平成23年度 問4

シクロアルケンの反応に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 1, 2-ジメチルシクロペンテンを四酸化オスミウムと反応させたのち、亜硫酸水素ナトリウム水溶液で処理して trans-1, 2-ジメチル-1, 2-シクロペンタンジオールが得られた。
  2. シクロヘキセンからm-クロロ過安息香酸との反応でエポキシドを合成し、これを酸性水溶液で処理して cis-1, 2-シクロヘキサンジオールに誘導した。
  3. シクロヘキセンをトリフルオロ過酢酸との反応でエポキシドを合成し、これを水酸化カリウム水溶液で処理して trans-1, 2-シクロヘキサンジオールに誘導した。
  4. シクロヘキセンをオゾンと反応させた後に過酸化水素を用いて酸化的に後処理すると、シクロヘキサノンが得られた。
  5. シクロペンテンに臭素を反応させたところ、cis-1, 2-ジブロモシクロペンタンが主生成物として得られた。

解答解説

正答は3番です。

1番の四酸化オスミウムによるアルケンのジオール化はcis体が生成します。四酸化オスミウム1分子がアルケンの2つの炭素に対し同じ方向から付加するためです。

2番のエポキシドの酸存在下による開環反応は、水の付加がSN2機構で進むことからcis体ではなくtrans体が生成します。対して3番の記載は正しいものとなっています。

4番のオゾンとの反応は、オゾン分解反応が起こります(ハリースオゾン分解)。オゾン分解では、二重結合が切断され、中間体としてオゾニドが生成します。この中間体を過酸化水素などの酸化剤で処理すると、カルボニル化合物が生成します

5番のアルケンへの臭素付加反応はtrans体が生成します。臭素分子は分極しておらず、アルケンのπ電子が近づくことで一時的に分極することで反応します。臭素原子はアルケンの2つの炭素原子と同時に結合を作る特徴があり、C-Br+-Cの三員環を形成します。環とは反対側にもう一つの臭素が結合するためtrans体となります。

参考資料

四酸化オスミウム Osmium Tetroxide (OsO4) | Chem-Station (ケムステ)
四酸化オスミウム Osmium Tetroxide (OsO4)

www.chem-station.com

https://www.maruzen-publishing.co.jp/contents/yukiplus/book_magazine/yuki/web/mokuji/pdf/w14-4.pdf
https://www.maruzen-publishing.co.jp/contents/yukiplus/book_magazine/yuki/web/mokuji/pdf/w14-4.pdf

www.maruzen-publishing.co.jp

ハリース オゾン分解 Harries Ozonolysis | Chem-Station (ケムステ)
ハリース オゾン分解 Harries Ozonolysis

www.chem-station.com

https://www1.meijo-u.ac.jp/~tnagata/education/ochemb/2021/ochemb_15.pdf
アルケンへのハロゲンの付加・立体化学

www1.meijo-u.ac.jp

2024年3月9日 広告

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