平成29年度 問18

高分子の構造に関する次の記述の下線部のうち、最も不適切なものはどれか。

 1 熱可塑性高分子は高温では融液の状態を示す。このうち、2 ポリエチレンのような結晶性高分子の融液の温度を下げていくと、融点で結晶化を伴いながら固体となる。しかし、全ての領域で結晶化するわけではなく、3 分子鎖が無秩序に存在する非晶領域がある。この段階では一部の高分子鎖は運動可能であるが、さらに温度が下がると、高分子鎖の運動が凍結された状態になる。この高分子鎖の運動が凍結される温度をガラス転移温度といい、この温度付近では線膨張率、比熱容量、比体積、屈折率などの温度依存性が変化する。4 ガラス転移は熱力学的な相転移の一種であり、その温度は高分子の繰返し単位の化学構造の影響を受ける。例えば、比較的柔軟な主鎖を持つポリエチレンのガラス転移温度は0℃以下の低い値であるが、ポリカーボネートのように芳香環などが導入され、5 主鎖が剛直になると高分子のガラス転移温度は上昇する

解答解説

正答は4番です。

ガラス転移は熱力学的な相転移ではありません。分子運動の凍結による動力学的な現象であり、二次転移と呼ばれることもあります

ガラス転移温度を上げるためのパラメータとして「嵩高く固い置換基を導入する」ことと「アルキル鎖を長くする」ことが挙げられます。

参考資料

http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/sangaku_polymer/pdf/B/B-01.pdf
高分子の熱的特性

www.chem.eng.osaka-u.ac.jp

2024年3月10日 広告

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