令和5年度 問27

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蛍石型構造とペロブスカイト型構造を持つ化合物に関する次のA~Eの記述のうち、不適切なものの組合せはどれか。

  1. 蛍石(CaF2)の結晶構造では、面心立方ブラベ格子の各格子点に3個のイオン(1個のCa2+と2個のF-)が配置されており、単位格子当たり12個のイオンがある。
  2. CaOやY2O3を固溶させたZrO2では、高温ではイオン半径が小さいZr4+の拡散係数が大きい。
  3. CaTiO3はペロブスカイト型構造を持ち、Ca2+とO2-が立方最密充填構造を形成し、Ti4+が頂点位置を、O2-が面心位置をそれぞれ占め、その体心位置にCa2+が配置されている。
  4. ペロブスカイト型構造を持つ化合物は立方晶とは限らずに、正方品、斜方晶、菱面体晶などの歪んだものも多い。
  5. Pb(Zr, Ti)O3はPbTiO3のTi4+の位置が不規則にZr4+に置換された結晶である。

選択肢

  1. A、B
  2. A、E
  3. B、C
  4. C、D
  5. D、E



解答解説

正答は3番です。

ジルコニウムの酸化物であるジルコニア(ZrO2)は代表的な耐火性セラミックス材料です。温度変化に伴い結晶型が変化し、純粋なジルコニア結晶では破壊が発生します。そのためCaOやY2O3のような金属酸化物を固溶させて相転移を抑制します。その際にZr4+側に酸化物イオン空孔が導入され、Zr4+の拡散係数は減少します(B)。高温域ではこの空孔を介して酸化物イオンが容易に移動できるため酸素センサーに応用されます。

チタン酸カルシウム(CaTiO3)はペロブスカイトという名の鉱物です。このペロブスカイト構造という結晶構造はこの鉱物が由来です。Ca2+とO2-が立方最密充填構造を形成し、Ca2+が頂点位置を、O2-が面心位置をそれぞれ占め、その体心位置にTi4+が配置されています(C)。CaTiO3は、正式には理想的なペロブスカイト型構造から少し歪んだ構造をしており立方晶ではなく直方晶に属します(D)。

参考資料

https://u.muroran-it.ac.jp/hydrogen/lec/Ceram03PPT.pdf
配位数と結晶構造|セラミックス材料学2019

u.muroran-it.ac.jp

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscta1974/27/4/27_4_186/_pdf
安定化 ジルコニアの低温熱容量 と格子欠陥

www.jstage.jst.go.jp

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mukimate1953/1994/251/1994_251_291/_pdf/-char/en
イットリアの物理と化学

www.jstage.jst.go.jp

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2024年3月11日