % | 78.4 % |
| 0.75 | 80.4 % | 84.4 % |
| 0.8 | 85.8 % | 89.6 % |
| 0.9 | 94.8 % | 97.2 % |
hは底から液面までの高さです。胴の割合は胴の容量に掛け、鏡板の割合は鏡板2枚の容量に掛けて足します。
タンクの種類と容量の求め方
| 種類 | 形と支え方 | 主な使い方 | 容量の求め方 |
|---|---|---|---|
| 縦型・固定屋根式 | 平らな底と円筒の側板に、円すいやドームの屋根を固定 | 大気圧に近い微圧で液を貯める | 胴の円柱。屋根の中は消防法の内容積に入れない |
| 縦型・浮き屋根式 | 液面に浮く屋根が上下する。上に固定屋根をかぶせて雨水の混入を防ぐ形もある | 原油・石油製品など揮発しやすい液 | 胴の円柱。機能を保てる最高位置の液面まで |
| 縦型・鏡板付き | 上下に鏡板。下部のスカートで支える | 圧力のかかる容器、中小の貯槽 | 胴+鏡板2枚 |
| 横型 | 両端に鏡板。2か所のサドルで支える | 液の受槽、中小の貯槽 | 弓形の面積×長さ+鏡板 |
| 球形 | 全体が球。脚柱で支える | 高圧のガス、LPG・アンモニアなどの液化ガス | πD³/6。途中の液量は鏡板と同じ割合 |
1971年の『貯槽』は、固定屋根式を維持管理がやさしく最も一般的な形としています。浮き屋根式は屋根が液面とともに上下し、揮発しやすい液の蒸発損失を減らします。球形は同じ体積で表面積が最も小さい形です。同じ径と板厚なら、円筒の2倍の圧力に耐えます(同書)。
鏡板の形と容量
鏡板の容量は、TL(曲面と直胴の境)から先の曲面の部分です。鏡板の縁の短い直胴部は、胴をTL間の長さで計算すれば胴の側に入ります。TLの位置はタンク図面のTLとWLの記事で説明しました。
全半球形の容量は2:1半だ円体のちょうど2倍で、10%皿形は約4分の3です。1971年の『貯槽』では鏡板は2:1半だ円体が多く、高圧用には全半球形も使うとしています。
係数0.09896は、中央部の半径がD・すみの半径が0.1Dの形だけに使える値です。JIS B 8247(圧力容器用鏡板)の製品には、正半だ円形と近似半だ円形があります。表のπD³/24は正半だ円形(2:1)の値です。半径の違う皿形や近似半だ円形は、一般式で計算します。図面の中央部の半径Rと、すみの半径rを使います。一般式の出所は、堺市消防局の審査基準の別記25です。
縦型タンクの液位と容量
液面が胴の範囲にあれば、下の鏡板の容量に胴の円柱の分を足すだけです。
縦型タンクの液量[m³]
式は横にスクロールできます
V:液量[m³]、Vh0:下の鏡板1枚の容量[m³]、D:内径[m]、h:下のTLから液面までの高さ[m]
例として、上下に2:1半だ円体鏡板が付いた縦型タンクで計算します。内径は2.0 m、TL間は3.0 mとします。全容量は胴の9.42 m³に鏡板2枚の2.09 m³を足して、約11.5 m³です。胴の範囲では、液位1 cmあたり31.4 Lずつ増えます。
下のTLから2.4 mまで液があれば、液量は1.05+7.54=8.59 m³です。この2.4 mを鏡板の底からの高さと取り違えると、TLからは1.9 mしかありません。液量は7.02 m³と出て、全容量の14 %に当たる1.57 m³がずれます。
液面計の0 %も、タンクの底にあるとは限りません。白石『化学プラントのプロセス設計』の蒸留塔の例では、液面ゼロが底から0.3 mです。液面計が示すのは、測定範囲の何%の高さかです(レベル計とレベルスイッチの記事)。容量に直す前に、0 %と100 %の位置を図面で確かめます。
液面が下の鏡板の中にあると、液位と液量は比例しません。この範囲は次の式で求めます。
縦型タンクの下の鏡板の中の液量[m³]
式は横にスクロールできます
Vh:鏡板の中の液量[m³]、Vh0:鏡板1枚の容量[m³]、y:鏡板の底からの液位[m]、a:鏡板の深さ[m]
2:1半だ円体と全半球形なら、この式は厳密に合います。10%皿形では、厳密に計算した値との差が鏡板の容量の最大2.4ポイントです。2:1半だ円体で鏡板の深さの半分(u=0.5)まで入れても、液量は鏡板の容量の31 %です。
横型タンクの液位と容量
横型の胴の液量は、円の弓形の面積に長さを掛けた値です。鏡板の液量は、冒頭の表の割合を鏡板の容量に掛けて出せます。
横型タンクの胴の液量[m³]
式は横にスクロールできます
Vs:胴の液量[m³]、L:TL間の長さ[m]、R:内半径(D/2)[m]、h:底から液面までの高さ[m]
横型タンクの鏡板1枚の液量[m³]
式は横にスクロールできます
Vh:鏡板1枚の液量[m³]、Vh0:鏡板1枚の容量[m³]、D:内径[m]、h:底から液面までの高さ[m]
2:1半だ円体と全半球形なら、鏡板の式は厳密に成り立ちます。10%皿形に当てても、厳密に計算した値との差は鏡板の容量の0.2ポイント以内です。
例として、両端に2:1半だ円体鏡板が付いた横型タンクで計算します。内径は2.0 m、TL間は5.0 mです。全容量は胴15.71 m³と鏡板2枚2.09 m³を合わせた17.80 m³になります。液位を底から0.5 m(h/D=0.25)とします。胴の液量は3.07 m³、鏡板2枚は0.33 m³です。合わせて3.40 m³で、直径の25 %の高さでも容量は全体の19 %しかありません。
1.6 m(h/D=0.8)まで入れると15.35 m³で、全体の86 %です。上の方で液位の割合を容量の割合と読むと、残りの空きを多く見積もります。受け入れ量を決める場面では、あふれる側への読み違いです。全容量の90 %に当たる液位は、h/Dで0.84になります。
全容量と使える量
実際に出し入れできる量は、最高液位と最低液位の間に限られます。最低液位は、抜き出しのポンプが空引きしない高さです。
受槽や塔底の大きさは、この間の液で流量の何分ぶんをまかなえるか(滞留時間)で決めます。白石『化学プラントのプロセス設計』の設計例では、受槽は空から半分の高さまでで約5分です。塔底は液面ゼロから最高レベルまでで約3分を取っています。同じ本の目安では、横型の受槽の長さと径の比は3〜5です。
同じ『貯槽』は、実際に貯められる量を実容量と呼んでいます。固定屋根式では、泡消火設備の放出口の位置で液面の上限が決まります。タンクの呼び名にする称呼容量は、多くが実容量の端数を切り捨てた数です。
消防法と高圧ガス保安法の容量
危険物を貯めるタンクの容量は、内容積から空間容積を引いた量です(危険物の規制に関する政令 第5条)。空間容積は、原則として内容積の5〜10 %です(危険物の規制に関する規則 第3条)。第三種の消火設備の放射口をタンク内の上部に設けるときは、扱いが違います。放射口の下0.3 m以上1 m未満の面から上が空間容積です。特定屋外貯蔵タンクと岩盤タンクには、同じ条の第2項に別の決まりがあります。
内容積には、固定屋根の中の体積を入れません。浮き屋根のタンクで除くのは、屋根が機能を保って最も高く上がった位置の液面より上です。計算は胴と鏡板に分けて合計します。改正前の規則の式で出した値やCADの計算値、実測値も使えます(消防庁 消防危第42号)。
改正前の規則の横置き円筒の式は、鏡板の長さの3分の1を胴に足す形です。許可の書類の内容積がこの式で出した値なら、計算と合いません。例題の横型なら、この式では16.76 m³です。鏡板を半だ円体として計算した17.80 m³より、5.9 %小さく出ます。
一般高圧ガス保安規則の対象の貯槽なら、液化ガスの量にも上限があります。常用の温度で内容積の90 %までです(第6条・第18条)。法令の要求は、所轄の行政と最新の条文で確かめてください。
温度による膨張と空き容量
| 液 | 10 ℃の密度 | 40 ℃の密度 | 体積の増え方 |
|---|---|---|---|
| 水 | 999.7 kg/m³ | 992.2 kg/m³ | +0.75 % |
| トルエン | 876.2 kg/m³ | 848.2 kg/m³ | +3.3 % |
| メタノール | 800.4 kg/m³ | 772.2 kg/m³ | +3.7 % |
密度はNIST Chemistry WebBook(大気圧)の値です。例として10 ℃で10 m³受け入れたトルエンは、40 ℃で10.33 m³になります。95 %まで張ったトルエンが30 ℃温まると、空間容積5 %の6割あまりを使う計算です。上限の液位は、液が最も温まる条件の体積で決めます。
計算でまちがえやすい点
- 内径で計算します。例として内径2.0 m・板厚10 mmのタンクを外径で計算すると、胴の容量は2 %大きく出ます。
- ノズル・マンホール、内部のコイルや撹拌機の体積は式に入りません。厳密な量が要るときは、実測した容量表を使います。
参考資料
- 消防庁危険物保安室長通知「タンクの内容積の計算方法について」消防危第42号(2001年3月30日) https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/130330kiho42.pdf
- 危険物の規制に関する政令 第5条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/334CO0000000306
- 危険物の規制に関する規則 第2条・第3条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/334M50000002055
- 一般高圧ガス保安規則 第6条・第18条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/341M50000400053
- 堺市消防局「堺市危険物規制審査基準」別記25 タンクの内容量の計算方法 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/31516920240318101556756.files/beltuki25.pdf
- 化学工学協会 編『プロセス機器構造設計シリーズ5 貯槽』丸善(1971)pp.53〜55、pp.86〜88
- 化学工学協会 編『プロセス機器構造設計シリーズ2 塔槽類』丸善(1970)pp.169〜170
- 白石浩『化学プラントのプロセス設計-化学プラント工学入門-』分離技術会(2011)pp.108〜112
- JIS B 8247:2016「圧力容器用鏡板」
- 日本鏡板工業「製品情報」正半だ円形鏡板・近似半だ円形鏡板 https://www.nkweb.co.jp/products/500 、 https://www.nkweb.co.jp/products/508
- NIST Chemistry WebBook, SRD 69「Thermophysical Properties of Fluid Systems」 https://webbook.nist.gov/chemistry/fluid/
