令和4年度 問2

Diels-Alder付加環化反応に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 反応の立体化学の特徴として、ジエンとジエノフィルがエキソ体でなく、エンド体を生成するように配列する。
  2. 反応は環状の遷移状態を経由して進行し、すべての結合の変化が多段階に起こり、中間体を生成する。
  3. 例として示した上記反応は、室温か又はそれより少し高い温度で進行し、立体特異的にトランス二置換シクロヘキセンのみを与える。
  4. [4+2]電子の反応と同様に、2つのアルケン間の[2+2]付加も熱反応によって進行する。
  5. 反応は、アルケン成分(ジエノフィル)に電子供与基があると速く起こる。

解答解説

正答は1番です。

Diels-Alder反応をするとき、ジエンと反応するアルケンやアルキンはジエノフィルと呼ばれます。

Diels-Alder反応は通常、立体的に込み合いひずみが大きい状態にも関わらずエンド付加物を優先的に生成します。これは二次的軌道相互作用と呼ばれるジエンとジエノフィル間での引力的な相互作用により結合形成前の位置関係が固定されるためです。

エンド付加物は動力学的に有利ですが、熱力学的にはエキソ付加物の方が安定な場合があります。エンド則は、Diels-Alder反応の重要な特徴の1つとして広く認識されています

1番の反応は、環形成後も立体構造がそのまま反映されることからシス二置換シクロヘキセンが得られます。

2番について、Diels-Alder反応は協奏的に進行し、中間体を経由しません。

3番について、[2+2]付加は熱反応では起こりにくく、通常は光化学反応で進行します。両分子のπ軌道の位相が重ならなければ反応は進みません。[2+2]付加の場合、光により片方の分子のπ電子を励起させることで位相が重なり反応が進みます。

4番について、Diels-Alder反応は、ジエンのHOMOとジエノフィルのLUMOのエネルギー差が小さいほど反応が進みます。つまりジエンに電子供与基をつけてHOMOのエネルギーを上げ、ジエノフィルに電子吸引基をつけてLUMOのエネルギーを下げた場合に反応が速く進行します。

参考資料

https://www.maruzen-publishing.co.jp/contents/yukiplus/book_magazine/yuki/web/mokuji/pdf/wch-24.pdf
ウェブチャプター24 ペリ環状反応

www.maruzen-publishing.co.jp

2024年3月11日 広告

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