平成25年度 問2

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ベンゼンの反応に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。特に断りのない限り、反応は常圧下で行われるものとする。

  1. 常温で臭素と混合させるだけで、ブロモベンゼンを良好な収率で合成できる。
  2. 液体アンモニアとエタノールの混合溶媒中、低温でリチウムを加えて反応させると、エトキシベンゼンを高収率で得ることができる。
  3. 塩化アルミニウム存在下に1-クロロブタンを0℃で反応させた場合、n-ブチルカチオンと2-ブチルカチオンを経由して、sec-ブチルベンゼンとn-ブチルベンゼンの約2:1の混合物が得られる。
  4. 共鳴安定化されているベンゼンは、反応活性が高く、エタノール中でパラジウム触媒を用いて室温で接触水素化を行うと、シクロヘキサンを容易に得ることができる。
  5. 0℃において発煙硫酸でスルホン化した後、室温で水酸化ナトリウム水溶液を用いて処理すると反応が容易に進行し、フェノールが良好な収率で得られる。



解答解説

正答は3番です。

ベンゼンは共鳴安定化されているため、反応性が低くなっています(4番)。常温では臭素と容易に反応しません。ブロモベンゼンを合成するには、通常、触媒(例:FeBr3によるフリーデルクラフツ反応)が必要です(1番)。またパラジウム触媒を用いた接触水素化によってシクロヘキサンを得ることは可能です

2番の反応条件はバーチ還元です。ベンゼン環が1,4-シクロヘキサジエンに還元されます

3番の反応はフリーデルクラフツのアルキル化反応です。塩化アルミニウムの作用により、1-クロロブタンからn-ブチルカチオンが生成します。n-ブチルカチオンは不安定であるため、より安定な2-ブチルカチオンへ転位するためsec-ブチルベンゼンの方が生成比率が高くなります。

5番のフェノール合成方法ではフェノールは得られません。ベンゼンのスルホン化後、水酸化ナトリウムとの反応(アルカリ融解)には通常300℃程度の高温が必要です。また、この反応ではナトリウムフェノキシドが生成し、フェノールを得るにはさらに二酸化炭素を通す必要があります。

参考資料

https://www1.meijo-u.ac.jp/~tnagata/education/ochem2/2021/ochem2_08.pdf
第 8 回「芳香族求電子置換反応 (1)」

www1.meijo-u.ac.jp

バーチ還元 Birch Reduction | Chem-Station (ケムステ)
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https://benesse.jp/kyouiku/teikitest/kou/science/chemistry/k00608.html
フェノールの製法【芳香族化合物の性質】

benesse.jp

2024年3月10日