(事前知識)防爆とは?
そもそも防爆規格は電気設備を爆発危険性場所で使用できるように定められたものです。
つまり電気設備に起因する接点火花や短絡などが原因となりガスに引火して爆発するのを防ぎます。
危険場所のクラス分け
爆発危険場所と言っても常にガスが発生する場所、異常時のみ発生する場所など状況は様々です。
そのため爆発性雰囲気の発生状況に応じて危険場所は以下の3クラスに分けられます。
- ゾーン0 通常状態で連続的もしくは長期間発生する場所(引火性液体の液面付近など)
- ゾーン1 通常状態で発生する可能性がある場所(タンクの点検口など)
- ゾーン2 異常状態で生成する可能性がある場所(フランジ接合部の劣化箇所など)
防爆構造の種類
危険場所のクラスや爆発対策によって様々な防爆構造が考案されています。
例えば安全増防爆構造や耐圧防爆構造は有名です。
今回のテーマで関係するのは本質安全防爆構造です。
防爆構造の詳細に関しては日本電熱株式会社のHPに分かりやすく記載されています。
本質安全防爆構造とは?
本質安全防爆構造は、発生する電気エネルギーを制限することで電気設備自体が点火源にならないよう設計された構造を指します。
可燃性ガスが充満する雰囲気でも使用できる唯一の防爆規格構造です。
安全ならすべてこれに……とも考えたくなりますが、センサーや制御機器など低エネルギー機器にしか対応していません。
モーターは安全増防爆構造や耐圧防爆構造が一般的です。
リレーバリアとは?
リレーバリアはバリアリレーやバリアとも呼ばれ、本質安全防爆構造で使用されます。
防爆箇所として一番厳しい特別危険個所(ゾーン0)でも使用可能です。
そもそも点火しない電源を供給できる
リレーバリアは電流や電圧を制限して電源供給することができます。
つまり可燃性ガス雰囲気中で火花や断線、短絡、機器破損が起きた際にも点火しないようになっています。
ただし供給電圧が低いため一般的に使用されるAC100VやDC24Vで動作する機器は使用できません。
例えばランプの場合はランプバリアと呼ばれる12V程度で動作するランプを使用します。
このような本質安全防爆で使用する機器を本安機器と呼ぶこともあります。
頑丈な機器が要らなくなる
リレーバリアを使うことで、そもそも爆発の危険が無い電気機器を使用できることになります。
モーターで有名な耐圧防爆構造のような構造的に頑丈で精巧な機器を選択する必要がなくなります。
更に他の防爆機器と違い機器保守の不備が直接的に爆発を引き起こす原因にならないのも特徴的です。
ただしリレーバリアをはじめ電源供給側の保守を怠ると即時爆発の危険が伴います。
厳重な過電圧・過電流対策
例えば落雷のような原因で過電圧がかかってしまったとします。
それでも危険箇所へ過電流が流れないよう対策が何重にも機器内に仕掛けられています。
ツェナーダイオードを使用したリレーバリアであるツェナーバリアを例に挙げます。
ツェナーバリアはヒューズ、2~3組の抵抗・ツェナーダイオードセットで構成されています。
仮に異常が起きた際、各要素は以下のように機能します。
高電圧が印加された場合はツェナーダイオードで一定電圧に保つようにし、余剰分は接地部へ放電します。
抵抗で点火するエネルギー以下になるよう電流を制限し、過電流が流れた場合はヒューズが切れることで遮断します。
ヒューズはツェナーダイオードが壊れないよう保護する役目を果たしています。
基本的に抵抗・ツェナーダイオードセットは複数セット設けるようになっています。
注意点
本質安全防爆回路は一歩間違えると危険地帯に点火するほどの電気エネルギーを送りかねません。
守らねばならない注意点を挙げます。
配線は分ける
交流や直流、電圧、位相など別種の電源同士が何らかの原因で接触することを混触と呼びます。
混触の原因として例えば損傷が挙げられます。
本質安全防爆の配線をする際、混触を防ぐために制御盤内でエリアを分けるようにして配線する必要があります。
エリアが一目で分かるよう、ダクトは一般的な灰色ではなく青色が使用されます。
また同じバンドで束ねたり、同じ電線管に入れて配線することも出来ません。
端子台は配線がねじの緩みで外れたとしても接触しない構成にしなければなりません。
接地に注意
ツェナーバリアを使用する場合は接地端子をA種接地工事(10Ω以下)で行わなければなりません。
これはツェナーダイオードに流れる過電流を接地端子を通して第A種接地箇所に流すためです。
つまり接地が不十分だった場合、本質安全防爆構造が保たれず爆発事故に繋がる恐れがあります。
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