装置・配管の材質の選び方

配管・材料/材料選定材料選定の1本目(全1本)公開

装置や配管の材質は、温度と圧力で候補を絞ってから液に耐えるものを選びます。液の種類から引く早見表と材質ごとの弱点、腐食の型の見分け方をまとめました。表は化学工学便覧などから組み直した目安なので、最後は濃度・温度・不純物まで合わせた腐食データと使用実績で決めます。

材質を選ぶ順番

  1. 設計温度と圧力から、強度とじん性で鋼種の範囲を決めます。低温は−45℃まで細粒のアルミキルド鋼で、それより低いとNiを2〜9%加えた鋼やオーステナイト系ステンレスを使います。高温は450℃を超えるとMoやCrを加えた低合金鋼(C-Mo鋼・Cr-Mo鋼)、600℃を超えるとオーステナイト系ステンレスが候補です。
  2. 液の主成分・濃度・温度から、全面腐食に耐える材質を選びます。腐食速度が分かれば、使う年数分の減肉を腐れしろで見込めるかも考えます。
  3. 塩化物・すき間・溶接部・引張応力を確かめ、孔食やすき間腐食、応力腐食割れ、粒界腐食が起きないかを見ます。
  4. 微量の成分(酸化剤・塩化物・フッ化物)と流速、液が濃縮や凝縮をする場所を確かめます。
  5. フランジ・ボルト・継手など、つなぐ相手の材質との組み合わせを見ます。
  6. 腐食データ集を複数引いて使用実績と照らし、足りなければ実際の液で試験します。
この記事の内容
  1. 液の種類から引く材質の早見表
  2. 材質ごとの強みと弱点
  3. 腐食の型と見分け方
  4. ステンレスは塩化物で穴があき割れる
  5. 溶接部の鋭敏化とL材の使いどころ
  6. 異種金属をつなぐ所の腐食
  7. 腐食表の「耐える」には条件がある
  8. ライニングは温度と真空と透過で決まる
  9. 参考資料

液の種類から引く材質の早見表

便覧の耐食性の表(50℃)と各資料から組み直した目安です。同じ液でも濃度と温度が変われば答えが変わるので、条件は表の下の出典で確かめてください。

液・環境 まず考える材質 ほかの候補(条件つき) 避けたい材質
中性の水(工業用水・冷却水) 炭素鋼(循環冷却水は防食剤と組み合わせる)、SUS304 塩化物が多いならSUS316、管壁が熱いなら二相やフェライト系 塩化物が濃縮する高温部のSUS304
海水・塩化物の多い水 チタン 孔食指数35以上の高合金ステンレス、銅合金(海水冷却器) SUS304・SUS316
塩酸 フッ素樹脂ライニング、グラスライニング Ni-Mo系ニッケル合金(酸化剤が無いこと)、Pd入りチタン(薄く温度の低い液) 炭素鋼、ステンレス
希硫酸(10%前後) 樹脂ライニング、グラスライニング ニッケル合金、Cuを加えた高Ni・高Moのステンレス(室温) 炭素鋼、SUS304・SUS316
濃硫酸(88〜99.5%) 炭素鋼(流速を抑える) グラスライニング、フッ素樹脂ライニング(データ集で確かめる) 水が入って薄まる所の炭素鋼
硝酸 SUS304L チタン、Crを増した極低炭素の25Cr-20Ni系 炭素鋼、Ni-Mo系ニッケル合金
酢酸・ギ酸 SUS316(溶接するならSUS316L) SUS304(薄い酢酸) 炭素鋼、黄銅
苛性ソーダ 炭素鋼(常温) ニッケル・ニッケル合金(高温)、ステンレス(高温では使える範囲が狭い)、チタン(77℃を超えpH12以上なら水素ぜい化に注意) グラスライニング、アルミニウム、不飽和ポリエステル
フッ酸 炭素鋼(70%以上) フッ素樹脂ライニング(透過に注意) グラスライニング、チタン
有機溶剤(アセトン・ベンゼン・アルコール類。塩素系を除く) 炭素鋼、ステンレス フッ素樹脂 硬質塩化ビニル・ポリエチレン・ネオプレンゴム(アセトンとベンゼン)、不飽和ポリエステル

中性の水と海水の行は、化学工学便覧の28·1·2〜28·3·1と『事例で探すステンレス鋼選び』pp.104〜105によります。酸・アルカリ・溶剤の行は、便覧の表28·4(50℃の試験)・表28·10・図28·10が元です。チタンは新日鉄住金技報 第396号とTIMETの資料、フッ素樹脂の透過はニチアス技術時報で確かめました。

材質ごとの強みと弱点

孔食指数は、便覧の代表組成から計算したCr+3.3Moの値です。

材質 向く条件 弱点・使えない条件 数値の目安
炭素鋼 中性の水、常温のアルカリ、濃硫酸、70%以上のフッ酸 酸の多く、塩化物の多い水、皮膜がはがれる速い流れ、高温の強アルカリ(溶接部が割れる) 設計温度−10〜350℃なら軟鋼など。割れの対策は600〜650℃の熱処理で溶接の残留応力を除く
SUS304・SUS304L 中性の淡水、硝酸、薄い酢酸 塩化物(孔食・すき間腐食・応力腐食割れ)、塩化物を含む非酸化性の酸でpH2未満 孔食指数 約19
SUS316・SUS316L Moを含み、SUS304より孔食と酸に強い(酢酸・ギ酸) 海水の孔食は防げない。塩化物の応力腐食割れも残る 孔食指数 約25
二相ステンレス(SUS329J4Lなど) 孔食に強く、塩化物の応力腐食割れが起きにくい。強度が高い 250〜500℃に長くさらすとぜい化する(475℃ぜい化) 孔食指数 約35
ニッケル合金 Ni-Mo系は塩酸などの還元性の酸、Ni-Cr-Mo系は酸化性の環境まで。ニッケルは高温の強アルカリ Crを含まないNi-Mo系とNi-Cu系は、3価の鉄イオンなどの酸化剤で腐食が速まる Niが35%以上なら塩化物の応力腐食割れは起きにくい
チタン 海水・塩化物の水(孔食を起こさない)、硝酸などの酸化性の酸 高温・高濃度の塩化物でのすき間腐食、pHの低い塩酸や硫酸、フッ化物を含む酸、77℃を超えるpH12以上のアルカリ(水素ぜい化) Pd入り(JIS 12種、Pd 0.12〜0.25%)はすき間腐食と非酸化性の酸に強い
フッ素樹脂ライニング(PFA・PTFE) ほぼすべての工業薬品 真空でシートが変形・はく離する。塩酸やフッ酸は透過して外側の鋼を傷める ニチアスの資料ではPFA樹脂の260℃に対し、ライニング配管は180℃、タンクは150℃まで
グラスライニング フッ酸を除く酸、溶剤 フッ酸、アルカリ、急な加熱と冷却、外からの衝撃 熱衝撃の規格(ISO 28721-3)の対象は−25〜230℃
  • 炭素鋼:便覧 28·2·1(耐食になる液、応力腐食割れと600〜650℃の熱処理)、表28·13(設計温度と鋼種)。
  • ステンレスの孔食指数:便覧 表28·5の代表組成から計算。脱不働態化pHは『事例で探すステンレス鋼選び』pp.96〜97(25〜30℃の食塩水での値)。
  • 二相の475℃ぜい化:大阪大学の博士論文(坂田、2023年)の審査要旨。
  • ニッケル合金:便覧 28·1·2、28·2·1、図28·10。
  • チタン:新日鉄住金技報 第396号、北海道大学の博士論文の要旨、TIMETの資料(アルカリでの水素ぜい化)。
  • フッ素樹脂ライニング:ニチアスのカタログ(2026年6月)と技術時報 2017 No.2。
  • グラスライニング:便覧 表28·4・表28·10・28·2·3、ISO 28721-3の適用範囲。

腐食の型と見分け方

現場で見る主な腐食の型を、見た目と起きやすい組み合わせで並べました。

型 見た目・起きる場所 起きやすい組み合わせ 先に打つ手
全面腐食 表面がほぼ一様に減る 酸と炭素鋼、塩化物を含む非酸化性の酸(pH2未満)とSUS304などの18-8ステンレス 腐食速度から寿命を出し、腐れしろを足すか材質を上げる
孔食 入口が小さく、中でとっくり状に広がる穴 ステンレスと塩化物 孔食指数の高い鋼種かチタンに替える
すき間腐食 管と管板の間などのすき間、堆積物の下 ステンレス・チタンと塩化物(高温ほど起きやすい) すき間と液だまりを作らない。Pd入りのチタン
応力腐食割れ 引張応力のかかる所の細い割れ。溶接部の近くに多い オーステナイト系ステンレスと塩化物、炭素鋼と高温の強アルカリ・硝酸塩 二相系やフェライト系に替える。応力を除き、温度と塩化物を下げる
粒界腐食 結晶粒界に沿って侵される。溶接の熱影響部に出る 450〜800℃を通って鋭敏化したステンレス L材(C0.030%以下)か、TiやNbを加えた安定化鋼
異種金属接触腐食 つないだ所の近くで、電位の低い金属の側が減る ステンレスと炭素鋼・黄銅(淡水中) 絶縁ガスケットと絶縁ボルト。塗るならステンレスの側
エロージョン・コロージョン エルボなど、流れが速く乱れる所の減肉 皮膜で守られる金属(炭素鋼・銅合金など)と速い流れ 流速を抑える。ステンレスやチタンに替える

見た目と起きる場所は、便覧の28·1·2〜28·3·1と『事例で探すステンレス鋼選び』pp.101〜103・122に基づきます。

ステンレスは塩化物で穴があき割れる

ステンレスの表面を守る不働態皮膜は塩化物に弱く、孔食・すき間腐食・応力腐食割れを起こします。CrとMoとNを増やすほど孔食に強くなり、その度合いを孔食指数で比べます。

孔食指数 PREN[無次元]

$$\mathrm{PREN}=\mathrm{Cr}+3.3\left(\mathrm{Mo}+0.5\mathrm{W}\right)+16\mathrm{N}$$

式は横にスクロールできます

PREN:孔食指数[無次元]、Cr・Mo・W・N:各元素の含有量[質量%]

国際モリブデン協会(IMOA)が示す式で、フェライト系では16Nの項を入れません。便覧の代表組成でCr+3.3Moを計算すると、SUS304が約19・SUS316が約25・SUS317が約31です。二相のSUS329J4Lは約35で、窒素の分を足すとさらに上がります。

『事例で探すステンレス鋼選び』には、すき間を付けた試験片を実際の海水に4600時間浸した試験が載っています。Cr+3.3Moが35以上の鋼種では孔食が出ていません。SUS304やSUS316では海水の孔食は防げず、高い鋼種でも溶接の熱影響部は傷みます。

同書によると、応力腐食割れは60℃以上の温水を扱う熱交換器管や高温の海水を扱う機器に起きます。塩化物は蒸発やすき間で濃縮するので、平均の濃度が低くても油断できません。便覧には、SUS304製の冷却水熱交換器で割れた範囲の図があります。水がチューブの外側を流れる縦置きの形では、塩化物20ppm以上で管壁30℃前後から割れの範囲です。6ppm前後の水でも、70℃前後から先は割れの範囲に入ります(図から読んだ値)。

割れやすさはNiの量と関係が深く、Niを含まないフェライト系とNiの少ない二相系は割れにくい材料です。同書は保温材の下の割れも取り上げています。ガラス繊維の保温材は海塩をため込み、ウレタン系には塩化物を数千ppm溶かし出す難燃剤を含むものもあります。材料の対策は、SUS304をSUS316L(炭素の少ない316)に替えることです。保温材は塩化物を含まないものにし、外装で海塩や雨水を防ぎます。

溶接部の鋭敏化とL材の使いどころ

ステンレスを450〜800℃に保つと、結晶粒界にCrの炭化物ができてまわりのCrが減ります。溶接・熱間加工・高温の運転で起こるこの変化が鋭敏化で、粒界腐食と粒界割れの原因です。

炭素を0.030%以下にしたL材(SUS304L・SUS316L)は、鋭敏化が始まるまでの時間を延ばします。溶接のような短い加熱には効きます。ただし450〜800℃で長く使う装置では、鋭敏化を遅らせるだけです(便覧の図28·5)。TiやNbを加えた安定化鋼(SUS321・SUS347)を使う方法もあります。

L材と通常材の許容引張応力の差は、規格・鋼種・温度で変わります。一例は、小型ボイラー及び小型圧力容器構造規格第34条第2項の鋼板の表です。

SUS304LHP・LCPはSUS304HP・CPより100℃で104対109 N/mm²となり、約5%低い値です。400℃では57対72 N/mm²で、約21%低くなります。

許容引張応力が低ければ、同じ圧力で必要な肉厚は増えます(配管の許容引張応力)。許容引張応力の値は、規格と告示の改正で変わります。2026年4月からは圧力容器構造規格などの告示で、許容引張応力の計算に使う安全係数が4から3.5に改められました。法令の要求は、所轄の行政と最新の条文で確かめてください。

異種金属をつなぐ所の腐食

炭素鋼や黄銅と組むと、ステンレスは電位の高い(貴な)側になり、相手の金属が先に腐食します。淡水中でステンレス継手と組んで危ないのは、炭素鋼管と黄銅の配管です。ステンレス同士や銅管とのつなぎは、障害になりにくい組み合わせです。

塗装で防ぐなら、腐食する炭素鋼の側よりステンレスの側を塗る方が効きます。腐食する側(アノード)の面積を相手より小さくしないことも、組み方の要点です。材質の違うフランジとボルトは、有機材料のガスケットか絶縁ボルトで電気的に切り離せます。腐食の起こり方は配管の腐食原因と対策にまとめています。

腐食表の「耐える」には条件がある

代表的な腐食データ集のCorrosion Data Surveyは、ビーカーでの試験の結果です。純粋な成分と沸点より低い温度が中心で、不純物・流れ・沸点を超える温度・時間の影響は入っていません。そのため複数のデータ集を引き、使用実績と比べます。便覧の表28·4の記号を腐食速度に直すと、下の表になります。

記号 便覧の基準(金属) mm/年に直した値
◎ 2×10⁻³インチ/年未満 0.05未満
○ 20×10⁻³インチ/年未満 0.5未満
△ 50×10⁻³インチ/年未満 1.3未満
× 50×10⁻³インチ/年を超える 1.3を超える

例として、50A Sch10Sのステンレス鋼管は肉厚2.8mmです(配管サイズ一覧表)。○の上限の0.5mm/年で減ると、5年半ほどで肉厚がなくなる計算です。○は「長く使える」という意味ではありません。

微量の成分でも結果は変わります。3価の鉄イオンや2価の銅イオンのような酸化剤は、Crを含まないニッケル合金の腐食を速める成分です。有機塩素化合物も、わずかな水で塩酸を生じて滞留部を腐食させることがあります。液が蒸発する所では塩が濃縮し、燃焼排ガスでは凝縮した水が硫酸露点腐食を起こします。どちらも、液の平均の組成で選ぶと見落とす腐食です。不働態の金属は、短い試験で耐えても実機で激しく腐食することがあります。

ライニングは温度と真空と透過で決まる

ニチアスの資料ではPFAの連続使用温度が260℃でも、ライニング配管は180℃・タンクは150℃が上限です。真空も弱点で、シートライニングは変形やはく離を起こします。真空で使うなら、シートの外側からも吸引する方式が必要です。

フッ素樹脂は塩酸やフッ酸のガスをわずかに通し、外側の鋼を腐食させることがあります。内側が熱く外側が冷える使い方では、水蒸気が冷たい側へ拡散します。鋼との境で止められてたまったものが、ブリスター(膨れ)です。薄い水溶液ほど起きやすく、熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂より水蒸気を通しやすい材料です。数mmの厚さのゴムライニングでも、この拡散は防ぎきれません。

グラスライニングは酸と溶剤に強い反面、ガラスがフッ酸とアルカリに侵されます。無機材料なので、急な加熱や冷却と外からの衝撃にも弱い材料です。熱衝撃の規格(ISO 28721-3)が対象とするのは−25〜230℃の運転です。許せる温度差は、この規格の線図で決めます。ライニングの種類と施工方法はライニング加工の役割で解説しています。

参考資料

  1. 化学工学会 編『改訂六版 化学工学便覧』丸善、1999年、28章「装置材料」(28·1 装置材料概論、28·2 耐食性と耐熱性、28·3 材料選定指針)
  2. 尾崎敏範『事例で探すステンレス鋼選び』工業調査会、2004年
  3. IMOA(International Molybdenum Association)「Stainless Grades and Properties」 https://www.imoa.info/molybdenum-uses/molybdenum-grade-stainless-steels/steel-grades.php
  4. 上仲秀哉ほか「耐食チタン合金の特性と適用事例」新日鉄住金技報 第396号、pp.35〜42、2013年 https://www.nipponsteel.com/tech/report/nssmc/pdf/396-07.pdf
  5. LIU XinXin「硫酸環境中におけるチタンの腐食に及ぼす金属カチオンの影響」北海道大学 博士論文の要旨、2025年 https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/repo/huscap/all/95163/Liu_XinXin_abstract.pdf
  6. 坂田幹宏「二相ステンレス鋼溶接金属の475℃脆化に関する研究」大阪大学 博士論文(論文内容の要旨・論文審査の結果の要旨)、2023年 https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/92949/33722_Abstract.pdf
  7. ニチアス「PFA/PTFE ふっ素樹脂ライニング」カタログ T07、2026年6月 https://www.nichias.co.jp/cms/nichias/pdf/catalog/T07.pdf
  8. ニチアス技術時報 2017 No.2「ふっ素樹脂ライニング製品」 https://www.nichias.co.jp/cms/nichias/pdf/report/2017/377_04.pdf
  9. ISO 28721-3:2008「Vitreous and porcelain enamels - Glass-lined apparatus for process plants - Part 3: Thermal shock resistance」
  10. JIS B 8265:2024「圧力容器の構造-一般事項」
  11. 厚生労働省「ボイラー構造規格等の一部を改正する告示について(報告)」第177回 労働政策審議会安全衛生分科会 資料7 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001556664.pdf
  12. TIMET「Corrosion Resistance of Titanium」 https://www.timet.com/assets/local/documents/technicalmanuals/corrosion.pdf

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