技術士を取得すると業務や資格取得において有利になる点があります。
今回は技術士の中でも化学部門に絞ってをまとめてみました。
また「勉強になる」など曖昧な内容ではなく、確実に与えられる特典のみを取り上げています。
「技術士」であると名乗れる
技術士法第57条第1項にて「技術士」と名乗れるのは技術士だけであることが規定されています。
(名称の使用の制限)
技術士法第五十七条
第五十七条 技術士でない者は、技術士又はこれに類似する名称を使用してはならない。
2 技術士補でない者は、技術士補又はこれに類似する名称を使用してはならない。
これに違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます。
第六十二条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
技術士法第六十二条
一 第十六条(第二十九条第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、不正の採点をした者
二 第三十六条第二項の規定により技術士又は技術士補の名称の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、技術士又は技術士補の名称を使用したもの
三 第五十七条第一項又は第二項の規定に違反した者
更に、登録している部門、今回だと「技術士化学部門」であるとしか名乗ってはいけません。
(技術士の名称表示の場合の義務)
技術士法第四十六条
第四十六条 技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。
このような、名乗ることに制限のある資格は名称独占資格と呼ばれます。
高度な専門的応用能力をもつエンジニアであることを証明できる手段となります。
業務に関する特典
技術士として登録することで、公的な業務に関われるようになります。
対象が技術士とあるものについては、二次試験合格者ではなく、合格後に技術士として登録した者を指します。
関係機関 | 資格の名称 | 対象 | 内容 |
---|---|---|---|
厚生労働省 | 労働契約期間の特例 (専門的知識等を有する労働者)(労働基準法) | 技術士 | 労働基準法では、有期労働契約の期間の上限を原則3年と定めているが、上限5年に延ばせる(参考)。 |
経済産業省 (中小企業庁) | 中小企業・ベンチャー総合支援事業派遣専門家として登録される専門家 (中小企業支援法) | 技術士 | 中小企業やベンチャー企業へ派遣され、抱える経営課題や技術的な問題の解決を支援する(参考)。 |
大阪府、埼玉県、千葉市、市原市、川崎市、那覇市 他 | 廃棄物処理施設の技術管理者 | 技術士 | 一般(もしくは産業)廃棄物処理施設に設置が義務付けられている国家資格。廃棄物の分類から処理、最終処分に至るまでの各段階を管理する(参考)。 |
東京都環境局 | 東京都1種公害防止管理者 (都民の健康と安全を確保する環境に関する条例) | 技術士 (東京都1種公害防止管理者講習会修了者) | 一般に法律で定められる公害防止管理者だけでなく東京都は条例に基づく公害防止管理者も設置する。公害発生の可能性が高いと考えられる工場の管理を行う(参考)。 |
裁判所 | 鑑定人 | 技術士 (各裁判所から鑑定人等の推薦依頼がある) | 求められた鑑定事項に専門家の立場からの意見を述べる。鑑定書の提出を求めら れるのが一般的。 |
裁判所 | 専門委員 | 技術士 (各裁判所から鑑定人等の推薦依頼がある) | 裁判所が任命する非常勤の裁判所職員(特別職の国家公務員)として、指定を受けた事件について各訴訟手続きで必要な専門的知見に基づく説明を行う。任期 2 年。 |
裁判所 | 調停委員 | 技術士 (各裁判所から鑑定人等の推薦依頼がある) (40歳以上70歳未満の年齢制限がある) | 裁判所が任命する非常勤の裁判所職員(特別職の国家公務員)として、調停委員会のメンバーとなり、調停に専門家の立場から関与する。 |
資格に関する特典
業務以外にも、技術士試験に合格することで別の資格試験を免除されることがあります。
対象が技術士とあるものについては、二次試験合格者ではなく、合格後に技術士として登録した者を指します。
資格の名称 | 免除事項 | 対象 | 内容 |
---|---|---|---|
消防設備士 (甲種・乙種) | 筆記試験一部免除 | 第二次試験合格者 | 施設に設置されている消防設備の点検・整備をする国家資格。乙種は消防設備の点検・整備のみ。甲種は設置・交換作業も行う(参考)。 |
消防設備点検資格者 (特種・第1種・第2種) | 受講資格を認定 | 第二次試験合格者 | 消防設備の点検とその結果を管理者に報告できる国家資格。第1種が機械系統、第2種が電気系統、特種が特殊消防用設備等の点検を行える。消防設備士と異なり点検のみで交換等は不可(参考)。 |
労働安全コンサルタント | 筆記試験一部免除 | 第二次試験合格者 | 事業所の安全状況の診断、改善案の策定、安全管理システムの監査及び教育を行う国家資格。労働災害を未然に防ぐ役割を担う。(参考)。 |
労働衛生コンサルタント | 受験資格を認定 | 第二次試験合格者 | 労働者の安全・衛生水準の向上のために、労働環境の評価や改善計画の策定、指導を行う国家資格。労働者の衛生面・健康面の問題を未然に防ぐ役割を担(参考)。 |
作業環境測定士 (第1種・第2種) | 筆記試験一部免除 | 第二次試験合格者 | 職場の有害物質を測定・分析し、労働環境の改善を図る業務を行う国家資格。第2種はデザイン、サンプリングおよび簡易測定器を用いた分析ができ、第1種は厚生労働省令で定める機器を用いた分析・解 析も行える(参考)。 |
廃棄物処理施設技術管理者 | 申請資格を認定 | 技術士 | 一般(もしくは産業)廃棄物処理施設に設置が義務付けられている国家資格。廃棄物の分類から処理、最終処分に至るまでの各段階を管理する(参考)。 |
弁理士 | 筆記試験(論文式)一部免除 | 技術士 | 知的財産権に関する業務が行える国家資 格。特許や商標、意匠の出願手続きを代理する。知的財産権に関する相談や助言も行う(参考)。 |
特定工場における公害防止管理者 (ばい煙発生施設、汚水等排出施設、騒 音発生施設、振動発生施設、特定粉じん発生施設、一般粉じん発生施設、ダイオキシン類発生施設) | 受講資格を認定 | 技術士 | 公害発生の可能性が高いと考えられる工場の点検及び管理、有害物質の監視及び報告業務等の公害防止業務を行うことができる(参考)。 |
まとめ
化学部門は建設部門などと比べると資格取得後の直接的な金銭的メリットは少ない傾向にあります。
それでも十分なメリットがあることから、特典をうまく活用して「技術士」×「別の資格」×「公的業務実績」としてキャリア形成に活用ください。
参考資料
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