高分子の特性に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。
- 高分子液体において、遅い流動には液体のように振舞うが、速い流動にはあたかも固体のような抵抗力を示すものがあり、このような現象をチクソトロピーとよぶ。
- ゴムを急激に引張ると温度が上昇する。この現象はGough-Joule効果とよばれている。このような実験の結果から、ゴム状の物質の弾性は主に形態エントロピーがもたらすエントロピー弾性となる。
- 流体の構造がせん断速度の変化によって変化しない場合にニュートン流体となるが、せん断速度の変化により粘度が変化し流動性が増大する現象をダイラタンシーとよぶ。
- 高分子の多くは粘弾性体となり、一定ひずみを加えると、その応力は徐々に減少するクリープ特性を示し、逆に一定応力を加えるとそのひずみは徐々に増大する応力緩和を示す。
- 高分子の濃厚溶液や溶融体は粘弾性流体であり、このような中で棒を回転させると液体が棒に巻きつきながらはいあがるという現象が生じ、この現象はバラス効果やダイスウェルとよばれている。
解答解説
正答は2番です。
この問題はレオロジー(流動学)についての内容です。レオロジーにおいて与える力によって粘度の変わらないものを「ニュートン流体」、与える力によって粘度が変わるものを「非ニュートン流体」と呼びます。3番における前半ニュートン流体の説明は正しく、後半が誤っています。
非ニュートン流体は、力を加えた時の粘度の変化に着目して大きく3種類に分類されます。
- ビンガム流体:ある程度の力を加えるまで動かず、動き出すとニュートン流体としてふるまう
- 擬塑性流体:力を加えることで粘度が下がる
- ダイラタント流体:力を加えることで粘度が上がる
力を加えてからの時間経過に伴う粘度変化に着目して、更に2種類の分類がされます。
- チキソトロピー流体:一定の力をかけ続けることで粘度が下がり、その後に一定時間放置すると元の粘度に戻る
- レオペクシー流体:一定の力をかけ続けることで粘度が上がる
上記を踏まえ、1番はダイラタンシー、3番はチキソトロピーを表すため説明が逆です。
ゴムのような弾性の性質と、流動を兼ね備えた性質は粘弾性と呼びます。物体に一定の外力を与えることによってひずみ(変形)が進行する過程をクリープ、物体に一定のひずみを与えることによって生じた応力が低下する過程を応力緩和と言います。4番が説明が逆です。
5番の粘弾性流体を棒でかき混ぜると流体が棒に絡みついて這い上がる現象はワイゼンベルグ現象と呼びます。ちなみにバラス効果(ダイスウェル)は粘弾性の物質が管から放出されるときに出口で管径よりも大きくなる現象です。
参考資料
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文系でもわかるレオロジー
www.primix.jp
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粘弾性基礎講座|第2回 クリープと応力緩和
www.ubm-rheology.co.jp
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【流体】粒子法あれこれ vol.6|液体と固体のハザマ
www.sbd.jp