ラジカル重合の素反応に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- ラジカル重合は開始反応、生長反応、停止反応、連鎖移動反応からなる連鎖重合反応である。
- 熱や光によりラジカル重合開始剤から生成したラジカルの活性が高すぎるとモノマーと反応する前に消失し、逆に生成したラジカルが安定すぎるとモノマーと反応しないこともある。そのため、ラジカル重合では適切な寿命を持ったラジカルが重要である。
- 生長反応とは、開始反応で生成したラジカル種がモノマーと連続的に反応することで高分子鎖が形成される反応のことである。
- 停止反応には再結合停止と不均化停止があり、不均化停止したポリマーの分子量は再結合停止したポリマーの2倍となる。
- エチレンのラジカル重合における分子内連鎖移動反応は低密度ポリエチレンにおける枝分かれ構造形成の原因となっている。
解答解説
正答は4番です。
不均化停止では、2つの成長ラジカル鎖の間で水素原子が移動し、1つの鎖は二重結合で終端し、もう1つの鎖は飽和結合で終端します。対して再結合停止では、2つの成長ラジカル鎖が結合して1つの長い鎖になります。よって再結合停止したポリマーの分子量は不均化停止したポリマーの2倍となり、選択肢の記載は逆です。
5番のエチレンのラジカル重合について、成長中のポリマー鎖の末端にある1級ラジカルが、同じ鎖の内部の水素原子を引き抜き、より安定な2級ラジカルを形成します。新たに形成された2級ラジカルは、さらにエチレンモノマーと反応して側鎖を形成し始めます。この過程が繰り返されることで、ポリマー鎖に多数の枝分かれが生じます。このエチレンポリマーを低密度ポリエチレン(LDPE)と呼びます。
チーグラー・ナッタ触媒を用いた重合では、このような分子内連鎖移動反応が抑制され、枝分かれの少ない直鎖状の高密度ポリエチレン(HDPE)が生成します。
参考資料
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ラジカル重合とは?
mascket.com
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Radical Chain-Growth Polymerization
chem.libretexts.org