化学プロセスの勉強に"プロセスデザイン学生コンテスト"がオススメ!

広告

プロセスデザイン学生コンテストを知っていますか?文字通り、学生がプロセス設計の成果を競うコンテストです。

社会人になると当然参加はできないのですが、公開されている課題資料が相当勉強になります。

例えば第23回の資料には、スチレンモノマーの需要に始まり、プロセスの背景、反応の詳細、プロセス条件、設計上の注意点、原単位算出法が19ページにわたり解説されています。

各回のテーマや参考となる資料のリンクをまとめましたので、ぜひ活用ください。

プロセスデザイン学生コンテストって何?

プロセスデザイン学生コンテストは、与えられた条件の中でプロセスシミュレータも活用しながらプロセス設計の成果を競うコンテストです。

元々、第8回までは「ソフトウェア・ツール学生コンテスト」という名称で行われていました。当時はモデリング・シミュレーション部門(一般ソフトウェア・ツール部門)もあり、独自で開発したソフトウェアや既存のソフトウェアの新しい使い方や工夫について発表されていました。

現在は、プロセス設計を競うコンテストとして「プロセスデザイン学生コンテスト」と名称を変更して行われています。

プロセス全体のBFD、PFD、マテリアルバランスなども提出物として必要なため、学生の大会ながらも実務に近い成果が求められています。参考に2024年の提出物を紹介します。

  1. プロセス概要
    • 設計方針・特徴:設計方針、設計案の特徴を明示
    • ブロックフローダイアグラム (BFD):ブロック名、主成分、温度、圧力、相 (気液)、流量を記載
    • 各セクション概要:BFD上の各ブロックの簡単な説明
    • プロセスフローダイアグラム:各機器には機器番号や名称、機器間のストリームにはストリーム番号や名称、主なストリームの圧力や温度を記載
    • 物質収支表:各セクションの物質・エネルギー収支、操作条件を表にまとめる
  2. 各セクションの詳細
    • セクション概要:各セクションの設計方針、特徴を記載
    • 各プロセスユニット詳細:設計方針、代替案の検討過程を明確に記述
      • 反応器:タイプ、入口/出口条件、運転操作条件
      • 蒸留塔:段数、操作温度・圧力
      • 熱交換器:伝熱量、総括伝熱係数、入口/出口条件
      • 回転機:所要動力、電力・蒸気量、入口/出口条件
  3. ユーティリティシステム
    • 使用量の内訳:プラント全体の使用ユーティリティ量、機器ごとの使用量、投入エネルギー量に換算
  4. その他
    • 設計の妥当性・代替案の検討:設計の妥当性、未記述の事柄、特にアピールしたい内容を自由に記述
    • シミュレーションの工夫:物質収支・熱収支の精度向上、リサイクルポイントのストリーム情報

ここが勉強になる!

社会人になると当然参加はできないのですが、公開されている課題資料が相当勉強になります。

例えば第23回の「エチルベンゼンの脱水素によるスチレンモノマー製造プロセスの省エネルギー設計」を見てみます。

スチレンモノマーの需要に始まり、プロセスの背景、反応の詳細、プロセス条件、設計上の注意点、原単位算出法が19ページにわたり解説されています。

そして実は、一部の回では更に詳細の資料が公開されています。

  • 審査用資料(実際の提出課題)第7回および第11回
  • 原単位計算用エクセル第13回
  • プラント建設費推算方法と計算用エクセル第18回

過去の開催テーマ

過去に行われたコンテストの課題テーマを紹介します。

第10回および第11回はプロセスシミュレーション部門とプロセス設計部門の2部門制で実施されています。

  • プロセスシミュレーション部門:比較的細かな条件設定の下でのコンテスト
  • プロセス設計部門:原料と製品を限定して、そのプロセスの概念設計を行う

第12回以降はプロセスシミュレーション部門のみとなっています。

回数年度課題テーマ
第1回2002各人でのテーマ設定のみ
第2回2003各人でのテーマ設定のみ
第3回2004各人でのテーマ設定のみ
第4回2005メタンを出発原料とする、製造プロセスを設計
第5回20065成分(Propane、i-Butane、n-Butane、i-Pentane、n-Pentane)原料を各成分
に単離するための、最適な蒸留プロセスを設計
第6回2007トルエンの脱アルキル化プロセス
第7回2008エチルベンゼンの脱水素によるスチレンモノマーの製造
第8回2009クメン製造プロセスの設計
第9回2010酢酸製造プロセスの設計
第10回2011プロセスシミュレーション部門:C6-C9芳香族を含む留分よりパラキシレンを主とした芳香族の生産
プロセス設計部門:バイオ由来エタノールからプロピレンの合成
第11回2012プロセスシミュレーション部門:2-Butanol からのMEK(Methyl Ethyl Ketone)製造プロセスの設計
プロセス設計部門:バイオ原料由来エタノールからプロピレンの合成
第12回2013天然ガスを原料としたメタノール製造プロセスの設計
第13回2014天然ガスを原料としたアンモニアプロセスの設計
第14回2015MTP(Methanol To Propylene)プロセスの設計(メタノールからDME(Dimethylether)を経由してプロピレンを製造るプロセスの設計)
第15回2016トルエンの脱アルキル化プロセスの設計
第16回2017ベンゼンのアルキレーション反応によるエチルベンゼン製造プロセスの設計
第17回2018プロパンの脱水素反応によるプロピレン製造プロセスの設計
第18回2019エチレンオキシド製造プロセスの設計
第19回2020CO2を原料とするDMEプロセスの設計
第20回2021エタノールを原料とした1,3-ブタジエン製造プロセスの設計
第21回2022グリーンアンモニア製造プロセスの設計
第22回2023液相エチルベンゼン製造プロセスの省エネルギー設計
第23回2024エチルベンゼンの脱水素によるスチレンモノマー製造プロセスの省エネルギー設計
過去の開催テーマ

まとめ

プロセスデザイン学生コンテストの課題資料にはプロセス設計の参考になる様々な情報が含まれています。

社会人でも十分勉強になるため表から好きなテーマを選んで読んでみてください。

更に課題資料以外にも参考となるものがありますので活用ください。

  • 審査用資料(実際の提出課題)第7回および第11回
  • 原単位計算用エクセル第13回
  • プラント建設費推算方法と計算用エクセル第18回

オススメ書籍

・反応工学

反応工学や触媒化学を学ぼうと思ったらこの書籍です。
これを読めば基礎は十分身に付きます。
そして何より例題や演習問題、解答解説が十分に盛り込まれている点もオススメできる理由です。

反応工学
反応工学

www.amazon.co.jp

・化学工学ー解説と演習ー

化学工学を勉強したい!と思ったら真っ先にオススメしたい書籍です。
他の汎用化学工学書籍には無い「撹拌動力計算」や「撹拌伝熱計算」も記載されています。

化学工学―解説と演習ー
化学工学―解説と演習ー

www.amazon.co.jp

・化学プラント配管設計の基本

伝熱の種類、熱伝導の計算、熱交換器の種類について記載されています。
その他、化学工学の基本事項が解説された後、それらを踏まえて化学プラントにおける配管設計の基礎から詳細に解説される書籍です。
この1冊で配管設計を一通り勉強できます。

化学プラント配管設計の基本―配管技術者への道しるべ
化学プラント配管設計の基本―配管技術者への道しるべ

www.amazon.co.jp

記事への問い合わせはこちら

-化学工学

//