石油の精製プロセス次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 接触分解プロセスは、沸点の高い重質炭化水素を選択的に分解し、付加価値の高い留分を得るプロセスである。
- FCC(流動接触分解)装置により、1970年以降、重油需要の低下や白油需要の増加に対応するため、残油の混合処理が開始された。
- 接触改質装置は、最も代表的な高オクタン価基材製造装置であると同時に、石油化学原料(BTX)製造装置でもある。
- 接触改質装置では、反応圧力を高くすることによって、改質ガソリン(リフォーメート)の得率アップを図っている。
- アルキレーションプロセスは、商業的には硫酸やフッ化水素等の酸を触媒として用いる接触アルキル化プロセスが開発され、広く普及している。
解答解説
正答は4番です。
接触改質装置は主反応が吸熱反応であるため、圧力ではなく温度を高くすることによって得率アップを図っています。
石油精製は、原油(粗油)から様々な石油製品を分離・精製する工程のことを指します。その際に行われるのが蒸留、水素化精製、接触分解、接触改質等のプロセスです。
まず原油は常圧蒸留装置でLPG、ナフサ、灯油、軽油、常圧残油などの各留分に分けられます。常圧残油、もしくは軽油と混ぜた石油製品は重油と呼ばれます。
常圧残油(留分にならなかったもの)は、減圧蒸留装置にて沸点を下げた状態で蒸留することで潤滑油原料、間接脱硫原料、分解原料、アスファルト又は減圧残油などに分けます。
重油留分は流動接触分解装置により固体触媒存在下で分解し、より低沸点であるLPG留分、ガソリン留分及び中間留分を得ます。クラッキングとも呼ばれます(1番)。
各種留分は水素化精製(水素化脱硫)装置にて、含有する不純物(特に硫黄分)を取り除きます。固体触媒中で高圧水素と反応させることで硫黄、窒素、酸素の不純物がそれぞれ硫化水素、アンモニア、水となって分離されます。この時、炭化水素も反応し、飽和や水素化分解などが起きます。またナフサは、石油化学用原料の「軽質ナフサ」とガソリン基材の「重質ナフサ」に分けられます。
常圧蒸留装置や接触分解装置から得られたLPGはアルキレーション装置でオクタン価が高められます。パラフィン系炭化水素(イソブタンなど)と、オレフィン系炭化水素(プロピレンやブチレンなど)との反応により、高オクタン価のイソパラフィンを得ます。高温高圧無触媒で製造するプロセスもありますが、商業的には硫酸やフッ化水素等の酸を触媒として用いる接触アルキル化プロセスが広く普及しています(5番)。
脱硫処理された”重質”ナフサは接触改質装置でオクタン価を高め芳香族主体のガソリン基材に改質(リフォーミング)します。そのため接触改質プロセスはベンゼン・トルエン・キシレン(BTX)製造プロセスにもなっています(3番)。シクロパラフィンの脱水素化や、パラフィンの環化脱水素化、異性化などにより、主に芳香族と水素が得られます。この時に得られる水素は他工程での水素供給源となります。
参考資料
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石油精製技術と石油需給動向 ~現状と今後の見通し~
oilgas-info.jogmec.go.jp
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製油所精製工程の概要
www.eneos.co.jp
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アルキレーション
oilgas-info.jogmec.go.jp